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2024.03.29 (Fri)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第48回)

脳と機械が繋がる「ブレインテック」の可能性

 人間の脳波をコンピューターで計測するテクノロジー「ブレインテック」の実証実験が行われています。脳と機械を接続することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?

「ブレインテック」で、脳とコンピューターが繋がる

 2024年1月、世界的な実業家であるイーロン・マスク氏が設立に関わった米ニューラリンク社が、超小型デバイスを人間の脳に埋め込み、コンピューターと接続する臨床試験を開始したというニュースが話題となりました。

 このように、人間の脳と機械を接続するテクノロジーは「ブレインテック」(脳科学技術)と呼ばれ、医療やヘルスケアの分野を中心に、実用化に向けて実証実験などが行われています。

 ブレインテックは、人間の脳波をコンピューターで計測し、脳の状態や機能を評価・制御することを狙ったテクノロジーです。すでに欧米では、脳と機械を接続する機器「ブレイン・マシン・インターフェース」(以下、BMI)が誕生。ブレインテック関連企業に対する投資が行われており、一部報道では2024年の市場規模が5兆円に及ぶと指摘されています。

 日本でも、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度」などの研究事業において、ブレインテックを活用した研究が産学連携で行われています。現状では、主に精神疾患などの診断・治療、脳疾患による後遺症のリハビリなど、医療分野での活用を見込んだ研究が進んでいます。

 なお脳波を測定するBMIには、脳や頭皮にデバイスを埋め込む「侵襲(しんしゅう)型」と、生体を傷つけない「非侵襲型」、頭皮のごく浅い部分に埋め込む「低侵襲型」が存在します。内閣府の資料によると、日本では非侵襲型と低侵襲型のデバイス研究が中心であり、脳にデバイスを埋め込む侵襲型と比べ、心理的・身体的負担が少ないとされています。

ブレインテックで、身体の不自由が改善する可能性も

 世界的にも注目されているブレインテックの研究は、現在どの程度まで進んでいるのでしょうか。実際に行われている実証実験について、国内外の事例を紹介します。

 まずは、冒頭でも触れたニューラリンク社の事例です。同社では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や、脊髄損傷により身体が不自由な患者を対象に、侵襲型デバイスを脳に埋め込み、スマートフォンなどの電子端末を操作するBMIの臨床実験を開始しています。脳に埋め込んだデバイスが神経信号を読み取り、ユーザーが思考するだけで電子機器が操作できる状態を目指しています。

 日本法人である株式会社LIFESCAPESでは、脳卒中などで手指が麻痺した患者を対象に、ヘッドセット型のデバイスから脳波を読み取ることで、手指に装着した電動装置を動かすデバイスを開発しています。このデバイスを用いたリハビリを繰り返し行うことで、患者の運動機能が回復し、デバイス無しでも自分の意志で手指が動くようになることが期待されています。

 医療分野での研究が進んでいる一方で、別の分野でも実験が行われています。例えば化粧品メーカーの資生堂では、口紅を使用した際のユーザーの感情をBMIで読み取り、口紅の塗布中の脳血流反応を測定する実証実験を実施。その結果、人が価値判断を行う際に重要であるとされる右脳のDLPFC(背外側前頭前野)における脳血流反応と、顧客が製品に対して支払いたいと考える最大金額(支払意思額、Willingness To Pay)との間に、相関性が認められたといいます。

安全性は大丈夫なのか? 倫理的な問題はどうクリアするのか?

 このように徐々に社会への導入が試されているブレインテックですが、普及のためには、何よりも安全性に関する保証が欠かせないでしょう。

 特に、頭部にデバイスを埋め込む侵襲型のBMIの場合は、脳機能に直接的に介入するテクノロジーのため、BMIによって脳に予期せぬ変化が生じる可能性もあります。ユーザーのリハビリのために導入したにも関わらず、さらなる身体的なダメージを重ねてしまうことにもなりかねません。ブレインテックを扱う企業は、どのようなリスクが懸念されるか、ユーザーに対しその安全性を十分に保証する必要があります。

 さらにいえば、BMIのデバイスが故障し、メンテナンスが発生するケースも考えられます。侵襲型の場合は、故障の度にメンテナンスを繰り返すことになるため、患者の身体的負担は決して小さいとはいえないでしょう。

 加えて、倫理的な問題も絡みます。脳は人格や精神を司る器官であるため、個人の権利やプライバシーの保護といった観点でも、慎重な検証が求められます。BMIにより検出した情報を、どこまで個人情報として保護すべきか、人権やプライバシーの観点も解決する必要があります。

 脳は人間の中枢でありながら、いまだに謎の多い器官でもあります。果たしてブレインテックは、脳の仕組みや謎を解き明かせるのでしょうか? 挑戦は始まったばかりです。

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