
「Bluesky」という、X(旧Twitter)に似たSNSが2023年に誕生しました。一見するとそっくりにも思えますが、Blueskyは「分散型SNS」という点で大きく異なります。
イーロン・マスク氏による買収後、Twitterはどう変わったのか?
140文字の短文でコミュニケーションを行うSNSといえば「X(エックス、旧Twitter)」です。2006年に誕生した同サービスは、実業家のイーロン・マスク氏による買収を受け、2023年に名称が「Twitter」から「X」に変更されました。
しかし、一部の国や地域では、同サービスの使用を停止する動きが見られます。たとえばブラジルでは2024年8月、同国の最高裁判所が、運営者が誤情報を拡散したユーザーのアカウントを規制しなかったことを理由に、ブラジル全域でXのサービス提供を禁じる命令を出しました。X社はその後、最高裁判所に対し罰金を支払うなどの対応を行ったことで、同国におけるXのサービスは再開されています。
2025年1月には、60を超えるドイツの大学や研究機関が、Xの使用を一斉に停止することを発表しました。停止の背景には、Xが偽情報の拡散に使用されるなど、「公正で民主的な議論を促す責任を果たしていない」ことが挙げられています。
このほかにもマスク氏が買収した後のXでは、長文投稿や収益化を可能にする有料プランが導入されたり、特定のユーザーに対し自分の投稿を隠す「ブロック」機能が誰でも見られる仕様に変更されるなど、サービスの内容が旧Twitter時代から変化しています。こうしたことから多くのメディアでは、Twitter時代からのユーザーが“マスク色”を強めるXを離脱し、別のSNSへと移っていることを報じています。
文字数制限は140→300に増加。見た目はそこまで変わらない
Xに代わるSNSとして、現在ユーザー数を伸ばしているSNSのひとつが「Bluesky」(ブルースカイ)です。
Blueskyは、Twitterの共同創業者であるジャック・ドーシー氏が中心となって開発されたSNSです。2023年にアプリの提供が開始され、当初は招待制でしたが、2024年2月からは誰でも自由に登録できるようになりました。
Blueskyは旧Twitterと共通点が多い点も特徴です。他ユーザーの投稿が時系列で表示されるタイムライン機能や、他ユーザーの投稿を拡散するリポスト機能や、投稿に対して返信をするリプライ機能など、基本的な仕様にほとんど変わりはありません。アプリのアイコンも「青バック+蝶のマーク」というデザインになっており、旧Twitterの「青バック+鳥のマーク」と非常に似ています。
Blueskyのタイムライン画面のスクリーンショット。旧Twitterと似たデザインが採用されている
特に異なる点としては、投稿できる文字数は300文字と、Xの140文字から大幅に増加しています。加えて、Xでは標準機能であったDM(ダイレクトメッセージ)や、フォロワー以外には投稿を非公開とする“鍵アカウント”も利用できません。広告についても、Blueskyのタイムラインには表示されていません。
分散型SNSは、中央集権型SNSと何が違うのか?
BlueskyとX(Twitter)の大きな違いのひとつに、Blueskyは「分散型SNS」である点が挙げられます。
Blueskyは、「ATプロトコル」と呼ばれる技術基盤で構成されており、複数のサーバーにデータが分散される仕組みとなっています。そのため、あるサーバーに不具合が発生したり、サーバーのポリシーが変更されたとしても、自身の投稿データを他のサーバーに移管することで、引き続き使用し続けることが可能です。自身でサーバーを立ち上げることもできます。
一方のXは、基本的にはひとつのサーバーで運営する「中央集権型SNS」です。中央のサーバーに不具合が発生した場合、サービス全体がストップする恐れがあります。Blueskyは、一見するとXと似たような見た目ではあるものの、サービスを支えるシステムや考え方は、Xとは大きく異なることがいえます。
このほかにもBlueskyでは、タイムラインを表示するアルゴリズムをユーザー自身で調整する「カスタムフィード」機能を利用することも可能です。作成済みのカスタムフィードは、他のユーザーへの共有もできます。
ユーザーは増加中だが、日本語アカウントはまだ少ない
このような特徴を持つBlueskyは、現在世界中でユーザーが増加し続けており、2025年1月末で3,000万ユーザーを突破したといいます。
しかしながら、ユーザー数では圧倒的にXが上回っています。Xの日本法人であるX Corp. Japan株式会社によると、全世界で月1回以上Xを利用した利用者数は5.7億ユーザー(2024年 第二四半期時点)で、文字通り桁が違います。日本のユーザー数に限っても6,700万(2023年平均、月一回以上利用者数)であり、Blueskyの全世界のユーザーを大きく上回っています。
企業アカウントも、Xと比べると少なめです。たとえば全国紙の新聞社のアカウントも朝日新聞と日経新聞(日経電子版)など数社が存在するのみです。在京テレビ局のアカウントも、記事執筆時点では確認できませんでした。Blueskyはまだ始まったばかりのサービスであり、日本のユーザーが増えるのはこれからが本番です。
先に触れたように、BlueskyはXと似たデザインであるものの、システムを構成する仕様は大きく異なります。まだBlueskyを使ったことがないのであれば、さっそくアカウントを作成し、両者の違いを体験してみてはいかがでしょうか。
※本記事の内容は、すべて公開時点のものです。
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