2024.11.22 (Fri)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第73回)

根拠を元に回答を生成「Perplexity」(パープレキシティ)の魅力

 生成AIは「ハルシネーション」と呼ばれる誤情報を出力することがあります。しかし、Web上のサイトの情報を根拠とし、誤情報を生成しづらい生成AIも存在します。

生成AIが誤情報を出力することは抑制できない

 簡単な命令文(プロンプト)を文章で入力することで、それに応じた文章や画像をアウトプットするAI「生成AI」は、政府や自治体が使用するうえでのガイドラインを発表するなど、すでに我々の生活に浸透しつつあります。実際にビジネスシーンや日常生活で活用している人も多いでしょう。

 こうした生成AIを活用するうえで、特に気を付けたいポイントが「ハルシネーション」です。ハルシネーション(hallucination)とは「幻覚」「でたらめ」を意味する英語で、生成AIが誤った情報をもっともらしく出力したり、文脈とは無関係な内容を出力してしまう現象のことを指します。

 ハルシネーションが生成される原因としては、AIの学習に使用されるデータの量が少ないことや、不正確な情報を学んだこと、プロンプトの指示が曖昧なことなどが挙げられます。

 しかし、総務省の「令和6年版 情報通信白書」では、「ハルシネーションを完全に抑制することは困難」としており、「生成AIを活用する際には、ハルシネーションが起こる可能性を念頭に置き(中略)生成AIの出力した答えが正しいかどうかを確認することが望ましい」と、あくまでも人間が出力された内容を検証する必要があるとしています。

ハルシネーションを出力しにくい生成AI「Perplexity」とは

 生成AIがハルシネーションを生み出してしまうのは仕方ないとはいえ、できることなら最初から精度の高い情報が出力された方が、内容を確認する手間を省くことができます。

 回答の精度の高さで、業界から注目されている生成AIのひとつが「Perplexity AI」(パープレキシティ、以下 Perplexity)です。

 このPerplexityは、アメリカ・カリフォルニア州に本社を構える同名のスタートアップ企業が提供する生成AIで、日本ではソフトバンク社が同社と戦略的提携を結んだことで知られています。

 Perplexityの最大の特徴は、プロンプトを入力すると、リアルタイムでインターネット上のサイトから情報を検索し、さまざまなサイトの情報を元に、精度の高い回答を文章で提示する点にあります。出典元のサイトや画像へのリンクも貼られているため、クリックして元サイトに遷移することで、内容の検証も行えます。

Webの情報を参照するため、最新の情報にも対応

 Perplexityの使い方は、メイン画面に記された「What do you want to know?」(あなたは何を知りたい?)という文章の下にある「Search anything...」の欄に、プロンプトを入力し、Enterボタンを押すだけで回答が生成されます。

 PerplexityはWebサイトを情報ソースとするため、比較的新しい情報にも対応しています。たとえば「2024年11月1日時点における、現在の日本の総理大臣を教えてください」という質問をある生成AIに質問した際、「2024年11月1日時点での日本の総理大臣は岸田文雄です」と誤った回答をしましたが、Perplexityで同じプロンプトを入力したところ、「2024年11月1日時点における日本の総理大臣は石破茂です。」と、正しい回答を出力しました。

 Perplexityは基本的にユーザー登録の必要はなく、無料で使用が可能ですが、アカウントを作成しログインすることで、履歴を残すことが可能です。さらにPDFや文書ファイルをアップロードし、内容の要約を出力することにも対応しています。

 有料版の「Perplexity Pro」も用意されており、複数の高性能AIモデルが選択できたり、YouTube動画からの検索や、画像の生成にも対応しています。料金は月払いの場合は20ドル(約3千円)、年払いは200ドル(約3万円)ですが、現在ソフトバンクでは、同社のスマートフォンユーザーは1年間0円で利用できるキャンペーンを行っています。

母国アメリカでは著作権侵害の疑いも

 Perplexityがリリースされたのは2022年12月のことですが、2024年1月の時点で世界のアクティブユーザー数は約1,000万人を超えたといいます。特にユーザーが多いのはインドネシア(約1,298万人)で、母国アメリカ(約850万人)を大きく上回っています。

 このように世界で受け入れられて始めているPerplexityですが、一方で訴訟のリスクも抱えています。2024年10月には、経済新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」の発行元であるダウ・ジョーンズ社から、同社の記事を無断で使用したとして、著作権侵害で訴えられています。ダウ・ジョーンズ社はPerplexityについて「報道機関が制作したコンテンツにただ乗りしている」と主張しています。

 ダウ・ジョーンズ社が指摘しているように、Perplexityが出力する内容は、ウェブ上に存在するさまざまなサイトの情報に依拠している側面があります。そのため、サイトの内容に誤りがあった場合、Perplexityも誤った回答を出力する恐れがあります。Perplexityはソース元のサイトが存在するためハルシネーションが起こりにくいだけで、誤回答が生成される恐れは十分に考えられます。出力結果の検証が必要なのは、ほかの生成AIと変わりません。

 とはいえ、Perplexityが生成する根拠を押さえた回答は、これまで生成AIの出力結果の精度に納得しなかった人にとっては、驚きをもって迎えられることでしょう。まだ使ったことがない人は、まずは一度使用し、その精度を検証してみてはいかがでしょうか。

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