2024.12.27 (Fri)

ビジネスを成功に導く極意(第73回)

捨てればゴミ、回収すれば資源。「電子ごみ」の正しい捨て方

 使用済みのパソコン、スマホなどの「電子ごみ」が急増しています。電子ごみは不法に当期することで有害物質が流出する恐れがあります。どう回収すれば良いのでしょうか?

スマホやパソコンなどの「電子ごみ」が増加中

 我々の生活や仕事には、スマートフォンやノートパソコンといった電子機器が、今や欠かせない存在となっています。

 これらの電子機器は、短いスパンで新製品が登場し、日々高機能化が進んでいます。そのため、新機種に買い替えるサイクルも短くなりがちで、中には年に数台交換しているという人もいるかもしれません。買い替えのサイクルが短くなるということは、電子機器を廃棄する機会も増えることになります。

 スマホやノートパソコンのようなバッテリーを搭載している電化製品、冷蔵庫やエアコンなど電子回路を搭載している機器の廃棄物は、「電子ごみ」と呼ばれます。英語では「E-waste」や「WEEE(Waste Electrical and Electronic Equipmentの略)」と表記されます。

 この電子ごみは、近年、世界で急増しているようです。国連訓練調査研究所(UNITAR)の調査によると、2022年に発生した電子ごみの廃棄物は“過去最高”の6,200万トンに及んだといいます。これは2010年比で82%増となる数値で、2030年には2022年比で32%増の8,200万トンに達すると見込まれています。

 しかも、これらの電子ごみが適切に回収・リサイクルされたのは、年間の電子ごみ廃棄物量の約1/4以下となる22.3%程度にとどまっているといいます。

電子ごみのリサイクルを怠ると、利益が逃げて不利益が生まれる

 電子ごみは、2つの理由でリサイクルが欠かせません。

 理由の1つ目は、電子ごみの中には貴重な金属が含まれている点です。小型の電気電子機器の中には、金、銀、銅などの貴金属や、リチウム、コバルトなどのレアメタルが含まれています。このことから、電子ごみは「都市鉱山」と呼ばれることもあります。

 2つ目は、人体への悪影響です。電子ごみの中には、有害な添加物や水銀のような有害物質を含んでいる製品もあるため、安易に素手で分解したり、適切な処理をしないまま埋めて処理をした場合、環境や人体へ悪影響を及ぼす恐れがあります。

 つまり、電子ごみのリサイクルを怠ることは、貴金属やレアメタルを集める機会を失ううえ、人類の健康にも不利益をもたらすという、二重のデメリットがあるということになります。

 先に挙げたUNITARの調査によれば、電子ごみのリサイクルに対する取り組みの差が世界で広がることによって、2030年にはリサイクル率は20%まで割り込むことが予想されています。一方、各国が電子ごみのリサイクル率を60%に高めることで、人材へのリスクが抑えられるうえ、リサイクルによって380億ドル(約6兆円)の利益が得られるとしています。

なぜ無許可の回収業者に渡してはいけないのか?

 日本でも、電子ごみをリサイクルするためにさまざまな取り組みが行われています。

 スマートフォンについては、携帯電話キャリアが端末の回収を行っています。たとえばNTTドコモでは、使用していない携帯電話を全国のドコモショップで回収しています。東京都の一部のドコモショップでは、対象となる電子機器を持ち込んだ場合、dポイントを進呈する取り組みも期間限定で行っています

 パソコンについては、資源有効利用促進法に基づき、メーカーによる回収とリサイクルが義務づけられています。パソコンを廃棄する場合は、メーカーの問い合わせ窓口を調べ、回収を申込んだ後、窓口の案内に従い、廃棄する機器をメーカーに発送します。回収されたパソコンは、手作業で部品ごとに仕分けされ、さまざまな製品やモノに再利用されるといいます。

 冷蔵庫/エアコン/洗濯機/テレビの4品目を廃棄する場合は、自治体から一般廃棄物処理業の許可を受けた小売業者に回収を依頼します。その際、家電リサイクル法に基づき、所定のリサイクル料金と収集・運搬料金を業者に支払う必要があります。


家電リサイクル法におけるリサイクル料金の例


 経済産業省では、これらの機器を廃棄する際、「引き取り無料」を謳い、無許可で回収を実施している業者には引き渡さないことを呼びかけています。こうした業者は、回収品の不法投棄や、環境対策を怠った処理を行う恐れがあり、法を守った適正な処理の確認ができないとしています。廃家電には電池やプラスチックを含む場合もあるため、不適正な管理が発火・延焼につながる恐れがあると警告しています。

 使わなくなった電子機器は、リサイクルすれば次なる電子機器に生まれ変わり、我々が生きる助けとなる可能性を秘めていますが、そのまま捨ててしまえば、何にも生まれ変わらないどころか、人類の未来を蝕む“毒”にもなり得ます。たとえリサイクル料金が発生したとしても、回収のために手間がかかったとしても、正しく処理をすることが求められているといえるでしょう。

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