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2018.01.11 (Thu)

朝礼ネタ帳(第120回)

自衛隊流!自信のない人が自信を持てる思考術

posted by あさき みえ

 「今度、取引先でプレゼンをすることになった。君にまかせるから、よろしく頼む」

 上司から突然このようなお願いをされたら、部下は驚くとともに緊張してしまうかもしれません。部下にとって、プレゼンをすることが初めてであれば、なおさらでしょう。

 このような不安が出てくる理由のひとつには、「うまく話せなかったら恥をかく」「プレゼンがうまくいかなければ社運に関わる」など、失敗を必要以上に心配してしまうことがあげられます。そこで今回は、『自衛隊メンタル教官が教えてきた 自信がある人に変わるたった1つの方法』の著者である下園壮太氏の考え方を紹介し、自信をなくしている部下に自信をつけさせる方法について解説したいと思います。

日本人ならではの思考グセとは

 日本人は、仕事に限らずさまざまな場面で自信を持つことができない傾向があります。最近はSNSなどを通じて、友人が出張で全国を飛び回っていたり、華やかなランチ会に参加したりと、充実した生活を送っている様子が見られるようになりました。その様子を見て「友人に比べて自分は…」と思い込みがちなのが、日本人にありがちな思考グセではないでしょうか。

 日本人の思考グセは、若いころからあるようです。日本青少年研究所が2002年5月に発表した、日本・アメリカ・中国の高校生を対象にした「高校生の未来意識に関する調査」内の「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」という問いで、よく当てはまる、まあ当てはまると答えた割合はアメリカ89.3%、中国96.4%だったのに対し、日本はわずか37.6%だったそうです。

 また、国立青少年教育振興機構が2015年8月に発行した「高校生の生活と意識に関する調査報告書―日本・米国・中国・韓国の比較―」によると、「自分はダメな人間だと思うことがある」という問いに対し、「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した割合は、アメリカ45.1%、中国56.4%、韓国35.2%に対し、日本は72.5%と他国を大きく上回っています。

 前者の調査が2002年に行われていますので、当時の高校生も30代となっていることを考えると、多くの日本人が若いころから自信を持てずにいることが浮かび上がります。その理由について、下園氏は日本人特有の思考グセに原因があると指摘します。

 日本人はもともと農耕民族でした。農作物をたくさん育てるためには、1人で取り組んでいると非効率なので、みんなで力を合わせることが必要です。そのため、日本人は仲間との信頼関係を非常に重んじてきました。

 下園氏によると、共同作業で周りに信頼されるかどうかのポイントは「大変かつ地道な作業をしっかりがんばったかどうか」であると述べています。そのため日本人は、たとえ体調が悪くても、「倒れるまでがんばらなければ周りから評価されない」という思い込みがあり、自分に対する評価がとても厳しくなってしまい、自信を持てなくなっているのです。

悪いところは1つだけという「サイコーの評価法」

 そんな背景を持つ日本人が自信をつけられる方法として、下園氏は著書の中で「サイコーの評価法」を提案しています。

 サイコーの評価方法とは、何かを評価しようとするときによかったところを3つ、悪かったところを1つ、今後の改善点(もしくは勉強になったところ)を1つあげるというものです。

 自信のない人はどうしても悪いところばかりに目がいきがちです。悪かいところが多くなれば、さらに自信を持つことが難しくなるでしょう。だから1つに絞るのです。

 1つあげたら、それをどう改善するかを具体的に考えます。農耕民族である日本人は毎年農作物を収穫できるかが不安だったので、毎年少しずつ田畑を改良し、収穫量を増やす努力をしてきました。その点で、不安を改善するという思考方法は日本人が得意とする分野です。

 もし具体的な改善策が思い浮かばない場合は、悪いところから勉強したことをあげることをすすめています。下園氏によると、悪かったことが「雨が降った」という場合は、「人は天候には勝てないことがわかった」といった学びをあげればよいとしています。単純なように見えますが、学びには改善と同じように人を成長させる効果が期待できるそうです。

