2023.04.28 (Fri)

ビジネスを成功に導く極意(第50回)

ビジネス拡大の可能性を秘めた「サステナブル・シーフード」とは

 乱獲などの影響により、世界の漁業資源は枯渇が懸念されています。そこで注目を集めているのが、「サステナブル・シーフード」というキーワード。一体、サステナブル・シーフードとはどういうものなのでしょうか。ここではその概要や、ビジネスに取り入れている企業や漁業関係者の導入事例を紹介します。

持続可能な水産ビジネスの構築に不可欠

 世界の漁業と養殖業を合わせた生産量は増加し続け、過去50年で2倍以上になっています。水産庁のデータによると、世界のひとり一年当たりの食用魚介類の消費量も過去50年で約2倍という伸びを示しています。世界的に水産物の需要が高まる一方、乱獲や違法・無報告・無規制漁業、気候変動などの影響で、水産資源は減少傾向にあります。実際、日本の漁業・養殖業の生産量は、1984年の1,282万トンをピークに減少し、2020年には423万トンにまで落ち込んでいます。

 このような背景もあり、SDGsに「海の豊かさを守ろう」という目標が掲げられるなど、持続可能な水産ビジネスの構築が不可欠となっています。そこで注目されているのが、サステナブル・シーフードです。これは、持続可能な漁業・水産業で獲られた、もしくは適切に管理された養殖業で育てられたシーフードを示します。

2つの国際的認証機関が認証を行う

 サステナブル・シーフードには国際的な認証制度があります。認証を行っているのは、MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)とASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)というふたつの国際的非営利団体です。MSC認証は天然の水産物、ASC認証は養殖された水産物に対する認証です。日本ではMSCに1,100品以上が承認・登録されているほか、ASCでは82養殖場が認証を取得しています。

 MSC認証の事例では、流通大手のイオンが、認証を受けたたらこ、鮭、明太子の販売を2006年に開始しました。現在は、カキやイカのフライ、スケソウダラの切り身、甘えびなど取り扱い商品が増えています。

 日本生活共同組合連合会は、2007年からMSC認証商品の販売を開始。その後、取り扱い魚種と品数を増やし、2017年には、MSC認証商品の供給高が前年比440%となる41億円を記録しました。

 日本で初めてASCの漁業認証を取得したのは2016年、宮城県漁業協同組合志津川支所の戸倉事務所が手掛けるカキ養殖でした。それまで過密だったカキ筏の数を減らすなど養殖環境を見直すことで、飼育期間を短縮。品質も向上し、より高い値段で売れるようになりました。ほかにも労働時間の短縮や、現場に若い世代が増えるなどの効果があったそうです。

社員食堂の食材に導入する企業も

 ほかにも、企業の市民活動の一環としてサステナブル・シーフードを取り入れる動きもあります。パナソニックは、長年、環境保全団体のWWFジャパンと協働して、海の豊かさを守る活動を行ってきましたが、2018年に社員食堂にサステナブル・シーフードを採用。現在、導入拠点数は50以上になっています。なお同年には日立製作所も社員食堂にサステナブル・シーフードを採用しています。

 さらに、企業間でサステナブル・シーフードの調達を容易にするため、日本初となるサステナブル・シーフード専門BtoBサイト「Sustainable Seafood Catalog」が2021年12月に開設されました。サステナブル・シーフードを購入しようと思っても取扱業者が少なく、ニーズに合った商品を見つけるのが難しいという問題を解消するのが目的です。

 このように、企業がサステナブル・シーフードを導入する動きは加速しています。理由としては、SDGsやサステナブルな世界の実現への貢献などはもちろん、企業のブランド力向上という点も、企業として見逃せないメリットだからです。小売業であれば消費者のニーズに応えることになります。さらに、サステナブル・シーフードを扱うことで新たなネットワークが生まれてビジネスが拡大する可能性も考えられます。水産ビジネスに携わる企業であれば、採用の検討を行う価値は十分にあるといえるでしょう。

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