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2023.09.08 (Fri)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第26回)

「Web3」がもたらすビジネスや社会への影響とは

 2021年頃から、「NFT」(非代替性トークン)や「メタバース」(インターネット上の仮想空間)といったワードを目にしたり耳にしたことがあるかもしれません。これらのワードは「Web3(ウェブスリー)」と呼ばれる、次世代インターネットの概念に関連する技術で、今後のビジネスや社会のあり方は、このWeb3を基軸に進化していくことが予想されています。

 Web3とは、一体どのようなもので、社会をどのように変えていくのでしょうか? 本記事では、Web3関連事業や今後の展望などを解説します。

Web3で自由な通信が可能になる

 Web3とは、Web1.0やWeb2.0に続く次世代インターネットの概念を指します。

 Web2.0では、企業などが提供するSNSなどのプラットフォームを経由して情報のやりとりをしていました。一方Web3では、ネットワーク端末同士を直接接続し、通信記録を分散して保管するブロックチェーン技術などを活用することで、Web2.0時代には無かった、2つのことが可能になるといわれています。

 1つ目は、「セキュリティ性の向上」です。現在のインターネットは、プラットフォーマーが所有するサーバーにデータが集約されているため、ハッキングを受けた場合には膨大な個人情報が盗み出される可能性がありました。一方Web3では、データをユーザー自身が個別に管理するため、ハッキングを受けた場合でも被害は小さく抑えることも可能です。

 2つ目は、「自由な通信」ができるようになることです。Web3ではブロックチェーン(データを時系列に沿ってチェーンのように繋ぎ、分散的に記録できるようにした自立分散型のシステム)をベースとした通信が前提となるため、プラットフォームを介さずに通信が可能となります。そのため、プラットフォーマーに対する手数料なども発生せず、国内外のユーザー同士が自由にデータをやり取りすることができます。

 Web3に関連した技術としては、NFLやブロックチェーンのほかにも、暗号資産、DAO(管理者が存在しない分散型自律組織)などが挙げられます。メタバースも、これらの技術を活用するための空間として、Web3に含まれるテクノロジーです。ある調査会社によると、Web3関連分野の市場規模は、2030年の時点で約335億ドルに到達すると予想されています。

Web3にはどんなサービスがあるのか?

 Web3事業は、特に金融業界やエンタメ業界を中心に発展していくことが予想されており、現時点でもいくつかのサービスがスタートしています。

 金融商品における国内事例としては、三菱UFJ信託銀行のデジタル化した不動産信託受益権を、ブロックチェーンを活用して個人投資家向けに販売するサービスがあります。

 エンターテインメント領域では、全国にファッションビルを展開する株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが、ブロックチェーンゲームの「The Sandbox」内で取得したメタバース上の土地に「SHIBUYA109LAND」という施設を開設。メタバース空間でのNFT販売や、NFTが手に入るミニゲームなどを展開しています。

 Web3はコミュニティ運営でも活用可能です。その一例が、新潟県長岡市の「山古志DAO」です。山古志は、市町村合併により同市に併合された人口800人ほどの地域で、人口減少対策や地域おこしといった社会課題の解決を目的としてNFTを発行しています。

 このNFTを購入すると、コミュニティへのアクセス権や、ガバナンストークンという投票権が与えられたデジタル村民として電子住民票が発行されます。そして、オンラインツールなどを活用したDAO型コミュニティ運営や、村おこしプロジェクト選挙に参加できるなど、立場や物理的位置を超えたフラットな地域参画を可能にしています。

Web3の問題点とは?

 ビジネスだけでなく、社会課題の分野でも広がりを見せるWeb3事業ですが、乗り越えるべき課題も存在しています。

 特に課題な課題として挙げられるのが「法整備」です。日本国内ではWeb3に対する法的解釈や課税条件などの環境が現時点では整備されていないため、日本でWeb3事業を行うことは簡単ではありません。そのため現在、Web3関連の人材が海外に企業が流出しており、経済産業省も「Web3.0事業環境整備の考え方」という資料にて「中途半端な政策では海外への企業・起業家の流出は止まらない」と指摘しています。

 対策としては、暗号資産の法的解釈策定や、暗号資産の税制改正、会計基準の整備を進め、国内におけるWeb3事業への参入障壁を引き下げることが望まれます。

 さらに、ハッキングなどの情報セキュリティ対策も必要です。ユーザー自身が情報を管理できるようになるのはWeb3のメリットでもありますが、同時にユーザー自身で十分にハッキング対策ができていない場合、情報流出などの被害に遭う可能性が高くなります。今後はユーザー保護の仕組みを強化していく必要があります。

 最後に技術的な問題として、電力消費問題が挙げられます。Web3の発展とともにブロックチェーンの活用盤面が広がると、ブロックチェーン上での通信記録を保存するために、莫大な電力が必要となります。そのため、電力消費を抑えられる仕組みや、大量のデータをやり取りするための基盤を構築する必要があります。

 このように現時点ではいくつかの課題はあるものの、Web3は社会やビジネスを大きく変える可能性を持っています。新規ビジネスの創出においては、見逃せないテクノロジーといえるでしょう。

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