 しかし、自信のない人にとってもっとも難しいのが、よかったところをあげることです。よかったところを探すには、小さな出来事にも目を向けるのがポイントです。たとえば、「エクセルの関数の使い方をひとつ覚えた」「営業先の近くで素敵なカフェを見つけた」など、何でもよいのでよかったと思うことをあげてみましょう。

 この振り返りを行えば、ポジティブにもネガティブにもなりすぎない、バランスのよい評価方法を身につけることができます。サイコーの評価法は、1日の総括として夜に行うのもよいですし、朝に前日の振り返りとして行うのでもかまいません。

誰でもできること「無意識目標」の最適化

 これらの方法でも自信が持てないときは、無意識目標の設定に問題があるのかもしれません。無意識目標とは、たとえば夕飯のおかずにあと一品ほしいという場面で、料理に慣れた人なら思い悩むことなく、さっと一品を作ることができるように、意識しなくても一定のレベルまでできることを指します。無意識目標が適切でないと、「誰でもできることができない」と感じて、ますます自信の低下につながってしまいます。

 そこで下園氏は「無意識目標を意識化してみる」ことが大切であるとしています。具体的には、当面の目標をできるだけ客観的・具体的にイメージし、目標達成のために努力が必要であれば、取り組む気持ちの有無も意識してみましょう。無意識目標と、自分の今の状態・能力・スキルを意識することになるので、自分に妥当な無意識目標を認識できるようになります。

 それには「適正な目標は必要性と可能性の2つの要素からチェックするとよい」と述べています。人は誰しも、無意識のうちに必要のないことにはできるだけエネルギーを使わないようにしているのだそうです。そのため、目標達成に向けてやる気を引き出すためには、本当にその目標に向けて努力するのが必要なのかどうかを自覚しなければなりません。

 また、あまり深く考えなくても課題を達成できると思える適切なレベルを設定することも重要です。下園氏によると、心理学的に人がもっともワクワク感を感じられるのが成功率5割の課題なのですが、苦手意識などの要素を考慮して、自分のスキルに応じて成功率の高低を柔軟に設定するほうが無意識目標にはよいと述べています。

 成功率を柔軟に設定する理由は、成功確率が高い課題を達成することを目標にしていると簡単すぎて達成感がなくなり、逆に成功確率が低い目標だと難しすぎてやる気を失うからです。たとえば料理が得意な人ならば、成功確率が低い目標として「フレンチをレストランで提供できるくらいのレベルにマスターする」を設定するとよいでしょう。一方、料理が苦手な人は成功確率が高い目標として「おいしい卵焼きを作れるようになる」を設定することが適切な無意識目標の設定になり、自分に自信が持てるようになるのです。

 これまでの人生で、まったく不安を感じたことのない人はいません。大半の人は何かしらの不安を抱えて生きているものですが、不安のあまり自信をなくしてしまうのはもったいないです。何事にも自信を持てない人は、上記のやり方を実践してみることで徐々に自己評価が高くなり、おのずと自信もついてくるでしょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年12月22日)のものです。

【参考書籍】
下園壮太『自衛隊メンタル教官が教えてきた 自信がある人に変わるたった1つの方法』朝日新聞出版

【関連記事】
http://www.fml.t.u-tokyo.ac.jp/Dame/dame1.htm
http://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/98/File/12.9.pdf

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あさき みえ

あさき みえ

法学部を卒業後、貿易事務、購買事務などの事務職を経て「法律系ライター」として独立。以来、ビジネス実務法務検定2級の資格や社労士・行政書士の受験で得た知識を活かして、さまざまな分野の法律系コンテンツ記事執筆や法律事務所のウェブコンテンツ制作などを手がける。経営系・人事労務系といったジャンルの執筆も得意。徹底的にリサーチを重ね、客観的データやエビデンスに基づいた執筆スタイルに定評がある。

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