2016.12.08 (Thu)
朝礼ネタ帳(第68回)
5時間労働で8時間労働よりも成果を出す企業がある
2014年、アメリカのサンディエゴで開催された「その年に最も急成長した企業」を選ぶコンテストにて、ある変わった企業が大賞を受賞しました。その企業の名は「Tower Paddle Boards」。立ったまま乗れるサーフボードの販売を行う、従業員がわずか9名(受賞当時)の小さな会社です。
同企業が大賞に選出された理由は、ユニークな働き方にありました。なんと社員の1日の労働時間を5時間(9時~13時)に短縮したのです。労働時間の大幅カットという大胆な働き方改革を行った結果、業績は下がるどころか以前よりも上がり、社員たちの仕事に対する意欲も高まりました。誤解のないように伝えておくと、この企業の従業員たちは特殊なスキルをもったエリート集団ではなく、ごく普通のサラリーマンたちです。
毎日残業をしたり、休日出勤までしていても、なかなか業績が上がらない企業がたくさんある中で、なぜ彼らは、労働時間が減ったにも関わらず業績を上げることができたのでしょうか。その秘密に迫ります。
業績を伸ばす鍵は、社員の「幸福感」
Tower Paddle Boardsが提唱した「1日5時間」という労働時間に対し、研究者たちはこんな見解を示しています。
「生産性の向上を左右する一因は、働き手の気分である」
「働き手の幸福度と生産性には明確な相関関係がある」
実際に、幸福を感じている人と、不満を抱えている人に同じ作業を同時に行わせた実験があります。その結果、幸せを感じている人の作業効率は平均12%向上し、不満を抱えている人の作業効率は平均10%下がったといいます。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉がありますが、これは仕事にも通じることのようです。良いパフォーマンスを発揮しようと思うのなら、まずは働き手自身が幸せであること、良い健康状態でいることがポイントなのです。
Tower Paddle Boardsの社員たちは、労働時間が減ったことで、プライベートが充実し、幸福度が増しました。その結果、仕事にかけられるエネルギーが増し、8時間分の仕事を、5時間でやり遂げるだけの集中力を得たのでしょう。
不満を抱えながら毎日長時間労働をしている社員と、幸せを感じながら毎日5時間集中して労働している社員。どちらが会社を伸ばす人物かは一目瞭然です。
8時間みっちり働き続けることは不可能
Tower Paddle BoardsのCEO、Stephan Aarstol氏は、「8時間の労働時間のうち、本当に仕事をしているのは2~3時間だけ」「2~3時間分の仕事をするために、8時間かけているのだけだ」と語っています。
かなり極端な主張にも受け取れますが、実はこの発言内容は理に適っています。実は、人間の身体はどんなに頑張っても90分以上は集中し続けることができないようにできているのです。
私たちの集中力には波があり、15分おきに「集中」と「飽き」を繰り返しています。
そして、この波は最大で90分しか持続しないといわれています。次の波を来させるためには、一旦休憩をして脳を休める必要があるため、1日8時間、みっちり働き続けることなど、現実的に不可能なのです。
脳を休ませず、無理やり集中をしようと頑張り続けると、心身ともに疲れてしまい、ストレスがかかります。ストレスがかかると幸福度が下がるため、仕事の効率が下がるという悪循環にはまります。
つまり、「Tower Paddle Boards」が提唱した1日5時間労働とは、ただ単に、社員を楽にすることを目的にしたものではなく、人間の幸福度と集中力を最大限に高めて、より良い結果を出すことを目的とした、戦略的な働き方改革だったのです。
幸福度と集中力を最大限に高める働き方とは?
最近は、日本でも働き方改革が叫ばれていますが、すぐに日本中の企業が1日5時間労働に切り替わることはないでしょう。そこで最後に一つ、今すぐに取り入れられるセルフ働き方改革法を紹介します。
先ほど解説した通り、人間の集中力は最大90分しか持続しません。ですから、一日中頑張ろうとせず、自分の中で、ここは絶対に集中するという仕事のゴールデンタイムを設定してしまうのです。
たとえば、「午前10時~11時半までの間に必ず提案書類を仕上げる」などでも良いでしょう。ゴールデンタイムとやるべき内容を設定したら、その業務は何がなんでもやり遂げるようにします。自分の目標を達成することで、人は幸福感を感じるため、達成するたびに仕事へのモチベーションが高まります。
そして、ゴールデンタイム以外の時間帯は、書類整理や入力業務など、自分の中で簡単と判断できるような作業を行うことで頭を休めましょう。
このように、8時間の中でON・OFFを切り替えることで、Tower Paddle Boards が1日5時間労働で発揮したような、幸福度と集中力を最大限に高めた働き方ができるはずです。
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