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2024.01.24 (Wed)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第33回)

インフラの「老朽化」は、最新技術でメンテナンスできる

 老朽化したインフラのメンテナンスを放置すると、日常生活で思わぬ事故が発生するリスクがあります。しかし、メンテナンスは新しいテクノロジーを使うことで効率化できます。

高度経済成長期に作られたインフラが劣化し始めている

 橋梁やダム、トンネル、水道管、下水道、港湾などのインフラ設備は、私たちの日常生活を支える重要な社会基盤です。しかしそうした設備の多くが、高度経済成長期以降に整備されたもののため、2030年頃には建設から50年以上経過する設備が非常に多くなります。

 国土交通省が2023年1月に発表した「国土交通省におけるインフラメンテナンスの取組」という資料によれば、全国に約73万橋ある道路橋のうち約55%、全国に約1万1,000本あるトンネルのうち約36%が、2030年には建設後50年以上を経過するとしています。

 設備の老朽化を原因とする重大事故も起きています。先に触れた国土交通省の資料では、2012年12月に発生した「笹子トンネル事故」、もそのひとつであるとしています。

 同事故は、中央自動車道上りの笹子トンネルにおいて、トンネル換気用の天井板等が崩落し、走行中の車両3台が天井板の下敷きとなり、死者9名、負傷者2名が発生する大惨事となりました。同事故の調査・検討委員会では事故原因について、天井板をつり下げる部材の設計・施工に加え、経年劣化、点検・維持管理などの要因が複数作用した結果、事故に至ったとしています。

 こうした日常生活の安全を脅かす事故が発生しないよう、インフラの定期的なメンテナンスは欠かせません。しかしながら、人口減少に伴う技術者の減少、自治体の財政状態の悪化などにより、今後は効果的なインフラメンテナンスが行えないケースも十分に起こり得ます。

メンテナンスは「事後保全」から「予防保全」へ

 上記にあげた課題を克服するため、国交省では、持続可能なインフラメンテナンスの実現のための行動計画として、いくつかの指針を示しています。

 まず1つ目が、インフラ設備の「事後保全」から「予防保全」への転換です。

 同省が2019年度から2048年度までのインフラ設備の維持管理・更新費を推計したところ、設備に不具合が生じてから修繕などの対策を行う「事後保全」では、費用は最大約284兆円に到達するとのことです。一方、早期の点検や検査を経て、施設に不具合が生じる前に修繕や更新などの行う「予防保全」であれば、費用を最大約194兆円にまで抑えられるといいます。

 2つ目が、新技術の活用によって、インフラメンテナンスの高度化・効率化を図ることです。具体的には、ドローンを活用した3次元測量や、測量で得たインフラ設備のデータベースを運用するDXへの取組み、AIにより点検箇所を画像認識する技術などです。こうしたテクノロジーを活用することで、将来的に技術者が減少したとしても、少ない人員でもメンテナンスが可能になります。加えて、将来的な施設維持・更新に係るトータルコストの縮減も期待されます。

ダムの劣化箇所もAIが自動で検知する

 新技術を活用したインフラメンテナンスは、すでにいくつかの現場で導入されています。

 たとえば、ドローンを活用した建築物の測量・点検です。測量用ドローンで上空から建築物を計測し、その構造物の3次元データを構築することで、橋梁などの大きなインフラ設備の全体像をリアルタイムで把握することが可能になります。点検者が2次元の図面で点検箇所を示すよりも正確に情報が把握できるため、従来と比べて大幅な工数・コスト削減が期待できます。

 宮城県の鳴子ダムでは、AIを活用した提体(ダムの本体)のコンクリート点検が行われています。同ダムでは、ダム外壁にあらわれる「ポップアウト」と呼ばれる劣化箇所を点検するために、外壁をドローンと航空写真で測量し、高精細な画像で鳴子ダムの3次元モデルを復元。そして、AIが撮影画像からポップアウトが発生していそうな箇所を読み取り、3Dモデルに当該箇所を表示します。作業者は、AIが表示した点検すべき箇所を重点的に検査すれば良いため、点検者の人的労力や点検の個人差などの解消も見込めます。

 インフラ設備は日々使うものである以上、すぐ新品と取り替えることは困難であり、異常に気付くためには日常的な点検が欠かせません。これまでは人間が行っていた点検作業に、最新のテクノロジーが加わることで、インフラの安全はより効率的に、より正確に実施されることになるでしょう。

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