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2024.01.24 (Wed)

テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第35回)

2024年4月から限定解禁「ライドシェア」の可能性

 一般ドライバーが自家用車を使い、有料で顧客を運ぶ「ライドシェア」が、2024年4月に限定解禁されます。ライドシェアとは、一体どのような制度なのでしょうか?

拡大中のシェアリング市場に「ライドシェア」もスタート

 民泊やフリマアプリなど、一般の消費者がモノや場所、スキルなどを必要な人に提供・共有するビジネスモデル「シェアリングエコノミー」が加速しています。シェアリングエコノミー協会の調査では2022年度の日本におけるシェアリングエコノミーの市場規模は2兆6,158億円で、2021年度の2兆4,198億円から約2,000億円の増加。2032年度には最大15兆1,165億円に至ると予測されています。

 シェアリングエコノミー市場ではさまざまなサービスが生まれていますが、2024年4月からは、新たに「ライドシェア」のスタートが予定されています。

 ライドシェアは、一般ドライバーが自家用車を使って有料で顧客を運ぶことを指します。車を使ったシェアリングエコノミーには「カーシェアリング」もありますが、これは複数人で1台の車を共有するサービスを指します。

 ライドシェアのサービス内容は、2つに分類されます。一つは「配車型」で、近くを走っている一般の車が利用者を迎えに来る、いわばタクシーのようなサービスです。もう一つは「カープール(相乗り)型」で、ドライバーは自分と同じ目的地に移動したい人を自家用車に乗せ、ガソリン代、高速料金代、駐車場代などを、利用者と分け合います。

“白タク”は基本的に違法。なぜ解禁されたのか?

 実はライドシェア自体は、日本では基本的には禁止されていました。

 道路運送法という法律では、自家用自動車を有償で運送用途に使用してはいけないことが定められています。自家用車でタクシー営業を行う行為は、俗に「白タク」(自家用車の証である白ナンバー車を用いたタクシー)と呼ばれ、発覚した場合には3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科されます。

 それではなぜ、2024年4月からライドシェアが解禁されるのでしょうか?背景には、タクシーやバスの運転手の減少があります。

 タクシー運転手の数は、2023年3月末時点で約23万人と、4年前から約20%減少しています(全国ハイヤー・タクシー連合会調査、個人タクシーを除く)。バス運転手の数については11万1千人で、実際に必要な数よりも1万人不足しているといいます(日本バス協会調査)。

 このような状況の中で、日本を訪れるインバウンド観光客は増加しており、都市部や観光地では急増した需要にタクシーの供給が追い付いていないという問題も出ています。

 今回のライドシェアでは、タクシー運転手に必要な第2種運転免許を持たないドライバーでも、有償で顧客を運ぶことを限定的に認めています。「限定的」というのは、タクシー会社の管理のもと、車両不足が深刻な地域や時間帯に限るという条件のもとでのみ、ライドシェアが解禁されるというものです。

 そのため、2024年4月の時点では、一般ドライバーが自由にライドシェアビジネスを始められるというわけではありません。しかし政府では、タクシー会社以外の参入の可否や、地域・時間帯の制限の撤廃なども検討しており、2024年6月までに結論を出すとしています。

世界ではライドシェアが2つのスタイルで普及中

 このように、日本ではまだ全面的にライドシェアが解禁されていませんが、海外では普及が進んでいます。Fortune Business Insightsレポートによると、ライドシェアの市場規模は、2020年に764.8億ドルで、2028年には2427.3億ドルに達すると予測されています。

 海外のライドシェアには、2つのタイプがあります。一つは、TNC(Transportation Network Company)型です。TNC型はUberなどの配車プラットフォーマーがドライバーに課す要件を定めて運行管理を行うもので、アメリカ、カナダ、ブラジルなどで採用されています。もう一つは、PHV(Private Hire Vehicle)型で、国がドライバーに対し、車両・運行管理を義務付ける、個人タクシーのようなものです。イギリス、フランス、中国、オーストラリアなどで採用されています。

 特に導入が早かったのが、アメリカのカリフォルニア州でした。同州では2009年以降、UberやLyft などの配車プラットフォーマーが営業をスタート。もともとタクシーの供給が足りておらず、通勤時におけるカープール(相乗り)が普及していたこともあり、同州ではライドシェアが抵抗なく受け入れらました。

 イギリスのロンドンでは、2012年にUberがサービスを開始しました。ロンドンではライドシェア導入以前から、PHV のミニキャブ(予約制の格安タクシー)やタクシーのアプリ配車が普及していましたが、ライドシェアはミニキャブ以上に運転手の柔軟な働き方を可能にしたため、PHV ライセンス取得者が急増したといいます。

 オーストラリアのシドニーでは、タクシーとライドシェア利用者によるサービス比較で、利便性、運転手の態度、接客サービスなどの項目において、ライドシェアがタクシーを上回っています(Uber Japan資料より)。

日本でも一部地域で導入済み。本格スタートは安全面・補償面で課題あり

 実は日本でも、すでにライドシェアがスタートしている自治体があります。

 兵庫県養父市は2018年にライドシェアサービス「やぶくる」をスタート。タクシー会社や観光協会などで立ち上げたNPO法人が運営し、通常タクシーより割安で利用できるのが特徴の一つです。利用料金の70%をドライバーが、25%をNPO法人が、5%をタクシー会社が受け取る仕組みになっています。

 京都府京丹後市は、2016年に配車にUberのプラットフォームを用いたライドシェアサービスをスタートしました。最初の1.5㎞までは480円、以遠は1km120円と、タクシーより割安な料金設定となっています。過疎化・高齢化が大きく進行する同市では、病気になったときに速やかに移送手段が確保できるなど、大きなメリットがあるようです。

 民間のサービスを活用した実証実験も行われています。北海道天塩町では、相乗りのマッチングサービス「notteco」と連携して、住民同士による相乗り実証プロジェクトを実施しています。

 日本でのライドシェア全面解禁に向けてはまだまだ議論の余地があります。特に、運行管理や車両整備といった安全性をどのように確保するのか、事故が発生した際の補償がどのようになるのか、未解決の問題も存在します。

 しかし、タクシーやバスの運転手が減り続けている今、ライドシェアは人々の新たな移動の選択肢となりうる存在です。4月のスタート後、さまざまなプラットフォーマーが加わり、市場が一気に拡大するかもしれません。

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