2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2024.07.11 (Thu)

ビジネスを成功に導く極意(第65回)

なぜメタバースが「不登校」の支援に使われているのか

 バーチャルな3D空間「メタバース」は、これまでアートやファッションといったエンターテインメント業界で多数の活用例があります。しかし最近では、教育現場に導入されるケースもあり、離れた場所にいる生徒同士がディスカッションをしたり、不登校支援を目的にメタバースで学校を運用する動きもあります。なぜ、教育の現場でメタバースが利用されているのでしょうか?

メタバース内に「学校」が誕生している

 「メタバース」といえば、インターネット上に生成された3Dの仮想空間のことです。人同士の対面が難しかったコロナ禍におけるイベントの舞台として利用される機会が多く見られましたが、最近でもゲームやファッションブランドのPR活動など、さまざまなイベントが開催されています。

 メタバースの活用の幅は広く、たとえば教育分野に導入されているケースも見られます。すでにいくつかの学校が開設され、メタバース内で授業を受けることが可能です。

 こうしたメタバースの学校では、メタバース内に開設された“校舎”に、生徒がアバターを通じて“登校”、同じくアバターの講師が登壇し、授業を行うというものです。実在する校舎に移動するわけではないため、登校のハードルが低い一方で、講師や生徒とコミュニケーションが取れるという点は、実在する学校と変わりません。

メタバースは増加する「不登校」問題の解決につながるか

 このようなメタバースのメリットを活かし、最近では「不登校」の支援を目的としたメタバースの活用もスタートしています。

 日本では現在、国内の児童・生徒の不登校数が急増しています。文部科学省が実施した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和4年度)」によると、日本の小・中学校における不登校児童・生徒の数は“過去最多”となる299,048人で、過去5年間の傾向としても、その数と割合は増加しているといいます。高校年代においても、60,575人もの不登校の生徒が存在しているといます。

 不登校のデメリットには、学校へ行かないことによる勉強の遅れや、コミュニケーション機会の損失があります。勉学の遅れがその後の進路に悪影響を与えることはもちろん、他者と交流しないことで、協調性や多様な価値観が得られない可能性もあります。

 その解決方法として、学校に登校しなくても授業を受けたり生徒同士で交流ができるメタバースが期待されています。物理的に登校するわけではないため、登校のハードルは低く、気軽に通うことが可能です。

 実際に文部科学省では、次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進事業の一環として、2022年から2年間、富士ソフト株式会社が開発した教育向けのメタバース「FAMcampus」を用いて、小中学校の不登校児童・生徒を対象にした“メタバース教育”を実施しました。

 その結果、引きこもり状態にあった生徒が、メタバース内で在宅でも同年代の生徒と交流する中で徐々に元気を取り戻し、子どもの自発性が高まっていったといいます。同社によると、このメタバース教育を受けた生徒の保護者の81%が「評価できる」と回答したといいます。

メタバース内の高校に通うことで、高卒資格が得られる

 これ以外にも、メタバース教育を不登校支援に活かす取り組みが始まっています。

 埼玉県さいたま市は、2023年11月からNTT東日本のコーディネートにより、NTTスマートコネクトが提供する教育向けのメタバースサービス「3D教育メタバース」による、不登校児童・生徒向けの学校の設置・運営の活用実証を開始しました。

 メタバースの運営は、市の不登校等児童生徒支援センター「Growth」が運営し、メタバース内には教室だけではなく、集会所、小ルーム(面談室)、アクティブラーニングルームなどを整備。授業や全体集会、グループワークや面談は、基本的にはメタバース内で行いますが、オフ会や校外学習など、対面でのイベントも開催されます。

 認定NPO法人のカタリバでは、不登校支援プログラムとして、メタバース内に子どもたちの居場所となるメタバース「room-k」を構築し、運営しています。

 room-kでは、臨床心理士や社会福祉士などのバックグラウンドを持つコーディネーターが、room-kの利用を希望する子どもや保護者と面談をし、一人ひとりに合った学習計画を作成。メタバースでの授業だけではなく、週に1回、学習の伴走者であるメンターが子どもと面談を重ねながら関係性をつくり、学習の機会を設けます。

 通信制の高校である「勇志国際高等学校」では、アバターで学校に通う「メタバース生」の入学生・転入生を募集しています。同校に入学すると、学校からは最新VR機器が配布され、VR対応型パソコンが特別価格で提供されます。VRを駆使したホームルームやeスポーツイベントなど、デジタル空間ならではの活動を取り入れることで、生徒同士のコミュニケーション機会の創出を狙っています。

 同校は広域通信制高等学校として、文部科学省から認可を受けた単位制高校のため、メタバースでの授業のほか、スクーリング(対面の座学など、実際の学校で授業を受けること)などの必須科目をクリアすることで、高校の卒業資格が得られます。

バーチャルの学校が、現実の教育問題を解決する可能性も

 こうしたメタバース教育を滞りなく受講するためには、当然ながら自宅のインターネット環境や端末機器の整備が必要になります。たとえばスマートフォンで受講した場合、速度制限によってメタバース内の映像や音声がスムーズに再生できなくなる恐れも十分に考えられます。

 加えて、すべての都道府県でメタバース教育が行われているわけではないため、居住地によってはカリキュラムが完了できない可能性もあります。もちろんメタバース教育は所在地に関わらず受けられるものの、スクーリングなど実際の校舎で学ぶプログラムが含まれている場合は、結局は実在する施設に足を運ぶ必要があります。もし校舎が遠方地にある場合、子どもがひとりで通うのは相当な苦労を伴うことになるでしょう。

 とはいえ、メタバース教育のさまざまな課題がクリアになり、さらなる教育分野への導入が進めば、子どもたちにとって学びの選択肢が広がり、不登校によって社会から取り残される多くの子どもを救うことが期待できます。現実世界では解決ができなかった問題も、メタバースを経由することで解決できるかもしれません。

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