2024.11.21 (Thu)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第71回)

携帯電話の番号に「060」が開放された理由とは

 総務省は10月、携帯電話の番号に「060」を開放する方針を発表しました。少子高齢化が進む中、なぜ同省は060番号の追加に踏み切ったのでしょうか?その背景を解説します。 

携帯電話に「060」で始まる番号が付与される理由

 携帯電話の電話番号には、「090」「080」「070」のように、全11ケタのうち最初の3ケタに“お決まり”の数字が振られています。

 携帯電話にこれら3ケタの番号を使用することは、総務省の「電気通信番号計画」にてルール化されています。2024年10月現在、「090」「080」「070」以外で始まる番号が、携帯電話の電話番号に付与されることは、基本的にはありません。

 しかし同省は、10月に発表した「電気通信番号計画の一部変更等に関する意見募集」というリリースの中で、今後「060」の3ケタから始まる携帯電話番号を開放する予定であることを発表しました。

 なぜ060番号は、このタイミングで開放されたのでしょうか? 総務省が決断した背景には、携帯電話が普及して以来ずっと続く、電話番号の「枯渇」問題が存在します。

そもそも、なぜ携帯電話は「3ケタ+8ケタ」なのか?

 携帯電話が現在の「3ケタ+8ケタ=11ケタ」のスタイルになったのは、今から20年以上も前の1999年のことです。

 携帯電話が誕生したのは1980年年代ですが、普及率が急激に高まったのは1990年代後半でした。総務省の携帯電話世帯普及率のデータによると、1995年度末には10.6%だった普及率は、翌1996年度末には24.9%に増加。さらに1997年度末には46.0%、1998年度末には57.7%と年を追うごとに増えていきました(数値は文化庁「パソコン、携帯電話、インターネットの普及率等」の資料より引用)。

 この携帯電話の需要増に対応するため、1999年から携帯電話の電話番号は、これまでの10ケタから、「090+8ケタ」の11ケタに変更されました。この結果、番号容量(携帯電話の番号のバリエーション)は、6,000万から9,000万に増加しました。

 しかし、携帯電話の世帯普及率の増加はとどまらず、2002年度末には86.1%、2003年度は93.6%まで増加し続けました。そのため3年後の2002年には、「080」番号も開放。電話容量はさらに9,000万プラスされ、1億8,000万に増えました。

 その後も携帯電話の世帯普及率は落ちることなく90%以上を保ちし続けたことで、再び番号が枯渇。2002年から11年経った2013年には、かつてPHSが使用していた「070」の一部の番号が、携帯電話用に開放。翌2014年には、すべての070番号が携帯電話に開放されました。


「070」以前の携帯電話番号の変遷(総務省資料より)

060番号は2015年から準備されていた

 「090」だけでなく「080」「070」まで開放されたことで、2014年における携帯電話の番号容量は、1999年の3倍となる合計2億7,000万まで増加しましたが、次なる番号の枯渇は当時から懸念されていました。

 2015年に公開された、総務省の「携帯電話番号の有効利用に向けた電気通信番号に係る制度の在り方」という資料によると、同年3月の時点で「090」「080」の番号はすべて使用済みで、「070」についても残りは9,000万の半分以下となる4,420万でした。資料では、現状の携帯電話番号の指定方法を維持した場合、2018年頃には番号が枯渇する可能性があると指摘しています。

 こうした携帯番号の枯渇に備えて準備が進められていたのが「060」です。2015年12月に公開された資料では、060番号には9,000万の番号が未指定の状態となっており、この番号を携帯電話番号の不足が生じる場合に備え留保すべきであるという記述が残っています。

 060番号は、もともとは「FMCサービス」のため、電気通信番号計画にて確保されていた番号です。FMCサービスとは固定電話と携帯電話を融合したもので、たとえば携帯電話の端末をオフィスの内線電話として利用できるサービスですが、2015年の時点で実際にこの番号を利用するサービス事業者はいませんでした。

 060番号の使用はその後も検討が続けられていましたが、2019年には「ただちに具体的な検討を行う必要性はない」(総務省「IoT時代の電気通信番号に関する研究会」報告書)、2021年にも「音声伝送携帯電話番号の割当てが逼迫する状況には必ずしもない」(情報通信審議会「デジタル社会における多様なサービスの創出に向けた電気通信番号制度の在り方」答申)と、しばらく見送りが続いていました。

 そして、070番号が開放された2013年から10年以上の時が過ぎた2024年、070番号の残りが530万(2024年9月末時点)と少なくなってきたことから、総務省は060番号の開を発表しました。060番号の開放により、新たに9,000万番号が追加され、番号容量は合計で3億6,000万に達することになります。

 なお、一部報道では「060番号は2024年12月中に開放される」という情報もありますが、実際にユーザーに060番号が付与される時期については、現時点では総務省や携帯電話のキャリア各社からは発表されていません。

少子高齢化でも、番号の枯渇は早まる?

 開放が決まったばかりの060番号ですが、今後順調に使用が進めば、やがては090/080/070と同様、番号が枯渇する日が訪れます。総務省では先に挙げた2015年の資料にて「未使用番号帯(030、040)は将来の新サービス等に向け留保する」としているため、060が枯渇した後は、これらの番号帯が使用されることが予想されます(「050」はIP電話に割り当て済)。

 少子高齢化が進行し、人口が減少している現在の日本では、2000年代のように使用が爆発的に加速することはないかもしれません。しかし、NTTドコモ モバイル社会研究所が2024年4月に発表した調査によると、通信回線の契約のあるスマホを2台以上所持する人は特に若年で増えており、15~19歳の若者層に限ると、男性は16.0%、女性は20.1%と、調査全体では11.4%を上回る数値を記録しています。このようなスマホの複数台持ちユーザーが増えることで、番号の使用が加速する可能性も考えられます。



10代ユーザーが複数のスマホを保有する傾向が高い(NTTドコモ モバイル社会研究所の調査より)


 最近では、「副回線サービス」を提供するキャリアも増えています。副回線サービスとは、1台の端末に異なるキャリアのSIMを搭載することで、主回線が災害などで通信トラブルが発生した時でも、副回線に切り替えて携帯電話を使用するサービスのことです。副回線サービスには、現在使用している番号とは別に、新たな電話番号が付与されるため、同サービスが広く普及すれば、新規番号の使用が加速するかもしれません。

 「090」の11ケタの携帯電話が生まれてから四半世紀が経ち、その番号の総数は、日本の人口の約1億2千万を大きく超える3億6,000万まで増えました。次の番号の開放がいつになるかはわかりませんが、1ユーザーが複数の番号を持つことが珍しくない、新たな時代が到来しつつあるのは確かなようです。

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