生成AIと対話することで、従業員の成長を促す「AIコーチング」というサービスが生まれています。AIコーチングには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ビジネスシーンで「コーチング」が導入されつつある
「コーチング(Coaching)」という言葉をご存知でしょうか。コーチングとは「指導」を意味する言葉で、コーチ(教える人)とクライアント(コーチングを受ける人)が対話することにより、クライアントの成長を促し、目標達成を助ける人材開発手法です。
コーチングでは、コーチはクライアントに対して一方的に指示や指導をせず、クライアントの声に耳を傾け、観察や質問、提案を行います。その結果、クライアント自身が成長の必要性に気付き、改善のために自主的に行動することを促します。
コーチングが普及しているアメリカでは、企業の経営層が著名な指導者からコーチングを受けるケースも見られます。日本でも、メルカリなどのIT企業でコーチング制度が導入されています。
教わる側が生成AIと対話する「AIコーチング」も登場
このコーチングを、生成AIによって自動化する「AIコーチング」のサービスも始まっています。
AIコーチングでは、クライアント側のユーザーが、コーチ側である生成AIに対し、分からないことや疑問などを入力し、生成AIがその内容について回答します。この質問と内容を繰り返すことで対話し、コーチングを行っていきます。
AIコーチングのサービスの具体例としては、株式会社リフレクトの日報・振り返りツール「リフレクト」が存在します。
リフレクトは、日報や週報を入力することで日々の業務を振り返り、その内容に対する上司や同僚などメンバーの反応を受けることで、思考を深め、日々の行動を改善するためのツールです。2023年3月、同ツール内に大規模言語モデル「ChatGPT」を活用したAIコーチ「リフレクこ」が導入され、入力した内容に対し、AIコーチが瞬時にアドバイスを返信する機能が利用できるようになりました。
同AIの導入後、1人あたりの利用分数は「週15分程度」から「週30分以上」に、1人あたりコメント数も、1人当たり平均週1回から4回に増加したといいます。さらに、AIコーチはユーザーを励ましたり共感を表すコメントも行うため、ユーザーからは「コメントの精度が高い」「勇気づけられる」と評価する声が届いているといいます。
AIコーチングは学習教材としても活用できる
AIコーチングは、何もビジネス領域に限ったものではありません。学業やスポーツのように、「指導する/指導される」という関係性がある場面では、導入が可能です。
ベネッセコーポレーションの子ども向け通信教育教材「進研ゼミ」では2024年3月より、子どもが納得するまで、何度でも質問を入力できるAIコーチング学習サービス「チャレンジAI学習コーチ」をスタートしました。
このサービスでは、たとえ入力された質問が単語レベルだったとしても、AIがわからないことの原因を予測し、会話を続けていくことで、最適な解説にたどり着くシステムを採用しています。AIからの返答の中には、褒めたり励ましたりする言葉も用いることで、子どものモチベーションを高める工夫も用意されています。
一風変わったコーチングサービスとしては、ソフトバンクのスポーツ練習アプリ「AIスマートコーチ」も存在します。このアプリでは、自分のフォームを動画で撮影し、手本の動画と比較する機能を搭載していますが、この撮影動画をAIが分析し、ユーザーの骨格を解析。フォーム改善のポイントを、自動でアドバイスするコーチング機能も備えています。
一般的にスポーツの指導は、コーチと選手の“二人三脚”で行っていくイメージがありますが、このアプリを使用すれば、コーチの指示を仰ぐことなく、選手自身が改善すべきポイントを発見し、自分でフォームを改良していくことが可能になります。
AIコーチングにも限界はある
ここまで挙げてきたように、AIコーチングには「コーチ側の手間を省き、クライアント側だけで課題に気付ける」「クライアント側は何度もAIに対し質問でき、すぐに回答が得られる」といったメリットが存在します。コーチの人材が確保できない場合や、コーチングの予算が限られている場合は、AIコーチングを利用するのが賢い選択といえます。
しかし、複雑な質問をした場合など、AI側が回答を持ち合わせていない場合は、クライアント側が望んだ回答が得られず、的外れなレスポンスを受ける可能性もあります。高度な指導を受けるためには、やはり高度な知見を持った人物からコーチングを受ける必要があるでしょう。
企業の成長には人材育成が欠かせません。AIコーチングであれば、従業員全員がコーチと1対1の対話をすることが可能になります。リスキリングなどに活用してみてはいかがでしょうか。
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