コンピューターが音声を認識して、テキストやコマンドへと変換する「音声認識技術」は、AIの進化に伴い急速に発展しています。音声認識技術を搭載した商品は、建設や医療業界、自治体にも取り入れられています。進化の進む音声認識技術の活用事例を紹介します。
AIが音声認識技術をさらに進化させ、市場が拡大中
音声認識技術とは、コンピューターが人間の音声をデジタルデータに変換し、テキストとして出力する技術です。
音声認識技術については2000年代から実用化が進んでおり、特に新しい技術というわけではありません。しかし、データを自律的に解析して特徴を抽出する深層学習(ディープラーニング)が備わったAIと組み合わされることで、その精度が飛躍的に向上。音声のテキスト化に留まらず、音声アシスタントやスマートスピーカー、文字起こしアプリなどの商品が次々と開発されています。
音声認識の市場も拡大しています。ITビジネスの調査・コンサルティング会社の株式会社アイ・ティ・アールが発行する市場調査レポート「ITR Market View:画像・音声認識市場2024」によると、2023年の音声認識市場の売り上げは前年度比21.0%増の150億円といいます。さらに、技術のさらなる進歩と用途の拡大により、2028年には同市場が300億円規模にもなると予測されています。
会話をするだけでカルテを生成。相手の発言に応じた回答の出力も
音声認識技術を搭載した商品は、ビジネスの現場にも取り入れられており、業務の効率化に貢献しています。
たとえば株式会社アドバンスト・メディアが提供する「AmiVoiceスーパーインスペクションプラットフォーム」は、建築現場のDXを実現するソリューションです。
業界では、建設事業者がマンションの完成直前に実施する仕上げ検査において、施工業者に申し送る修正箇所のメモや修正指示書を手書きで記していたといいます。しかし同ソリューションは、検査結果を検査員の音声により記録し、記録内容を転送するだけで、施工会社別の帳票に自動でPDFに変換します。同社調べによると、検査結果の入力時間が約40%削減されることが実証されました。
医療現場の効率化するため株式会社piponが開発したのが、カルテ作成支援サービス「ボイスチャート」です。
同ソリューションは、医療現場で多くの時間を要していた「カルテ作成」を自動化します。診察時の医師と患者の会話を録音するだけで、その内容がAI技術により主観的情報・客観的情報・評価・計画の4項目に整理され、カルテに変換されます。聞き洩らしの防止や医師や看護師の業務を補助する医療クラーク(医師事務作業補助者)を雇用するコストの削減にもつながります。入力時間の節約により、患者との対話や診断結果の分析に充てることも可能です。
大阪府守口市では、家庭ごみに関する電話での問い合わせに対して、AIによる音声対話形式で自動応答する「ごみの窓口AI電話エージェント」を導入しました。このサービスは、株式会社サイバーエージェントと株式会社AI Shiftが共同開発したもので、ごみの分別方法や収集日、年末年始の収集スケジュールなどの問い合わせに対応します。
守口市では、ごみに関する電話での問い合わせが多かったため、ごみ分別ガイドのチャットボットを開設したものの、電話の問い合わせが大幅に減ることはありませんでした。そこで、AIによる電話相談を24時間365日稼働させたところ、電話相談の件数が約15%減少したといいます。
専門用語が多く、音声認識が難しい職場はどうすれば良いのか?
家庭にもビジネスの現場にも用いられるようになった音声認識技術ですが、使用環境によっては十分に機能が発揮されない可能性があります。
例えば、雑音の多い環境で音声の録音をすると、音声認識の精度は落ちます。音声を拾いやすくするためには、マイクや雑音を除去するソフトの導入を検討したり、雑音の少ない環境を整備する必要があるでしょう。
たとえ雑音が少ない静かな環境でも、方言やスラング、若者言葉については、音声認識の精度は下がります。音声認識の精度を高めるには、できるだけ標準語で話すことが望まれます。専門用語が多い職場であれば、認識したい言葉を追加学習できる音声認識システムを選ぶのが良いでしょう。
音声認識は単なる文字起こし・文字入力ツールを超え、業務効率化に資するツールに進化をしています。日々の業務の中で、誰かと会話をするシーンは必ずあるはずです。その中のいずれかに最新の音声認識技術を導入することで、業務はグンとラクになるかもしれません。
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