2016.10.25 (Tue)

ビジネスを成功に導く極意(第7回)

非正規→正規雇用で助成金、経営に役立つ制度7選

posted by 中村 俊之

 アベノミクス第三の矢・成長戦略の一環として、政府は労働移動、中高年の雇用、教育関連を重視した助成金制度を設けています。助成金はいってみれば、「返済不要の貸付金」のようなもの。上手に活用することで、ビジネスを上手に回すことができます。

 本記事では、特に人事面で企業のビジネスに貢献する助成金をいくつか紹介します。実際の受給には細かな条件もありますので、申請する際には必ずハローワーク等で確認してください。

一時的な休業・出向をサポート「雇用調整助成金」

 業績が悪化した際、社員の人員削減を検討する企業も多いでしょうが、それを避けるために、社員の一時的な休業・教育訓練・出向を実施するケースもあります。そのときに発生する費用の一部を負担してくれるのが、この「雇用調整助成金」です。

 受給の対象となるのは、最近3カ月間の月平均で、売上高・生産量など事業活動を示す指標が前年同期に比べて10%以上減少し、かつ雇用保険加入者や派遣労働者が一定以上増えていない企業です。支給金額は以下のように設定されています。

 (a)休業……支払った休業手当の3分の2(大企業は2分の1)
 (b)教育訓練……職業に関連する3時間以上の教育訓練を条件に、支払った訓練費用の3分の2(大企業は2分の1)に1,200円/人を加えた額
 (c)出向……3カ月以上1年以内の出向で、出向元が賃金の一部を負担したときにその負担額の3分の2(大企業は2分の1)

 受給できる期間は、教育・休業で1年間に100日、3年であれば最大150日、出向で1年です。

社員の転職支援で受給できる「再就職支援助成金」

 「再就職支援助成金」とは、リストラした社員の再就職支援を、民間職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇を与えたりすると、その社員ひとりにつき企業側が受けられる助成金です。ハローワークに再就職支援計画書を認可してもらうなど、いくつかの条件を満たす必要があります。支給額は以下のとおりです。

 (a)再就職委託時……10万円
 (b)委託費用……6カ月以内の再就職が決まった場合に費用の3分の2(大企業は2分の1)、45歳以上は9カ月以内の再就職が決まった場合に費用の5分の4(大企業は3分の2)。訓練やグループワークの委託による加算がある
 (c)求職活動中の休暇……90日分を限度に、1日あたり7,000円(大企業は4,000円)、休暇中の賃金の支払いや、期間内の再就職など条件を満たす必要がある

 「リストラを助長する」という批判もありますが、本来は労働力の移動をスムーズにするのが目的です。成長産業への労働移動や、会社と労働者のミスマッチを減らすための制度なのです。

新人さんいらっしゃい!「トライアル雇用奨励金」

 職業経験や技能、知識が不足しているなどの理由で、「安定的な就職が困難な求職者」(後述)を試験的に雇用する際に受けられる助成金です。本採用を目指すための雇用であり、試用期間は一定期間であることといった条件があります。支給金額はひとりあたり月4万円、母子家庭の母、父子家庭の父の場合は月5万円です。

 ここでいう「安定的な就職が困難な休職者」とは、以下のような状態にある人のことを指します。

 ・就労経験がない職業に就くことを希望している
 ・卒業後3年以内で安定した職業に就いていない
 ・2年以内に2回以上離職・転職をしている
 ・離職している期間が1年を超えている
 ・妊娠、出産、育児で離職し、安定した職業に就いていない期間が1年超
 ・生活保護受給者、母子家庭の母など、就職支援にあたって特別の配慮がいる求職者

 ほかの助成金に比べると条件が緩いため、比較的しやすい助成金です。企業側だけではなく、求職者は新しい業界に挑戦しやすくなるという、双方にメリットがある助成金です。。

