2024.03.22 (Fri)
テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第42回)
6G、7Gで世界はどう変わるのか?「Beyond 5G」の可能性
ネットワークは、常に進化しています。日本では2020年から5Gの導入・普及が加速しましたが、2030年代には5Gの次なる世代である「Beyond 5G」の移動通信システムが誕生し、あらゆる産業・社会活動の基盤となることが見込まれています。本記事では、Beyond 5Gが検討されている背景や、政府の取り組みや研究事例について紹介します。
Beyond 5Gの世界では、何ができるのか?
Beyond 5Gとは、2030年代にあらゆる産業・社会活動の基盤となることが見込まれる、次世代の移動通信システムです。「6G」や「7G」など、5G以降に生まれるすべての通信規格のことを指す言葉です。
Beyond 5Gでは、現在の5Gと比べて、アクセス通信速度や同時接続数は約10倍、遅延は約10分の1、電力消費は現在の約100分の1に進化するなど、「超高速・大容量」「超低遅延」「超多数同時接続」といった特徴を持っています。さらに、「超安全・信頼性」「自律性」「通信カバレッジの拡張性」といった、新たな機能の実現も期待されています。
Beyond 5Gのさらなる特徴としては、フィジカル空間(現実世界)とサイバー空間(仮想世界)が有機的に統合され、それらの相互作用で物事が進む「サイバーフィジカルシステム(CPS)」という、これまでにない概念が実現可能な点にあります。
CPSでは、フィジカル空間で集めたデータをサイバー空間で解析することで、その分析結果をフィジカル空間へフィードバックすることが可能になります。たとえば、フィジカル空間における施策のシミュレーションを、サイバー空間で事前に実行するといったことも可能になります。
日本が仕掛ける「Beyond 5G 」4つの戦略とは?
日本政府も国家戦略としてBeyond 5Gに取り組んでおり、総務省が公開している「令和5年度版 情報通信白書」でも「Beyond 5Gの恩恵を国民に届けることが重要」としています。
実際に、どのような取り組みが行われているのでしょうか?政府が示している戦略は、「研究開発戦略」「社会実装戦略」「知財・標準化戦略」「海外展開戦略」の4つです。核となる「研究開発戦略」では、超高速化と省電力化を実現する「オール光ネットワーク技術」、陸海空・宇宙をシームレスにつなぐ「非地上系ネットワーク技術」などを重点技術分野とし、国費を集中投下して、産官学で取り組む姿勢を表明しています。
「社会実装戦略」においては、2030年を待たず、2025年以降に順次、国内ネットワークへの実装を目標に掲げています。「知財・標準化戦略」では、米国、UE、ドイツ、シンガポールといった国々との政府間対話を強化。国際標準化を主導しながらも、コア技術は権利化・秘匿化して囲い込むとしています。「海外展開戦略」では主要なグローバルベンダーと連携し、海外通信キャリアへの導入を促進するとしています。
すでにBeyond 5Gは始まっている
Beyond 5Gの社会実装や海外展開を推進するため、現在、企業や大学による研究開発が活発に行われています。
東京大学大学院工学系研究科とNECによる共創活動もその一つです。NECの持つ「ユーザーが利用するサービスを検知し、その最適な通信要件を判別する技術」と、東京大学が持つ「時間や空間、ユーザーに合わせて通信品質を制御する技術」を融合し、ユーザーの利用状況や要求に応じて、通信品質や安全性をリアルタイムに制御する通信の実現を目指しています。
活動拠点となる東京大学のキャンパステストベッド(試験用環境)では、2024年2月に第一弾となる検証実験が行われ、未来の活用が期待される「ホログラムによるコミュニケーションサービス」を用いて、両者の技術の有用性と社会容認性を確認することができたと発表。今後はその成果を多様な産業の企業・団体に実導入するなど、社会実装に向けた活動を拡大していくとしています。
Beyond 5Gの研究開発戦略のひとつである「オール光ネットワーク技術」の研究開発も進んでいます。2023年11月には情報通信研究機構(NICT)の支援事業として、NTTイノベーティブデバイス、三菱電機、住友電気工業、富士通、NECによる研究開発プログラムが採択されました。
NTTはすでに、6Gを見据えたネットワーク構想として「IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)」を発表しており、2023年3月より同サービスの提供を開始しています。IOWNでは、ネットワークの遅延を従来の約200分の1に低減すると発表していますが、最終的には電力効率を従来の約100倍に、伝送容量を約125倍に強化するとしています。合わせてIOWNグローバルフォーラムも設立し、KDDIをはじめとする国内外の企業と連携して国際標準化することを目指しています。
社会実装の環境づくりも進んでいます。渋谷では2023年に竣工した複合施設「Shibuya Sakura Stage」に、IOWNの導入を決定しています。計画によると、施設内のオフィスには対面さながらにオンラインミーティングができる設備や、AIなどの大容量データを活用したリアルタイム自動翻訳を導入。場所や言葉の壁を越えて、世界中のパートナーと支障なく仕事をすることも可能といいます。
移動通信システムが6G、7Gと進化するにつれ、さらに多くの機器が接続でき、さらに高速の通信ができるようになり、我々の暮らしやビジネスもさらに便利に変わっていくことでしょう。Beyond 5Gの世界は、もうすでに始まっています。
社会実装はすぐ目の前に! 変革を見越してビジネスを考えたい
社会実装の環境づくりも着々と進んでいます。広域渋谷圏では2023年に竣工した「Shibuya Sakura Stage」を軸とするIOWNを活用したまちづくりが、東急不動産、NTT、ドコモによる協業で推進中です。
計画によると、施設内のオフィスには対面さながらにオンラインミーティングができる設備や、AIなどの大容量データを活用したリアルタイム自動翻訳を導入。場所や言葉の壁を越えて、世界中のパートナーと支障なく仕事ができるようになります。
こういった変化は随所で見られるようになることが予想され、働き方やビジネスのあり方も刷新されるでしょう。その変化を見越してビジネスを考えるためにも、Beyond 5Gは関する動向は注視しておくことが望まれます。
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