2024.03.29 (Fri)
テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第39回)
インボイスにも対応「IT導入補助金2024」を解説
ITツールを導入することで、補助金が受け取れる「IT導入補助金」という制度があります。2024年版では、インボイスに対応した枠も用意されました。同補助金を解説します。
ITを導入すれば、補助金が受け取れる制度がある
「IT導入補助金」をご存知でしょうか。これは中小企業・小規模事業者が、労働生産性の向上のために、業務効率化やDXに向けたITツールの導入を支援する国の補助金です。導入時に発生した費用の一部が補助されます。
対象となるITツールは、事前に事務局の審査を受け、補助金HPに公開されているものに限られます。相談などのサポート費用や、クラウドサービスの利用料も補助対象に含まれます。
2024年の同補助金には、以下に列挙する5つの枠が用意されています。
【1】通常枠
【2】インボイス枠(インボイス対応類型)
【3】インボイス枠(電子取引類型)
【4】セキュリティ対策推進枠
【5】複数社連携IT導入枠
IT導入補助金を利用することで、どの補助金がどの程度受け取れるのでしょうか?各募集枠について順に紹介します。
導入するソフトウェアの業務範囲が広いほど、補助額も高額になる
「【1】通常枠」は、事業のデジタル化を目的としたソフトウェアやシステムの導入を支援するための枠です。ソフトウェアの購入費やクラウドサービスの利用料(最大2年分)、導入の際のコンサルティング費用などの導入関連費が補助対象となります。
通常枠の補助を受けるためには、以下に挙げる7つの業務プロセスのうち、1種類以上をカバーするソフトウェアを申請することが条件となります。
1.顧客対応・販売支援
2.決済・債権債務・資金回収管理
3.供給・在庫・物流
4.会計・財務・経営
5.総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
6.その他業務固有のプロセス
7.汎用・自動化・分析ツール(単体では不可)
導入するソフトウェアの業務プロセスが多いほど、補助額も高額になります。プロセスが1~3の場合は「5万円以上~150万円未満」、4プロセス以上の場合は「150万円以上、450万円以下」となります。補助率は費用の1/2以内です。
インボイス制度に対応した補助金も
「【2】インボイス枠(インボイス対応類型)」と「【3】インボイス枠(電子取引類型)」は、いずれも2023年にスタートしたインボイス制度に対応した枠です。
【2】インボイス枠(インボイス対応類型)は、労働生産性の向上のため、インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトを導入した企業のための枠です。経費の一部を補助することで、インボイス制度に対応した企業間取引のデジタル化の推進を狙っています。
補助対象となるのは、インボイス制度に対応した、「会計」・「受発注」・「決済」の機能を有するソフトウェア、およびPCやタブレット、レジなどのハードウェアです。
補助率・補助額は、ソフトウェアとハードウェアで異なります。ソフトウェアの場合、補助率は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)で、補助額は50万円以下です。ただし、導入するソフトウェアが、会計・受発注・決済のうち2機能以上を有し、かつ補助額が50万円を超えることが見込まれる場合、補助率は2/3以内、補助額は50~350万円に変わります。
ハードウェアの場合は、補助率は1/2以内、補助額は10万円以下です。レジや券売機を導入した場合、補助額は「20万円以下」にアップします。
【3】インボイス枠(電子取引類型)は、インボイス制度に対応した受発注システムを導入し、取引の受注者である中小企業や小規模事業者等に対し無償でアカウントを供与した場合に、導入費用の一部を支援する枠です。この枠のみ、大企業も申請可能です。
補助率は、中小企業・小規模事業者が2/3以内、大企業を含むその他の事業者が1/2以内、補助額は350万円以下です(下限なし)。
地域全体のIT化にも、補助金が発生する
「【4】セキュリティ対策推進枠」は、中小企業・小規模事業者がサイバーインシデントによって事業の継続が困難になる事態を回避し、サイバー攻撃の被害が供給の制約や価格の高騰を潜在的に引き起こすリスク、および生産性向上を阻害するリスクを低減するための支援を行う枠です。
具体的な支援内容としては、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表している「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスのうち、IT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に事前登録されたサービスを導入する際に、サービスの利用料を最大2年分補助するというものです。
補助率は1/2以内、補助額は5万円以上、100万円以下です。
最後の「【5】複数社連携IT導入枠」は、複数の中小企業・小規模事業者が連携し、ITツール及びハードウェアを導入した場合に補助金が支払われる枠です。複数社がITツールを導入した際の費用や、取り組みへの助言を行う外部専門家への謝礼金も、補助の対象となります。
たとえば、「地域にAIカメラを導入し、同時に各店舗にPOSデータ分析システムを導入する」「地域限定の電子通貨を発行し、各店舗に分析のためのアプリを導入する」といった、地域を巻き込んだIT化、DX化にも適用されます。
補助率は経費によって異なり、補助額は最大で3,000万円が上限として設定されています(その他経費は除く)。
すでに募集はスタートしており、第一次募集については3月15日に締め切られていますが、これから第2次、第3次の募集も続きます。ただし、【5】の複数社連携IT導入枠については、現時点では締め切りが4月15日の1回のみとなっています。申請を検討しているのであれば、締め切りに遅れないよう、早めに準備をすべきでしょう。
IT導入補助金は、自社のIT環境が整えられるうえ、補助金も受け取れるという、企業にとっては渡りに船ともいえる制度です。まだ利用していない企業は、ぜひチャレンジすることをお勧めします。
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