2024.08.08 (Thu)
テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第58回)
Googleが動画作成ツール「Google Vids」をテスト開始。どんなツール?
Googleは生成AIを活用し、簡単な文字入力だけで動画が作れるビジネス向けツール「Google Vids」のテスト版を7月にリリースしました。どのような特徴を備えているのでしょうか。
生成AIで動画を作る「Google Vids」が7月よりテスト運用スタート
「Google」を日常的に使用している人は多いでしょう。基本機能であるGoogle検索に加え、メールアプリの「Gmail」やファイル共有プラットフォーム「Googleドライブ」など、さまざまなサービスを展開しています。
ビジネスシーンでは、「Google Workspace」(旧名:G Suite)というサービスも存在します。これらはGmailやGoogleドライブ、GoogleカレンダーやWeb会議、プレゼンテーションツールなど、仕事に必要なツールを1つにまとめたグループウェアで、世界で30億人を超えるユーザー数が存在するといいます(2021年時点)。
2024年には、生成AIの「Gemini」のサービスもスタート。GeminiはGoogle Workspaceにも搭載されており、Geminiに対しHTMLのコードを聞いたり、文書の要約を依頼するなどで、ビジネスの生産性を高めることも可能です。
このGoogle Workspaceに、新たな動画作成アプリケーションとして「Google Vids」(グーグル・ビズ)が追加されようとしています。
Google Vidsは生成AIを使った動画作成サービスで、文章で指示を出すことで、自動で画像や映像、BGMを自動で追加し、簡単に動画を作成することができるツールです。2024年4月にサービスの存在が明らかにされ、7月より同社の開発中の新機能が利用できる「Google Workspace Labs」を通じ、試験的にサービスがスタートしています。
Google VidsはGmailやGoogleカレンダーと同様、アプリケーションをPCにインストールする必要はなく、ブラウザ上で操作を行います。Google Vidsの生成AIには、同社のGeminiが使用されます。
Google Vidsはどうやってユーザーの動画づくりを助けるのか
Google Vidsは正式な利用開始日がリリースされておらず、現時点ではGoogle Workspace Labsの参加者のみ、テスト版が利用できる状態です。しかし、2024年4月にYouTubeのGoogle Workspaceのアカウントが公開した「Introducing Google Vids」という動画では、Google Vidsが最終的に実装する機能の多くが確認できます。
この動画によると、Google Vidsは「Help me create a sales training video」といったように、Google Vidsに“〇〇な動画を作るのを助けてほしい”とプロンプト(指示)を入力するところからスタートします。その後、プレゼンテーション用のスライドファイルを登録すると、Google Vidsは自動的に動画のアウトライン(概要)を複数作成します。ユーザーはこの選択肢の中から好みのものをチョイスすると、デザインのテンプレート案が提示されます。
最初はどんな動画を作るのかプロンプトを入力し、プレゼン資料など参考となるデータを登録する。(Google Workspaceの動画「Introducing Google Vids」より引用)
さらに、動画中のナレーションをAIが自動で読み上げる機能も搭載。発音はアメリカ英語/イギリス英語/オーストラリア英語から選択でき、語気を「エネルギッシュに」「フレンドリーに」「リラックスした感じで」のように変更することも可能です。
動画中に画像や映像、BGMが必要な場合は、素材リストの中から選択できます。カメラ付き端末で使用すれば、自分が話している映像を録画し、動画内に盛り込むことも可能です。
このほか、複数ユーザーの編集にも対応しており、動画中に「どう思う?」「この画像は良いね!」といったようなコメントを付けることにも対応しています。
Google Vidsの編集画面(Google Workspaceの動画「Introducing Google Vids」より引用)
デザイナー、ライター、編集者、語り手…さまざまな人材をAIが代行する
Google Vidsの機能をまとめると、“動画を作るために必要な業務を、生成AIがサポートしてくれる”サービスといえそうです。
先に挙げたGoogle Vidsの紹介動画では、冒頭に「Meet your new designer/writer/producer/editor/storyteller」というメッセージが表示されます。日本語に訳すと「あなたの新しいデザイナー/ライター/プロデューサー/編集者/語り手に会おう」という意味になります。
動画を作るためには、全体的な構成を考えるプロデューサーや、視聴者の心を掴む言葉を作り出すライターやナレーター、視覚で視聴者を魅了するデザイナー、動画を細かく調整する編集者などの人材が必要です。とはいえ、これだけの人材を集めるのは困難です。Google Vidsは、こうした人材に代わって生成AIが作業を行うため、動画の作成をサポートする“作業代行サービス”としての側面もありそうです。
もちろん、すべてがAI任せというわけにはいかないでしょう。動画作成の際には、プレゼンテーション資料など参考元となるデータが求められるうえ、そもそもどんな動画が必要なのか、最初のプロンプトも重要です。質の高い動画を作るためには、ユーザーが「こういう動画を作りたい」というイメージを持ち、AIに適切な指示を出していくことが求められそうです。
Google Vidsの正式リリースがいつになるかは分かりませんが、動画を用いて顧客に自社の商品やサービスを広くアピールしたい企業は、テスト版を導入してみてはいかがでしょうか。
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