2024.08.08 (Thu)
テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第57回)
7月実施完了。デジタル庁の「フロッピーディスク」使用規定撤廃の方針とは
デジタル庁は2024年7月、行政手続きにおけるフロッピーディスクの使用を求める規定の撤廃が完了したと発表しました。なぜ同庁は、フロッピーディスクの撤廃を推進したのでしょうか?
そもそも、フロッピーディスクとは何か?
「フロッピーディスク」と聞いて、ある程度の年齢以上の人であれば、すぐにその形状や仕様が思い浮かぶでしょう。一方で、若い世代には、何らかのディスクであること以外は伝わらないかもしれません。
フロッピーディスクは約20年以上も前のパソコンで標準的に使用されていた、持ち運び可能な記録媒体です。1967年に8インチ(約20.3cm四方)のフロッピーディスクが開発され、その後、5.25インチ(約13.3cm四方)、3.5インチ(約8.9cm四方)と小型化が進みました。
フロッピーディスクのプラスチックケースの中には薄い磁気ディスクが入っており、ここにデータを保存します。データ容量は最大で1.44MB(メガバイト)と少なく、大容量動画はもちろん、高画質の画像ファイルも保存することはできないでしょう。
現代では、フロッピーディスクを使う機会はほぼありません。そもそもフロッピーディスクの生産は2011年に終了しており、市場に流通しているパソコンに、フロッピーディスクの読み取り用ドライブは付いていません。
このように、過去のテクノロジーと表現しても過言ではないフロッピーディスクですが、一部では、現在でも使い続けられていたようです。
「フロッピーディスクを使用すること」と定められた法律が存在する
現在もフロッピーディスクが使用し続けられている“一部”とは、日本政府のことです。というのも、過去に各省が定めた省令には、申請や届け出をする際に、「フロッピーディスクを使用すること」と定められているケースが多く存在していました。
デジタル庁が2022年12月に発表した「フロッピーディスク等の記録媒体を指定する規定の見直しについて」という資料によると、各省庁が精査した結果、フロッピーディスクの使用を規定する法令が、約2,100条項も存在していました。
デジタル庁では、2021年11月に開催された第1回デジタル臨時行政調査会にて、経済界から「申請や届出に関する行政手続について、フロッピーディスクに書類を格納し提出を求める規定が残っており、データの授受に記録媒体を要さない、オンライン手続を可能としてほしい」という要請を受けていたといいます。
デジタル庁では、この約2,100条項に定められたフロッピーディスクの規定について、先端的な技術の活用の妨げとなり、旧式の媒体の使用が強制されていると判断。約2,100条項のオンライン手続きやクラウドサービスの利用に関する規定を整備することと、旧式の媒体の使用を規定する条項の削除を実施することを発表しました。
記録媒体を指定する規定の見直しのイメージ
(デジタル庁:「フロッピーディスク等の記録媒体を指定する規定の見直しについて」より引用)
フロッピーディスクと明記せず、抽象的な内容に変更
デジタル庁の発表を受け、各省は記録媒体にフロッピーディスクを指定する規制の見直しを行いました。
たとえば経済産業省では2024年1月に、記録媒体としてフロッピーディスクを指定する規制の見直しのため、経済産業省所管の省令の改正を行ったと発表しました。対象となったのは、古くは1951年に成立した「鉱業法施行規則」から、2014年の「経済産業省関係産業競争力強化法施行規則」まで、全34の省令です。
同省はこれら34の省令について、申請や届出の方法において、フロッピーディスクなど特定の記録媒体の使用を定める規定が数多く存在し、手続きのオンライン化の妨げとなっている状況があり、かつ現行のままではクラウドサービスの利用の可否が必ずしも明確ではないと発表。省令における「フレキシブルディスク」(※フロッピーディスクの別名)、「シー・ディー・ロム」といった具体的な媒体名を削除し、「電磁的記録媒体」といった抽象的な内容に変更したといいます。
新しいテクノロジーも、古くなる日は訪れる
そして2024年7月19日、デジタル庁は「フロッピーディスク等記録媒体に関する規制の廃止について」というリリースにおいて、2024年6月28日に、フロッピーディスクの使用を求める規制を全廃したと発表しました。
デジタル庁は2021年の発足より、人による目視や常駐・専任など、アナログ的手法を前提としたルール「アナログ規制」の見直しを掲げていますが、今回のフロッピーディスクの使用を求める規制の撤廃もその一環であり、今後もアナログ規制の一掃を進めていくとしています。
かつては先進的だったテクノロジーも、時代の進化とともに、やがては古く、使い勝手が悪いものに変わっていきます。フロッピーディスクを現在も使い続けている企業は少ないかもしれませんが、もし現在の業務に煩わしさを感じているのであれば、テクノロジーを最新のものに変えることで、業務はよりスムーズに改善することでしょう。
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