2017.10.05 (Thu)

朝礼ネタ帳(第109回)

こんな行為もNG!マタハラ防止措置義務化に備えよう

posted by 風間 梢

 2017年1月の男女雇用機会均等法と育児・介護休業法の改正により、耳にする機会が多くなった言葉として「マタハラ」が挙げられます。マタハラとは「マタニティハラスメント」の略で、妊娠や出産した女性に対して降格、解雇、退職勧告などの不当な扱いや嫌がらせなどのことを指します。セクハラ、パワハラと並ぶ、3大ハラスメントに数えられています。

 今回のマタハラ防止に関する法改正では、企業の事業主に「マタハラについて従業員へ周知する」「就業規則などに文書で定める」「相談窓口を社内に設ける」などの義務を定めています。遵守しない場合は厚生労働省から指導・勧告が行われ、それにも従わなかった場合は、企業名が公表されることになりました。義務を怠るとコンプライアンス遵守などの企業姿勢が疑われる可能性もありますので、一度法改正の内容を確認しておきましょう。

上司だけではなく同僚の言動もマタハラに

 改正からの3カ月間で、各都道府県の労働局はマタハラ防止措置の義務が行われているかを調査しました。結果、是正指導を受けた事業所が840あったそうです。この調査から厚生労働省は、マタハラ対策の義務化を把握していない企業は多いと述べています。

 厚生労働省の規定によると、マタハラに当たる言動は次のようなものになります。従業員が妊娠・出産休暇の請求・利用を妨げるような発言する(利用した場合に不利益な処遇となることを匂わせて諦めさせるという示唆も含まれます)。また、従業員が希望していないのに、業務内容の転換や就労時間の変更を強要することも対象です。

 しかし業務上の必要性に基づく言動については、防止装置の対象にはならないとしています。「長時間労働を続けるのは身体への負担が大きいから、就労時間の変更を希望しますか」というように同じ就労時間の変更でも、本人の同意を確認するものはマタハラの対象とならないという見解の弁護士もいます。強要する、しないが分岐点と考えられているようです。

 マタハラの加害者は上司だけではありません。同僚など、周囲の従業員も対象です。たとえば、同僚の出産休暇の利用によって自分に業務のしわ寄せがあったことに対する、嫌味を言うこともマタハラになります。そのため事業主は、前述した「マタハラについて従業員へ周知する」という義務は、管理職だけではなく全従業員に徹底しなければなりません。また妊娠・出産休暇は非正規労働者も取得できますので、事業主は雇用形態にかかわらずにマタハラ防止措置を全従業員に周知しましょう。

女性同士でもマタハラが起きる理由

 連合非正規労働センターが、2013年5月に20~40代の在職中の女性626名に対して行なったアンケート調査によると、マタハラが起きる原因の1位として「男性社員の妊娠出産への理解不足・協力不足(51.3%)」が挙げられており、次いで「会社の支援制度設計や運用の徹底不足(27.2%)」、「女性社員の妊娠出産への理解不足(22.0%)」が挙げられています。

 日本では性別と価値観で2つのマタハラが生まれているといわれています。1つ目がアンケートの1位でもある「男性社員の妊娠出産への理解不足・協力不足」に内在している、仕事と家事が性別で分業されるという価値観から生じるマタハラです。日本には、夫は会社で仕事を、妻は家庭で家事・育児をという価値観がのこっています。それによって、女性は妊娠したら退職という考えによる行動がマタハラを生むとされています。

 2つ目は「女性社員の妊娠出産への理解不足」に内在している、女性の価値観の多様化から生じるマタハラです。従来の結婚や出産を機に育児に専念という考えだけでなく、仕事を優先、もしくは育児と仕事を両立させるなど、現在は女性の人生設計が多様化しています。このように女性同士でも価値観が大きく違うということは珍しくないのです。そのような背景から妊娠・出産休暇を取る女性に対して、女性が嫌味を言ってしまうような状況が考えられます。

 このように男女を問わずマタハラが行われる危険性があることも、事業主は念頭に置いておきましょう。

企業の将来と社会的責任のために

 妊娠、出産には、次世代を育むという社会的な側面もあります。それに関わる妊娠・出産休暇の取得を諦めるような職場環境では、企業が社会貢献を果たしているとは言い難いでしょう。企業としては、できるだけ便宜をはかることを義務づけた今回の法改正の意義を考えることも必要です。

 同時に少子高齢化や人口減少による人材不足が深刻化しつつある社会で、今まで貢献してきてくれた女性社員が復帰しやすい職場環境を整えることは、企業にとっても長期的な利益になると考えることができます。

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風間 梢

風間 梢

フリーライター。企画、人事、ECサイト運営等を担当したのちに独立。現在は就職、流通、IT、観光関連のコラムやニュース等を執筆している。

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