2024.10.08 (Tue)
テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第66回)
まずは何から"生成"する?総務省が生成AIの入門書を発表
総務省は2024年、国民が生成AIの正しい使い方を学ぶための資料「生成AIはじめの一歩」を公開しました。どのように使うのが正しいのでしょうか?
総務省が生成AIのガイドブックを公開
ユーザーが入力したプロンプト(命令)に従い、テキストや画像などを自動的に生成する「生成AI」(Generative AI)が世に生み出されて、すでに1年以上の月日が経っています。すでに日常生活やビジネスシーンで頻繁に使っている人もいるでしょう。
その一方で、そもそもどんなシーンで生成AIを使用すれば良いのか分からず、生成AIをまったく使っていないという人も多いかもしれません。興味本位で数回触ったことがあるものの、用途が分からず、日常的には使用していないというケースもあるでしょう。
総務省では、そのような生成AIの初心者に向け、2024年に「生成AIはじめの一歩 生成AIの入門的な使い方と注意点 ver1.0」という資料を公開しました。この資料は、今後生成AIに触れる可能性のある国民に向け、生成AIを自身で利活用できるリテラシーを身に付けることを目的として発信された、“生成AIの初心者”向けガイドブックとなります。
本記事ではこの資料を元に、生成AIの正しい使い方を解説します。なお、本資料における生成AIは、基本的にはChatGPTのことを指しています。
そもそも生成AIは、何のために使用するのか?テキスト活用の4パターン
資料ではまず生成AIの用途として「テキスト生成」「画像・映像作成」「音声・音楽の作成」「その他(3Dモデルの作成など)」の4点を挙げています。
このうちテキスト生成についてはさらに細かく用途が分けられており、【1】文章の作成・要約、【2】情報検索、【3】翻訳、【4】議論のパートナー、という4つの利用法があるといいます。
たとえば【1】文章の作成・要約をする場合は、生成AIに「以下の文章を箇条書き5つ程度で要約してください」といったような命令文を、要約したい文章とともに入力します。すると、生成AIは命令に従い、元の文章を5つの箇条書きに変換します。
【2】の情報検索では、たとえば「東京から日帰りで行ける県外の観光地を3つ教えてください」といったように、知りたい情報をシンプルに入力します。この時、「季節は夏」「それぞれの観光スポットも教えてください」「おすすめの理由も詳しく教えてください」といったような細かい条件を追加することで、AIはさらに細かい回答を生成します。
【3】の翻訳は、元となる外国語の文章とともに「和訳してください」というプロンプトを入力することで、日本語の翻訳文が生成されます。
【4】の議論のパートナーとは、生成AIに対し質問を重ねることで、生成AIからより良い回答を引き出すことを指します。たとえば「サッカー部の新入部員を増やす案を考えてください」という質問を入力し、生成AIが「体験会の開催すると良い」と回答した場合、さらに「どんな体験会が良いか」と重ねて質問することで、より詳細な回答を得ることが可能です。
より精度の高い回答を引き出すためにはどうすれば良いのか?
とはいえ、生成AIが必ずしも期待通りの答えを出すわけではありません。生成AIから最適な回答を引き出すためには、プロンプトの入力に工夫が必要です。指示の目的や詳細な設定を入力しない場合、意図に沿わない回答になることがあるといいます。
たとえば「誕生日プレゼントを考えてください」というプロンプトを入力した場合、プレゼントを贈る相手の年齢や好み、予算などに関する情報が入力されていないため、「受け取る方の年齢、性別、趣味、関心事などを考慮すると良いでしょう。」といったような、具体性の薄い回答が出力されるといいます。
具体的なプレゼントの内容の提案を望むのであれば、「相手:20代男性」「好み:アウトドア好き」「予算:1万円以内」「~を除くアイデアで」のような細かい条件を併記することで、「ポータブルスピーカー」「サングラス」といった具体的な回答を引き出すことができます。
出力の形式を指定することもできます。たとえば「みかんの栄養成分を教えて」という命令に「表形式で教えて」「含まれていない栄養素は表示しない」という詳細な内容を盛り込むことで、より視認性の高い、図表スタイルの回答を得ることが可能です。
生成AIでは、出力形式を指定することもできる
(生成AIはじめの一歩 生成AIの入門的な使い方と注意点 ver1.0 より引用)
なぜ生成AIに「〇〇風のキャラクターを描いて」と命令するのは避けるべきなのか
この「生成AIはじめの一歩」の資料で特にページが多く割かれているのが、生成AIを活用するうえでの注意すべきポイントです。
生成AIは、利用者が入力したデータを学習データとして利用するため、個人情報や機密情報をプロンプトとして入力した場合、生成AIがその入力データを学習し、他のユーザーの回答として使用することも起こり得ます。この回答を悪意のあるユーザーが利用し、サイバー犯罪として悪用されるケースも十分に起こり得ます。
資料では情報漏えいを防ぐために、生成AIサービスの規約を確認し、データの利用目的や範囲をチェックすること、個人情報や機密情報の入力は必要最小限に留めること、入力したデータが生成AIに学習されないよう「オプトアウト設定」で利用することの3点を挙げています。
生成AIで画像を出力する場合は、知的財産権を侵害する恐れがある点も注意が必要です。たとえAIが生成した画像だとしても、その画像があるアーティストの作品に似ている場合、著作権や商標権・意匠権などの知的財産権の侵害に当たる恐れがあります。そのため資料では、「〇〇に似ているロゴを考えて」「〇〇風のキャラクターを描いて」といったプロンプトは入力しないことを呼びかけています。
本資料では生成AIについて「新しいものを作り出すことができる技術」と評価しながらも、その一方で「ただのツール」「どんな風に使うかは、使う人次第」と、突き放したような表現もしています。そのうえで、生成AIは「うまく使って、楽しく、そして安全に活用することが大切」と結論づけています。
生成AIに対し「セキュリティが危ない」「使いこなせるかわからない」と、不安を抱えている人も多いかもしれませんが、少なくとも本資料を読めば、生成AIで誤った使用法をしてしまうことは避けられます。まだ生成AIに慣れていないビジネスパーソンは、この「生成AIはじめの一歩」を一読してみてはいかがでしょうか。
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