
次世代のWi-Fi規格である「Wi-Fi 7」がついに解禁されました。Wi-Fi 7は、従来のWi-Fiと比べて、何がどう優れているのでしょうか? その特徴を解説します。
「Wi-Fi 7」が2023年末に解禁。従来とは何が違うのか?
2023年12月末、総務省は電波法施行規則を改正し、新たな無線LANの通信規格「IEEE 802.11be」の利用を認可しました。
このIEEE 802.11beは、無線LANの普及促進を目的とした業界団体「Wi-Fi Alliance」によって「Wi-Fi 7」と名付けられています。Wi-Fi 7は、日本では2021年2月にスタートした「Wi-Fi 6E」に次ぐ、最新のWi-Fi規格です。
2023年末にWi-Fi 7の解禁が報じられた後、各社から続々とWi-Fi 7に対応したルーターの新製品が発表されており、中にはすでに購入したり、導入の検討をスタートしている企業もあるかもしれません。
しかし、Wi-Fi 7は、従来のWi-Fiとは何がどう違うのでしょうか?
Wi-Fi 7は無線でも高速通信が可能。リアルタイム性が重視される現場に最適
Wi-Fi 7が従来のWi-Fiと比べて特に優れている点は、最大通信速度にあります。
Wi-Fi 7では、Wi-Fi 6Eと同様に2.4GHz、5GHz、6GHzの周波数帯が使用できますが、このうち6GHz帯にて、最大帯域幅が新たに320MHzまで拡大(従来は160MHzまで)。より広い帯域ができるようになったため、データ転送量が増え、通信スピードが高速化しました。
Wi-Fi 6EとWi-Fi 7の違い
さらに、「4K-QAM(4096QAM)」「MLO」という、新たな技術も加わっています。4K-QAMとは、Wi-Fi通信のデジタルデータを電波に変換する変調技術の方式のひとつで、従来のWi-Fi 6Eで採用された「1K-QAM」方式と比べ、1つの信号で送信できる情報量が1.2倍に増えています。
もうひとつのMLOとは「マルチリンク機能(Multi Link Operation)」の略で、異なる周波数帯にまたがって、柔軟にデータの伝送を行う機能のことです。MLO機能が無い場合、デバイスは1つの周波数帯のみを選択し通信を行いますが、MLO機能がある場合、デバイスは異なる周波数帯を利用した通信を行います。
Wi-Fi 7ではこれらの技術によって、従来のWi-Fiよりも高速の通信ができるようになりました。総務省が発表した資料によると、Wi-Fi 7の最大通信速度(理論値)は46Gbpsで、これは従来のWi-Fi 6/Wi-Fi6Eの9.6Gbpsの約4.8倍も速い数値です。
さらに、データの伝送遅延や信号伝送時間のズレや揺らぎも無くなるため、映像や音声を通信する際の乱れや遅延が抑制できるようになります。そのため、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、eスポーツなどのゲーム、ロボットアーム制御などの産業用途、医療における高速データ通信のような、リアルタイム性が求められる場面でも、無線通信が問題なく利用できることが期待できます。
Wi-Fi 7を急いで導入する必要は無い?
このようなメリットを持つWi-Fi 7ですが、今すぐ対応ルーターを導入したとしても、その能力がすべて発揮できるとは限りません。
というのも、Wi-Fi 7の通信を利用するためには、ルーターだけでなく、PCやスマートフォンなどの端末も、Wi-Fi 7に対応している必要があります。記事執筆時点では、Wi-Fi 7に対応した端末は日本市場には出回っておらず、たとえ導入しても、しばらくの間は宝の持ち腐れになる恐れがあります。
加えて、Wi-Fi 7に対応したルーターもまだ発売されたばかりで、選択肢はそこまで多くありません。中には高価なものも多く見られます。よほど高速の無線通信を求める環境でない限りは、そこまで急いで導入する必要は無いかもしれません。
そもそも、従来の規格であるWi-Fi 6Eは2021年2月にスタートしており、解禁から現在まで3年しか経っていないため、その前の規格である「Wi-Fi 6」(2019年解禁)、さらに前の規格である「Wi-Fi 5」(2013年解禁)や「Wi-Fi 4」(2009年解禁)を、現在も使い続けている企業も多いはずです。Wi-Fiの置き換えを考えるのであれば、まずはWi-Fi 4/5を、Wi-Fi 6/6Eに切り替えていく選択肢を優先すべきでしょう。
Wi-Fi 7の利用が普及するのは、まだまだ先のことかもしれません。しかし、もし自社のビジネスにおいて、無線端末の高速通信が求められるのであれば、Wi-Fi 7という選択肢が生まれつつあることを覚えておいた方が良いでしょう。
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