2023.03.30 (Thu)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第20回)

なぜ企業や自治体が「VTuber」を起用するのか?

 さまざまな企業や自治体が「VTuber」(ブイチューバー)を宣伝のキャラクターとして起用しています。そもそも、VTuberとは何なのでしょうか?なぜ企業や自治体が、VTuberを起用するのでしょうか?その狙いと事例、今後の展望について探ります。

VTuberの魅力とは?誰が支持しているのか?

 VTuberとは、2Dや3Dの架空のキャラクターの姿を借り、YouTubeなどで動画投稿やライブ配信を行う配信者のことで、簡単にいえばユーチューバー(YouTuber)のバーチャル版です。VTuberはYouTubeなどの動画配信メディアを舞台に、トレンドアイテムのレビューやゲーム実況といったさまざまな動画コンテンツを発信しています。

 VTuberはユーチューバーとは違い、動画中に自分自身の姿を見せません。そのかわり、モーションキャプチャやVRなどの技術を用いて、自身の身代わりとなる2D/3Dのキャラクターがあたかも喋っているかのような映像を配信します。基本的には生配信がメインとなるため、VTuberと視聴者はリアルタイムで双方向のコミュニケーションが可能です。

 この“キャラでありながら人であり、人でありながらキャラである”ところが、VTuberの大きな魅力となります。

 VTuberは特に若年層に人気となっています。人気VTuberが数多く所属するバーチャルライバーグループ「にじさんじ」によると、2022年1月31日時点のユーザー登録ID数は43万人にのぼり、その年齢内訳は、29歳以下が84%を占めています(19歳以下が26%、20~29歳が58%)。

企業も自治体もVTuberを起用している

 こうした背景から、さまざまな企業が、若年層をターゲットとした宣伝キャラクターとしてVTuberを起用し始めています。

 たとえば2022年10月に開催された、朝日新聞社とJA全農共同主催のオンラインイベント「バーチャル物産展@JAタウン」では、31名の人気VTuberたちが売り子となって特産物の販売会を行いました。JA全農によると、JAタウンで扱っている農畜産物の価格帯はスーパーよりも高いことから、これまで高年齢層の利用が多かったものの、このバーチャル参加者は20~30代の若者層が中心で、若い世代への認知向上へ貢献したとしています。

 2023年1月には、ヤクルトのロングラン商品「ソフール」の新CMの声優に、チャンネル登録者数170万人以上を誇る人気VTuber「壱百満天原(ひゃくまんてんばら)サロメ」が起用されました。同CMでは人気俳優の内田有紀さんも出演していますが、ヤクルトでは常に第一線で活躍を続ける俳優と現代を象徴するVTuberを融合することで、発売から48年が経ったソフールの訴求を狙っているとしています。

 2023年2月には、三重県にある志摩スペイン村の期間限定アンバサダーとしてVTuberの「周央サンゴ」が就任。コラボイベント開催初日の来場者数は約7,000人となり、昨年の同じ日の2倍以上の来場者を記録したといいます。

 VTuberを起用しているのは、企業だけではありません。いくつかの自治体が、地元の観光のアピールのためにVTuberとタイアップしています。たとえば東京都は2023年2月13日、観光大使として16名を選出しましたが、そのうち3名が、「ホロライブ」という事務所に所属するVTuberとなっています。

 2021年には、埼玉県の埼玉バーチャル観光大使として、VTuberの「春日部つくし」が就任。YouTubeに埼玉県の観光・物産の魅力を発信する動画をアップロードしています。

 VTuberと「観光」の組み合わせの歴史は古く、コロナ禍前の2018年には、日本政府観光局の訪日促進アンバサダーとしてバーチャルYouTuberの「キズナアイ」が選ばれていました。

既存の自社キャラクターや従業員をVTuberとして起用する方法も

 このように外部のVTuberを広告塔として起用するケースがある一方で、企業が内部からVTuberとして発信するケースも増えています。

 たとえばサンリオのYouTubeチャンネル「HELLO KITTY CHANNEL」では、サンリオのキャラクター「ハローキティ」が、VTuberのように軽快にトークを繰り広げる番組を配信しています。チャンネル登録者数は現在34.7万人に登っており、特にハローキティがポップコーンマシーンの前で合いの手を入れるシュールな動画は965万回再生(2023年3月時点)と、1,000万の大台に迫っています。自社の人気キャラクターをVTuberとして起用するという点で、サンリオならではの取り組みといえるでしょう。

 ほかにもロート製薬やNetflixなどで、従業員がVTuberとしてPR動画を発信しています。VTuberであれば、従業員が動画内で顔を出す必要が無いうえ、内部の人間だからこそ専門的な情報が発信できるという強みも発揮できます。近年はVTuber用のアバター製作ツールや配信プラットフォームの開発が進み、VTuberとして配信を行うハードルは低くなっています。

 QYResearch社の調査によると、世界のVTuberの市場規模は、2021年の16億3,900万米ドルから、2028年には174億米ドルに達すると予測されています。企業や自治体の情報の発信手段として、VTuberという手段があるという点は、覚えておいても損はないはずです。

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