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2024.03.29 (Fri)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第39回)

総務省が発表「モバイル市場競争促進プラン」とは?

 2023年冬、総務省から「モバイル市場競争促進プラン」という新たな方針を発表しました。このプランでは端末の過度な割引の制限など、新たなルールが盛り込まれました。

2023年冬、総務省がモバイル市場の競争を促進するプランを発表

 今やスマートフォンやタブレットといったモバイル通信端末は、我々の暮らしには欠かせないもののひとつとなりました。端末を複数台所持したり、端末を中古ショップやフリマサイトで売買することも、特に珍しいことではありません。

 そんなモバイル市場に対し、2023年冬、総務省から新たな取り組みが発表されました。それが、「日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」(以下、モバイル市場競争促進プラン)です。

 これは岸田内閣が同年11月2日に閣議決定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を踏襲したものです。同対策では「物価高により厳しい状況にある生活者・事業者への支援」として、携帯電話について「利用料金やサービス本位の競争を促進するため、2023年内に実施する制度改正、利用者に合った料金プラン選択促進のための広報を順次実施する」ということが決定されました。モバイル市場競争促進プランでも、この閣議決定に準じた内容が盛り込まれています。

 モバイル市場競争促進プランでは、【1】納得感のある料金・良質なサービスの実現、【2】事業者間の乗換えの円滑化の加速、【3】事業者間の公正な競争環境の整備の促進、という3点を軸に、モバイル市場でさまざまなルール変更が行われる予定となっています。具体的にはどのような点が変更されるのでしょうか? 順番に紹介します。

なぜ「白ロム割」は制限されたのか

 【1】の「納得感のある料金・良質なサービスの実現」は、過度な端末の割引競争を抑制し、通信料金・サービス競争へのシフトを加速することを狙ったものです。具体的には、これまでのモバイル市場で見られた「1円端末(1円スマホ)」「白ロム割」のような過度な割引を規制するためのものです。

 「1円端末」とは、携帯キャリアが用意した通信契約と端末をセットで買うことで、実際には数万円する端末の料金が格安で購入できるというものです。一方の「白ロム割」は、1円端末が販売される際に行われる、端末の過度な値引きのことです(白ロムとは、SIMカードが入っていない端末のこと)。  1円端末は、端末の料金を安くする代わりに、通信契約が長期かつ高めに設定される点が特徴です。つまり、端末料金を“先払い”ではなく“後払い”で払うプランということになります。

 しかし、この1円端末で端末を安く購入し、高値で転売する、いわゆる「転売ヤー」の問題が発生したことから、総務省では通信契約と端末をセットで購入する場合の値引き額の上限を「税抜20,000円」に設定するルールを、2019年よりスタートしました。

 とはいえその後も、携帯キャリアや販売店が通信契約と端末のセット割とは別に、白ロム割にて端末の価格を割り引くことで、1円端末の販売は継続されました。たとえば10万円の端末の場合、携帯キャリアや販売店側が端末の料金を白ロム割で79,999円値引きし、さらに通信契約と端末のセット割で20,000円を引くことで、1円端末が継続できていました。

 今回のモバイル市場競争促進プランでは、白ロム割についても、通信プランと端末のセット販売時の割引額に含めることを定義。そのうえで、割引額は端末の半額まで、かつ上限額は税抜40,000円までに制限されました。たとえば10万円の端末を通信契約とセットで購入する場合、端末の半額は50,000円ですが、割引額の上限は40,000円のため、顧客が支払う額は60,000円となります。

 【1】ではこのほかにも、端末の価格が高騰傾向にあり、かつ中古端末の需要が増加傾向にあることから、国民が低廉で多様な端末を選択できるよう、中古端末の更なる流通促進のため、中古端末の民間事業者団体をサポートする旨も明らかにされました。

ユーザーは新料金プランに興味がない?

 【2】の「事業者間の乗換えの円滑化の加速」は、ユーザーそれぞれの利用条件に適した料金プランへの乗り換え促進を狙ったものです。

 総務省の調査によると、携帯電話ユーザーの多くは旧来のプランを利用し続けており、携帯キャリアが新たに提供している新料金プランに乗り換える傾向が無いといいます。理由としては「現行のプランに特に不便を感じていない」「プランを変更する手続きが面倒」といった声が上位に上がりましたが、元も多かったのは「特に理由はない」でした。

 携帯キャリアの多くでは、プラン変更時の解約金は廃止されています。総務省では、いつでも自由に、容易な手続きで料金プランの変更ができるようになったことを国民に告知するため、SNSやデジタル広告などで周知広報を実施するとしています。

 これに加えて、「MNPワンストップ」の推進も行うとしています。MNPワンストップとは、携帯キャリアの変更時、乗換先の携帯会社のWebサイトで申し込むだけで簡単に手続きができる制度のことです。2023年5月にスタートしましたが、認知度は約14%と低く、対応している事業者も6者とまだまだ少ない状況です。

 同省ではMNPワンストップ対応事業者を拡大するため、未対応の大手MVNO(仮想移動体通信事業者)について、各社のMNPワンストップ導入予定時期を年内に公表するとしています。

MVNOには競争力が必要

 【3】の「事業者間の公正な競争環境の整備の促進」は、端的にいえば「MVNOの競争力確保」です。

 同省によると、ドコモ、au、ソフトバンクなどのMNO(移動体通信事業者)に対するMVNOの競争力は現在低下しており、MNOが寡占的な市場で競争環境を作り出すには、MVNOの競争力確保が重要としています。

 現在、シェアが0.7%以上のMVNOについては、MNOと同等の規制を受けていましたが、今後はこのシェアの基準を「4%」へと緩和。これにより、IIJやオプテージといった大手MVNOが、規制から外れることになりました。ただし、MNO子会社のMVNOについては、引き続き規制の対象となります。

 さらに、MVNOのネットワーク利用料である 「データ接続料」についても低廉化を進め、2025年度までに、2023年度比で約3割低減する方針も明らかにしています。

1円スマホはまだ売られている

 以上3点が、モバイル市場競争促進プランで掲げられた内容です。資料では、「モバイルは国民の日々の生活に密着した不可欠なもの」「モバイルが納得感のある料金で良質なサービスとなれば、日々の生活はより豊かになる」と、市場の競争が生まれることの効果を期待しています。

 とはいえ、すべてが目論見通りに進むとは限りません。たとえば【1】で制限されたはずの「1円端末」については、現在も似たような謳い文句で販売されているケースは見られます。これは端末の購入料金を分割払いとし、一定期間内に販売店が回収することで、端末の代金が割引されるというものです。

 誰もが携帯電話を当たり前に持つようになった今、どうすればモバイル市場で競争力が生まれるのか、その実現を目指す総務省の新たなルール作りと、それに対応するための通信会社による新たなサービス・プラン作りは、しばらく繰り返されそうです。

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