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テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第15回)

雇用確保につながる可能性も、覚えておきたい「給与のデジタル払い」

 2023年4月に給与のデジタル払いが解禁される見通しとなりました。これにより、給与の支払いがデジタルマネーで可能になります。本記事では、解禁に至る経緯やメリット・デメリットのほか、給与をデジタル払いする際の基本的なポイントを解説します。

スマートフォン決済アプリなどで給与が受け取れる

 給与のデジタル払いとは、スマートフォン決済アプリやプリペイドカードなど、デジタルマネーで給与を支払うことです。企業は、「資金移動業者」のアカウントに給与を振り込みます。資金移動業者とは、銀行以外で送金サービスができる登録事業者で、代表的なものに「LINE Pay」「PayPay」「楽天ペイ」などがあります。

 現在、給与の支払いについては、労働基準法第24条で「通貨で、直接労働者に、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と規定されています(これを賃金支払いの5原則といいます)。給与を銀行口座に振り込む企業は多いと思いますが、銀行振り込みはあくまで例外として認められた方法です。そして2023年4月からは、新たな選択肢としてデジタル払いが加わります。

 そもそも、給与のデジタル払いが解禁になる大きな理由として、消費の利便性の向上などを目的に、政府がキャッシュレス化を促進していることが挙げられます。日本のキャッシュレス決済比率は右肩上がりで推移し、2021年は32.5%になりました。政府は、2025年までに40%程度、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させることをめざしています。

 給与のデジタル支払い解禁にあたり、給与振り込みを手掛ける資金移動業者は厚生労働大臣の指定を受ける必要があります。また、下記のような案件などを満たさなければなりません。

・アカウント残高の上限を100万円以下に設定し、100万円を超えた場合、速やかに別口座に移動できること

・資金移動業者が破綻した場合、全額払い戻すことを保証すること

・最後に残高が変動した日から少なくとも10年間は残高が有効であること

・1円単位で支払われて、現金での引き出しも1円単位でできること

柔軟な給与支払いが可能になり、新たな雇用を生み出す効果も

 給与のデジタル支払いのメリットはいくつかありますが、まず、支払われたデジタルマネーをアプリ経由で商品やサービスの購入、送金などにすぐに使える点が挙げられます。さらに、何らかの事情で銀行口座を開設できない人や、銀行口座開設のハードルが高い外国人労働者が給与を受け取りやすくなります。

 一方、企業側は、銀行口座への振込みに比べて振込みコストが抑えられるのに加えて、一日分や一週間分といった細かい単位で柔軟に給与を支払うことができるようになります。少子高齢化で働き手の減少が懸念され、さらに副業解禁など働き方が変化しているなかで、これまでにない柔軟な給与の支払い方ができることは、雇用の確保に大きく寄与すると考えられています。

セキュリティ面の不安や、経理業務の負担増が課題

 一方で、給与のデジタル支払いにはいくつか懸念点もあります。まず、セキュリティの問題で、ハッキングなどによって資産が不正流出するリスクがあります。万が一、被害にあった場合の資金移動業者による補償については議論の余地があります。たとえば銀行が経営破綻しても、預金者の口座の元本は1,000万円まで保護されます。一方で、資金移動業者は、厳格な参入要件が設けられているものの、経営破綻した場合に保全額が不足する可能性はゼロでなく、払い戻しの手続きに時間や手間がかかる可能性があります。

 また、企業によっては経理部門の負担が増す可能性もあります。給与のデジタル払い導入にあたっては、労働者に銀行口座や証券口座への支払いも合わせて選択できることを伝えて同意を得なければなりません。つまり、一斉にデジタル払いに切り替えられない場合、支払い方法が労働者によって異なるため経理業務が煩雑になることが予想されます。さらに、デジタル払いに対応した給与システムの導入も必要になるでしょう。デジタル払いの採用にあたっては、経理業務の負荷も考えておくべきです。

経費精算では、すでに導入済みのケースも

 メリットとデメリットがある給与のデジタル払いですが、政府が今後もキャッシュレス化を進めることを宣言している状況下では、遅かれ早かれ普及していくことが予想されます。企業の中には、すでに交通費や備品の購入など経費精算においてデジタル化を実施しているところも出てきています。デジタル化によって経費精算の手続きが大幅に簡素化されたことに加え、支払いがスピーディになって、労働者が立て替える期間が短くなるなどのメリットが認められています。

 給与の支払い方法について、まずは労働者へのヒアリングを行ったり、経理業務や給与支払いシステムなどの状況を把握することが大事です。そして最初は、経費精算や一部のインセンティブ付与などからデジタル払いを始めてみるのも、ひとつの方法です。

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