2024.02.09 (Fri)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第36回)

AIが奪うのは仕事ではなく電力?生成AIのエネルギー事情

 ChatGPTなど、文章や画像を生成する「生成AI」が普及しつつあります。生成AIは学習のために大量の電力が必要になりますが、最近では“軽さ”が特徴の生成AIも誕生しています。

生成AIの流行で、データセンターの消費電力量が過去最高に

 人工知能(AI)を使ったチャットサービス「ChatGPT」など、自動で文章や画像を生成する「生成AI(Generative AI)」が普及しつつあります。

 この生成AIでは、「プロンプト」と呼ばれる指示をAIに送ることで、文章や画像が生成されますが、それらの生成物は、AIが過去に学習したデータから生み出されます。そのため、より多くのデータを学習したAIほど、生成物の精度も高くなることが期待されます。

 AIがデータを学習するためには、大規模なサーバーが必要です。特に多くの生成AIでは、演算処理を高速で行う高性能の装置「GPU(Graphics Processing Unit)」を使って学習するため、大容量のサーバーが必要になります。サーバーを大量に設置するためのデータセンターも確保する必要があり、必然的に消費電力も高くなります。

 IEA(国際エネルギー機関)が2024年1月に発表した電力に関するレポートによると、世界の多くのデータセンターでは、生成AIなどの影響で電力需要が伸びているといいます。2022年には消費電力量が世界全体で約460TWh(テラワット時)だったのに対し、2026年にはその倍以上の約1,000TWhに達する可能性があるとしています。この数値は、日本全体の総消費電力量に匹敵する数字といいます。

 つまり、生成AIが増えれば増えるほど消費電力量も多くなり、発電の際に排出されるCO2の量も増える恐れがあります。生成AIの流行が、巡り巡って地球温暖化など環境に悪影響を及ぼすことになるかもしれません。

AIの学習には、原発1基以上の電力が必要!?

 生成AIは、実際にどれほどの電力を消費するのでしょうか?実はAIのモデルによって、CO2排出量や消費電力量には差があります。

 アメリカのスタンフォード大学が発表した研究によると、大規模言語モデル「BLOOM」が言語を学習する際に排出したCO2(二酸化炭素)の量は25tで、これは平均的なアメリカ人が1年間に排出するCO2量の1.4倍、ニューヨークからサンフランシスコまで飛行機で1往復する際の排出量の25倍に当たります。消費電力量は433MWh(メガワット時)で、平均的なアメリカ人家庭の41年分の電力量に相当します。

 ただ、これはまだ少ない部類に入ります。ChatGPTを生み出したOpenAI社の言語モデル「GPT-3」が、機械学習の際に排出したCO2は502t、消費電力量は1,287MWhで、BLOOMと比べると、文字通り桁違いに大きな数字です。この1,287MWhという電力量は、原子力発電1基の1時間分の電力量(約1,000MWh)を上回っています。

 生成AIの消費電力は決して一律というわけではなく、高いものもあれば低いものもあります。もちろん精度の高さも重要な要素ではありますが、地球環境やエネルギーコストを考えれば、消費電力にも配慮する必要があるでしょう。

スタンフォード大学が発表した、AIモデルの種類別のCO2排出量(学習時)

“軽さ”が特徴のAI、省エネ&再エネ100%のデータセンターも登場

 このように一部の生成AIには、高い消費電力を要求するものが存在しますが、その一方で、エネルギーの使用を抑えた“軽さ”が特徴のAIも生まれています。

 たとえばNTTグループが開発した大規模言語モデル「tsuzumi」という生成AIでは、世界トップレベルの日本語処理性能を特徴とする一方、AIモデルの軽量化を進めており、ChatGPT(GPT-3)と比較した場合、学習時のコストを最大で300分の1、推論コストを最大約70分の1に抑えられるといいます。

GPT-3とTsuzumiの学習コストの比較

 これに加えて、データセンターも消費電力を抑える取り組みが進んでいます。たとえばNTTコミュニケーションズの「Green Nexcenter」というデータセンターでは、生成AI向けに高発熱サーバーと、熱伝導率の高い液体によるサーバーの冷却装置を導入。従来型と比べ、サーバー冷却のための消費電力が約30%削減できるといいます。さらにセンター内の電気には実質100%再生可能エネルギーを使用し、CO2の排出も抑制しています。

 AIに対するよくある懸念として「AIに人間の仕事を奪われる」というものがありますが、このまま生成AIが増えると、「AIに、本来人間が使うはずの電気を奪われる」という事態が訪れるかもしれません。生成AIはその手軽さと出力される生成物の質の善し悪しが話題になりがちですが、今後は生成AIの省エネ性についても注視していく必要がありそうです。

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