2020.06.26 (Fri)

ビジネスを成功に導く極意(第26回)

日本全国で初めて迎える“マスク × 夏 × 作業現場”

~改めて考える熱中症対策・安全管理の重要性とは~

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために、もはや日常の風景として当たり前になってきたマスクの着用。これまでもインフルエンザや風邪の流行に伴いマスクを着用する機会はありましたが、そのほとんどが冬の季節であったため、多くの方々が初めて日常的にマスクを着用する夏を迎えるのではないでしょうか。

 そのような未知の生活を余儀なくされる今年の夏は、夏用の冷感マスクや高機能素材を使用したものなどを活用しながら例年以上に熱中症予防に気をつける必要がありそうです。

 厚生労働省からも、夏の対応策として屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、熱中症のリスクを考慮しマスクをはずす等、感染症予防を行いながら熱中症にならないための注意が必要であることが周知されています(※1)。

 一方で、厚生労働省の統計調査によると、過去5年間の業種別の熱中症による死傷者数の第1位は建設業、第2位は製造業、第3位は運送業となっています(図1)。

※1 厚生労働省「「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント」参照
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html)

 今回のコラムでは、熱中症リスクと共により一層重要性が高まる“作業現場における安全管理”をどのように実現していけばいいのか、という点ついて建設業・製造業・運送業それぞれの観点から紹介していきます。

(図1)厚生労働省「2019年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値) 」より引用
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11520.html)

【建設業】建設現場における現場監督の「安全管理」の重要性

 そもそも一般的に建設現場において現場監督が行わなければならない施工管理の業務を大きく分類すると、「品質管理」「原価管理」「工程管理」「安全管理」の4つとなります。もちろん全ての管理業務を適切に実施することが求められますが、その中でも特に重要と言われているのが「安全管理」です。では、その「安全管理」とは具体的にはどのような業務なのでしょうか。

 建設現場にはさまざまな危険が潜んでいます。現場では全員がヘルメットを着用していて視野も狭く、さまざまな機材道具を抱えて移動しているため、何気ない動きひとつをとっても怪我や事故のリスクと常に隣り合わせです。そのような状況下において現場作業従事者が日々安全に作業ができるようマネジメントすることが、現場監督には求められているのです。ひとりひとりの命や健康を守ることは当然ですが、予定通りに工期を終えるためにも欠かせないのが「安全管理」です。そのための具体的な対策として、朝礼での安全唱和や作業時の指差呼称、危険を伴う作業時のルール策定・徹底等を行っています。しかし残念ながらこういった取り組みをおこなっていても、建設現場での熱中症や不慮の事故は起きてしまうのです。それはなぜでしょうか。

建設現場で「安全管理」の実現が簡単ではない理由

 それは、「さまざまな業者や作業従事者が一度きりの現場でさまざまな作業をする」という建設業界ならではの特徴に起因しています。作業内容が日々変化することや、受注生産であること、日替わりで新規作業従事者を受け入れるために事前に定めたルールが順守・徹底されにくい等が具体的な理由として挙げられます。更に、冒頭に記した熱中症の例のとおり、作業自体だけでなくひとりひとりの健康状態に影響を受ける事故や怪我も起こりえます。誰だって体調不良でいつもの自分とは違う際には注意力が散漫になったり当たり前にできていたことができなかったりするものです。建設現場が広ければ、現場監督がひとりひとりの作業従事者の動きや状態をタイムリーに把握することがいかに困難なことか、想像に難くありません。

【製造業・運送業】屋外だけじゃない、屋内作業の「安全管理」

 ここからは製造業・運送業における熱中症リスクについてみていきましょう。

 熱中症は屋外で発症するものだとイメージされている方が多いため、屋内での発症リスクは軽視されがちです。工場や倉庫など、屋内であっても高温多湿や風がない場所で、長時間作業すると熱中症を発症するリスクが高くなります。また、広い工場・倉庫内で一人作業を実施中の作業従事者が熱中症を発症し、万が一、発見・対処が遅れると、命に関わるケースもあるのが熱中症の恐ろしいところです。熱中症以外にも、製造業では墜落や転倒、運送業では荷役中の事故など、作業中のさまざまなリスクから従業員を守る対策が必要とされています。

作業現場の「安全管理」を実現するために求められる対策とは

 今回のコラムでは、熱中症のリスクが高まる昨今における作業現場の安全管理について、建設業・製造業・運送業の観点から紹介させていただきました。

 改めて基本ルールの順守・徹底や作業従事者の意識を変えていく必要があるのはもちろんですが、他に実施できることはないのでしょうか。ひとつ重要なことは、作業従事者ひとりひとりが健康で正常な状態でいるかを現場責任者が把握し、異常が見られる場合には休憩させる等の対応を逐次行うことです。全員がいつもと同じ健康状態でルールを守って作業を実施することができれば、防げる事故もあるでしょう。

「全員の健康状態を確認することなんてできない」
「朝礼時に体温の報告を受けているが、作業を開始してしまえばタイムリーに状態を把握することは容易ではない」
「そんなことをしていたらそれ以外の業務に影響する」

 みなさまからさまざまなご意見が聞こえてきそうです。具体的に求められるのは、これまで述べてきたような安全管理を効率的に実現すること、ではないでしょうか。

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