「高年齢者雇用開発特別奨励金」で高齢化社会に対応する

 65歳以上の高齢者を採用すると受けられる助成金が「高年齢者雇用開発特別奨励金」です。ハローワーク、または民間の職業紹介事業者などからの紹介で、1年以上継続して雇用するなどの条件を満たすことで支給が受けられます。助成期間は1年で、トータルの助成金額は以下になります。

 ・短時間労働者…ひとりあたり40万円(大企業は30万円)
 ・短時間労働者以外…ひとりあたり60万円(大企業は50万円)

 高齢者を雇用する際の助成金はこのほかにもいくつかあります。たとえば「特定就職困難者雇用開発助成金」は、60~64歳の高齢者雇用に、「高年齢者雇用安定助成金」は、高齢者向け作業環境の整備や高年齢者のための能力評価・賃金体系等制度の導入などに関係するものです。高齢化社会に適した助成金といえるでしょう。

企業による従業員の子育て支援をサポート「両立支援等助成金」

 子育て支援を目的とする助成金です。事業所内で保育施設を設置するときや、育休中の代替要員を確保する際に支援が受けられます。かなり細かな条件が設定されているため、導入を検討するのであれば、ハローワークや社労士などの専門家に確認したほうがいいでしょう。ここでは参考として、一部の支給概要を紹介します。

 まず、事業所内に保育施設を新しく設置・運用する場合、設置費用の3分の2(大企業は3分の1)の支援を受けることが可能です。支給の上限額は2300万円(大企業は上限1,500万円)です。

 育休中の代替要員については、ひとりあたり30万円の支援があります。従業員満足、ひいてはCSRをアピールしたいと考えているのであれば、大いに検討の価値があるといえるでしょう。

非正規→正規雇用で助成金「キャリアアップ助成金」

 近年注目が集まっている、非正規雇用者のキャリアアップ・待遇改善を促す助成金です。具体的には、有期契約者などの正規雇用への転換、または派遣労働者の直接雇用化を行うと受けられます。キャリアアップの対象となる労働者は、有期契約者、無期雇用者、派遣労働者などです

 支給金額は細かく設定されており、有期から正規への転換で、ひとりあたり50万円(大企業は40万円)が支給されます。1年度1事業所15人が上限で、金額の変更も検討されています。

 ここで紹介した正規雇用転換コースのほかにも、「人材育成」「処遇改善」「健康管理」「多様な正社員(短時間正社員)」「短時間労働者の週所定労働時間延長」といった5つのコースがあります。非正規雇用労働者の正社員転換に対する、政府の本気度の高さがうかがえます。

支給のハードルはやや高め「障がい者トライアル雇用奨励金」

 就職が困難な障がい者を一定期間雇用し、適正や業務遂行可能性を見極めるための助成金です。期間は最長で3カ月、支給額はひとりあたり月額4万円。就労日数が少ない場合は減額されます。

 支給を受けるためには、ハローワーク、または民間の職業紹介事業者などの紹介が必要といった、細かな条件も設定されています。たとえば継続雇用を考えている場合や、過去3年間に雇用予定の事業所で職場適応訓練を受けたことがある場合は、支給対象からはずれます。利用にあたっては専門家の指導を受けたほうがいいでしょう。

 以上7つの助成金を紹介しましたが、基本的な申請手続きは厚生労働省のウェブページから必要な書類をダウンロードするところから始まります。ただし煩雑な手続きが必要なので、身近な専門家の知恵を借りることをおすすめします。細かな条件や申請方法は変更されている場合もありますので、ご注意ください。

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中村 俊之

中村 俊之(中村社会保険労務パートナーズ
【記事監修】

特定社会保険労務士、中村社会保険労務パートナーズ代表。1954年、東京都生まれ。2005年、社会保険労務士登録、同年に「中村社会保険労務パートナーズ」(文京区本郷)設立、代表として現在にいたる。30年以上にわたり人事・労務一筋に携わり、人事労務相談・研修講師・人事制度設計・書籍の執筆監修等を行っている。

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