2024.09.24 (Tue)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第61回)

GoogleもMicrosoftも参入。「生成AI検索」は何が凄いのか

 生成AIに対する質問の回答を、Web上に存在するさまざまな記事をソース元に作成する「生成AI検索」ツールが続々登場しています。どのようなツールなのでしょうか?

Web上のコンテンツを元に回答を作り出す「生成AI検索」が登場

 「生成AI」といえば、指示を入力するだけで、文章やイラストなど、コンテンツが生成できるAIです。OpenAI社が2022年に公開した「ChatGPT」(チャットジーピーティー)をはじめ、さまざまな生成AIが世に送り出されています。

 この生成AIに、2024年から「生成AI検索」という、生成AIと検索エンジンを結び付けた新たなサービスが生まれつつあります。「検索連動型生成AI」「AI検索エンジン」など、さまざまな呼び方が存在しますが、本稿では「生成AI検索」に統一します。

 生成AI検索は、従来の検索エンジンとは異なり、検索したいことをユーザーが文章で入力する点が特徴です。生成AIはそれに対する答えをウェブ上のコンテンツから調べ、その根拠となったコンテンツへのリンクとともに、ユーザーに対して回答文を提示します。ウェブ上の複数のコンテンツを元に回答するため、出力の精度が比較的高く、かつ最新の話題にも対応できる点が特徴です。

ソフトバンクが提携「Perplexity」のサービス内容とは

 この生成AI検索サービスの中で、特に知られているものが「Perplexity」(パープレキシティ、略称パープレ)です。アメリカの同名のスタートアップ企業が、2022年にリリースし、2024年6月にはソフトバンクとの提携が発表されたことでも話題を呼びました。

 Perplexityは無料で利用できる生成AI検索ツールで、「何か質問してください」と書かれた入力欄に質問することで、それに対する回答を長文で返します。回答文の上には、回答のソースとなった記事へのリンクも掲載されています。さらに、回答文の一部には「2」や「3」といった数字が表示され、これをクリックすることで、ソース元の記事へ遷移することが可能です。

 無料版のほかに有料版(Pro)も用意されています。有料版では、AIモデルが選択できたり、動画検索や画像生成機能も用意されています。さらに、「Proサーチ」と呼ばれる高度な検索が、無料版では1日5回までに対し、有料版では1日300回まで使用可能です。月額料金は20ドル(約3,000円)で、年払いの場合は200ドル(約30,000円)です。

Perplexityの回答の出力画面。回答内容とともに、ソース元となった記事のリンクや写真が表示される

Microsoft、OpenAI、Googleも生成AI検索に参入

 Perplexityに追随するように、他社からも生成AI検索サービスが続々と登場しています。

 たとえばMicrosoftでは、2023年2月に同社の検索エンジン「Bing」に、AIによるチャット検索機能である「Bing Chat」を追加。同年11月には名称を「Microsoft Copilot」(マイクロソフト・コパイロット)に変更しました。CopilotもPerplexityと同様、文章による質問に対し、Web上の記事をソースとして回答し、そのソースとなる記事へのリンクも表示します。

 Copilotには無料版と有料版があり、無料版にはテキスト生成や画像生成機能も利用できます。有料版では、同社のサブスクリプションサービス「Microsoft 365」との連動も可能です。たとえばWord文書の要約や、Excelのデータ集計、Powerpointの下書きなどを、Copilotが代行することにも対応しています。

Microsoft Copilotの回答の出力画面。ソース元の記事へのリンクが表示される点はPerplexityと変わらない

 さらに、ChatGPTのOpenAI社も、2024年7月に「SearchGPT」という生成AI検索ツールを発表。現在、同サービスのプロトタイプを一部のユーザーに限定で提供しています。

 検索エンジン世界最大手のGoogleも、2024年5月に「AI Overview」という生成AI検索ツールをアメリカにてリリースしました。同年8月には、日本を含む6カ国で提供することも発表されています。日本では8月末現在、試験運用版が利用でき、一部のキーワードでAIによる要約文が表示されています。

最大のハードル「著作権」をどうクリアするか

 このように各社が生成AI検索ツールの開発に取り組む一方、一般的に活用されるためには、いくつかのハードルをクリアする必要がありそうです。

 そのひとつが、事実に基づかない情報や間違った回答を、AIが堂々と出力してしまう「ハルシネーション」です。生成AI検索は、ソースとなる記事の内容を元に回答するため、一般的な生成AIと比べてハルシネーションは発生しにくいものの、大規模言語モデルの特性上、ハルシネーションは完全には排除できません。回答内容を検証する作業は必要といえるでしょう。

 別のハードルとしては、「著作権」の問題も存在します。

 2024年7月、一般社団法人日本新聞協会は、生成AI検索が著作権を侵害している可能性が高い旨の声明を発表しました。同声明では、生成AI検索は利用者が求める情報をネット上から探し出し、それを転用・加工したコンテンツを提供することを主な機能としているため、著作権法における「軽微利用」規定に違反していると主張しています。

 同協会では、従来の検索サービスは、ネット上の著作物への「道案内」として、著作権法における軽微な範囲で他人の著作物を無許諾利用することが認められているものの、生成AI検索は道案内どころか「種明かし」をしており、多くのユーザーが生成された回答で満足し、参照元のウェブサイトを訪れない「ゼロクリックサーチ」が増え、報道機関に著しい不利益が生じる恐れがあると指摘しています。

 同様の指摘はアメリカでもされており、たとえば経済誌「Forbes」は、Perplexityによって著作権が侵害されたとして、PerplexityのCEOに苦情を入れたことが報じられています。

 このように著作権の問題はあるものの、生成AI検索はWeb上の信頼性の高いコンテンツを元に回答を出力するため、比較的ハルシネーションが発生しづらい、納得度の高い回答を生成することが可能です。無料で使用できるサービスも多いため、まだ使っていない人は一度使用してみて、回答の精度の高さを体感してみてはいかがでしょうか。

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