2018.01.22 (Mon)

朝礼ネタ帳（第122回）

中高年は睡眠が認知症の予防に!?

posted by 風間梢

　認知症が発症するメカニズムについて、2010年1月に医学専門誌『THE LANCET』に掲載されたジャック・CR・Jr氏らの論文によると、発症の原因物質とされるものの排出力が約25年前から脳内で低下し始めることが分かってきました。また研究により、原因物質を排出する力は、ある生活習慣を改善することで向上することが確認されています。

　これらの研究により、一般社団法人認知症予防協会では、45歳前後という働き盛りのビジネスパーソン時代に生活習慣に注意することが、認知症の予防になるとしています。本記事では、どのような生活習慣が認知症の予防となる可能性があるかを紹介します。

認知症は約25年前の働き盛りから始まる

　認知症の最初の要因となるものは、脳が活動すると生まれる老廃物アミロイドβだと考えられています。この脳のゴミとも呼ばれるアミロイドβがうまく排出されずに脳に溜まると、脳神経の先端部を傷つけてしまいます。アミロイドβの蓄積が約10年続くと、脳神経細胞を死滅させてしまうタウタンパク質の蓄積も引き起こすそうです。タウタンパク質の蓄積開始から約15年が過ぎると、蓄積された両者によって脳神経細胞が死滅して、認知症が発症すると、認知症予防協会では説明しています。

　同協会では、認知症が発症する率が高い年齢が70歳前後というデータから、前述のアミロイドβの排出力が低下し始める約25年前の時間を差し引いた45歳前後に、認知症の予防策となる生活習慣の改善を行うことをすすめています。

寝不足が脳内にゴミをためてしまう

　アミロイドβの排出力低下につながる生活習慣はいつくかあります。その1つが睡眠不足だそうです。脳は睡眠を取ると、アミロイドβを排出する力が高まることが研究によって確認されています。睡眠時間や、熟睡といった質を確保すれば、アミロイドβの蓄積が減少し、認知症を予防できる可能性が高まるそうです。

　また同協会では、睡眠でアミロイドβを排出させる力を維持するのと同時に、有酸素運動が脳神経細胞を活性化させることにつながるため認知症の予防になるとしています。

　有酸素運動を行うと、血中の成長ホルモン量が増加されます。成長ホルモンは、脳神経細胞を活性化させる働きがあり、認知症予防には大切なものだそうです。毎日30分から1時間位のウォーキングなどが成長ホルモン量を増加させるには適していることから、同協会は45歳前後から習慣化することをすすめています。

認知症予防で積極的に取る食材、控える食材

　睡眠や運動だけでなく、米のラッシュ大学医療センターの研究では、認知症を予防する食事法というものが発表されています。この食事法はマインド食という別名があり、積極的な摂取をすすめている食材10項目と、なるべく控える食材5項目をあげていることが特徴です。全15項目に関しては、摂取する頻度も紹介しています。

　積極的に摂取するものは、緑黄色野菜（週6日以上）、そのほかの野菜（1日1回以上）、ナッツ類（週5回以上）、ベリー類（週2回以上）、豆類（週3日以上）、全粒穀物（1日に3回以上）、魚（なるべく多く）、鶏肉（週2回以上）、オリーブオイル（優先して使う）、ワイン（1日グラス1杯まで）です。

　控える食材は、赤身の肉（週4回以上）、バター（なるべく少なく）、チーズ（週1回以下）、お菓子（週5回以下）、ファーストフード（週1回以下）となっています。全15項目はアメリカでの研究のため、日本人の食生活に適しているかは研究されていません。

　認知症と食事の関係性について日本の認知症予防協会では、高血糖値が認知症のリスクを高めると考えており、野菜などの血糖値を上げにくい食材から口にすることをすすめています。また中高年には、脳神経細胞やアミロイドβを排出する血管、筋肉、神経伝達に良いとされるさまざまな栄養素の摂取を、同協会では心がけるように呼びかけています。

　ただし肉類や卵に多く含まれるアラキドン酸は、脳神経細胞の主要成分で、学習力や記憶力を向上させるといわれていますが、取りすぎると逆に学習力や記憶力を低下させるという特異な性質のため摂取量に喚起を促しています。

　働き盛りの45歳頃からの睡眠・運動・食事などの生活習慣が、認知症の発症となる脳のゴミを蓄積させていることが研究などからわかりました。まだ20年以上先と考えていた認知症のリスクを減らすために、まずは睡眠時間から見直してみるのはいかがでしょうか。