2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2023.03.30 (Thu)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第23回)

「気象ビッグデータ」が売上増とロス削減に貢献する

 商品やサービスの売れ行きは、天気や気象条件によって左右されます。好天に恵まれ販売が好調なケースもあれば、降雨の影響で売上が伸びず、フードロスなどの廃棄物が発生する恐れもあります。最近では気象のビッグデータを利用し、需要を予測することで、ロス削減と売上拡大をめざす企業もあります。今回は、「気象ビッグデータ」の活用例と可能性を紹介します。

需要予測を誤ると、売上が伸びずロスも増える

 世の中の商品やサービスの売れ行きには、少なからず気象が影響しています。たとえばスーパーマーケットの来客数も天候に左右されます。悪天候の日が続けば、来客数は好天の日と比べるとどうしても少なくなり、売上も伸びないことが予想されます。

 もちろん天気が事前に予想できていれば、対策は可能です。とはいえ、近年は異常気象が起こりやすくなっています。気象庁のデータによると、大雨の年間発生回数は有意に増加していて、1時間降水量が80mm以上など、より強度の強い雨ほど増加率が大きくなっています。また、真夏日や猛暑日も増加傾向にあります。従来通りの需要予測では読み通りにいかず、商品が余ったり、欠品・不足して販売する機会を損失する恐れがあります。

 需要予測を外すことは、本来食べられるのに捨てられる「食品ロス」の発生にもつながります。特に日本は食品ロスが多く、2020年度は522万トンもの食品が破棄されています。これは、国連世界糧計画(WFP)による食料支援量の約420万トンの1.2倍に当たります。

 食品ロスをする際には当然廃棄コストがかかり、経営の負担になります。それだけでなく、食品ロスをゴミとして処理することで、温室効果ガスの排出量も増えることになります。食品廃ロス及び廃棄物からの温室効果ガス排出量は、世界の人為起源温室効果ガス排出量の8~10%を占めるといわれています。ビジネスという観点でも地球環境を守るという点でも、食品ロスの発生は抑えるべきでしょう。

「気象ビッグデータ」が売上アップとロス削減に貢献する

 需要予測を外さないためには、より精度の高い気象情報を得て、ビジネスに活かす必要がありますが、すでに気象業界では、気象に関するビッグデータ「気象ビッグデータ」を活用した需要予測サービスが生まれています。

 たとえば一般財団法人日本気象協会は、高精度の気象データに、出荷量データやPOS(販売データ)、価格データなどを掛け合わせた商品需要予測サービスを提供しています。このサービスを利用することで、食品ロスや販売機会のロスを減らし、適切な広告プロモーションや営業活動が期待できるようになります。

 このサービスを利用したある食品メーカーは、同社の商品である「冷やし麺のつゆ」のシーズン終盤の需要予測に利用。販売機会のロスを防ぎ、最終在庫を前年に比べて35%削減しました。また、あるベーカリーは、天気と来店客指数で製造量を調整したことで、前年同月と比べて破棄率を約24%削減しました。

 同協会ではさらに、アパレルや小売店向けの需要予測サービスも展開しています。スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店が来店客数を的確に予測できれば、合理的・効率的に企業活動を行うことができ、製造や流通などサプライチェーン全体に大きなメリットを生むことが期待できます。

 あるスーパーでは、気象ビッグデータと660カテゴリ以上のPOSデータの相関を解析した商品需要予測をもとに、店内で調理する総菜の数量を客観的に判断。たとえば雪の日は数量を3割も減らすなど思い切った判断ができるようになったそうです。

 気象情報会社のウェザーニュースでは、製造業と小売業向けに商品の需要予測やデータ分析を支援する気象データセットを販売しています。

 このサービスでは、1km四方の高解像度な気象予測・過去予測・実況解析データが提供されます。天気や気温、降水量など商品の売れ行きに影響がある気象要素のデータを細かく分析することで、店舗ごとのピンポイントな分析や需要予測モデル構築が可能になります。

天候は変えられないが、予想して先手を打つことはできる

 こうした“気象ビッグデータ”を活用した需要予測ツールは、さらなる進化を遂げる可能性があります。

 たとえば日本気象協会は、Twitterのつぶやきを分析し、気温の「感応度」を指標化する取り組みも進めています。たとえば同じ25度でも、7月下旬と8月下旬を比べると、8月下旬では暑いと感じる人は少ないというデータが出ているといいます。単に気温を予測するのではなく、人間の体感温度まで踏み込むため、より高度な商品需要予測が可能になるでしょう。

 気象ビッグデータを活用した、新たなサービスが誕生する環境も整いつつあります。気象庁では2017年に、さまざまな産業と気象データのマッチングや、気象データ利用のスキルアップ、気象データを高度利用した新たな産業を創出する場である「気象ビジネスコンソーシアム」という組織を設立しました。これは、気象事業者、情報通信、農業、小売、保険などの産業界、先端技術に知見のある学識経験者、関係府省庁・地方公共団体といった連携組織で、2023年2月28日現在、1269会員が所属しています。

 天気は人間が操作できるものではありませんが、少し未来の天気を予測し、対策を事前に打つことは可能です。商品のロスを減らし、販売機会を最大限に活かすのであれば、気象ビッグデータが大きな力になるでしょう。

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