企業が業務効率や生産性の改善を検討する際、「BPM」(ビジネスプロセス・マネジメント)という手法が採用されることがあります。BPMとは、ICTによって業務の流れ(プロセス)を分析後、数値などのデータから効率的な改善方法を編み出し、その後もプロセスを分析して継続的に改善を行っていくという手法です。
しかしBPMを導入したものの、成果をあげられていない企業もあるそうです。その原因のほとんどは、経営者と従業員の間で、BPMを行う目的や理由などのコンセンサスが取れていないからといわれています。ここでは、BPMを成功させるために必要なことを解説します。
なぜBPMが注目されているのか
業務改善の手法は、BPM以前からさまざまなものが存在してきました。その中でBPMが注目を集めたのは、ICTを活用した分析に加え、継続的に改善を行う仕組みを持っていることが挙げられます。
分析・改善の手順としては、まず業務を生産、営業、管理などのプロセスに細分化し、個々のデータを収集。たとえば受注・発注などの数値を収集し、それらが時間で変動する様子を分析し、現在のプロセスにおける無駄や停滞などを解消する改善策を設計して実施します。
改善後も各プロセスの情報収集のモニタリングを継続して、再検証などのシミュレーションを行います。そして場合によっては再改善を施すというサイクルを構築するまでがBPMの手法となっています。情報収集を続ける目的は、業務プロセスの最善化だけでなく、モニタリングとシミュレーションでビジネスシーンの変化を察知し、自社のビジネスモデルの最適化も図れる組織力を身につけることです。
このようなBPMのシステムを構築する上で、重要なことがあります。それは、BPMの目標設定です。目標を明確にしないままだと、どのような業務プロセスが適正かという判断はおろか、収集すべき情報を選定する段階から迷走してしまう可能性があります。これでは、BPMを成功させることはできません。
BPMを成功させるための「4つ」の条件
BPMは、今まで把握されていなかった企業や部門の業務を調査する仕事からはじめます。しかし目標が曖昧では、調査している情報が本当に必要なものなのかという疑念が湧きます。
BPMの普及と実践を促進する一般社団法人日本ビジネスプロセス・マネジメント協会が、「BPMを成功させた要因」について企業にアンケート調査「IT活用による業務改革実態調査 報告」をしたところ、59.1%が「BPMを推進する部門(チーム)がある」、40.7%が「推進部門が、事前に現場教育を実施し、理解を得るようにした」、37.0%が「情報システム部門の推進要員に、十分な教育をした」、さらに33.3%が「トップがよく理解し、支援してくれた」と回答しています。BPM推進チームを組織した場合は、現場との目標共有が大切な仕事となります。同時に、トップである経営者の理解と支援も重要な条件です。
BPMが社内から理解されない理由
前述の調査では、「BPMの取り組み時の苦労」というアンケートも行なっています。69.2%の企業が「現場の協力を得ること」、53.8%が「トップの理解と支援をもらうこと」と回答しています。本来組織全体で取り組むべきBPMであるにも関わらず、推進チームや担当者の半数以上が、現場とトップの両方からの理解と支援を受けるのに苦労しているのです。
理解と支援を得るには、担当者はBPMの目標と経営目標を紐づけて、業務改善によって期待される利益や、組織力の強化などについて説明を行うことが必要不可欠といえるでしょう。
経営者はBPMを支援していないのか?
さらに前述の調査では、経営者のBPMに対する認知率は26.1%であり、「聞いたことはある」「まったく知らない」という理解していない層が73.8%もあったそうです。
こうしたデータから、多くの経営者はBPMについて「漠然と理解している」程度ということが推測されます。その状態で従業員に理解と支援を促しても、表面的なものになりがちです。経営者は経営目標と紐付けた動機を従業員へ示さないと、推進チームは孤立してしまうでしょう。
ICTを活用してBPMを成功させる
BPMを成功させる大前提の1つが、経営者の支援と理解であることが分かりました。BPMを採用することで、現場は従来の業務プロセスやシステムの変更といった大作業が発生するかもしれません。また、いまの経営状況が悪化していなければ、経営者もBPMに大きな魅力を感じないでしょう。
繰り返しになりますが、BPMの導入を提唱する場合は、目標を明確に設定し、周知することがなにより重要です。そしてBPMによって業務改善が実現できることを経営者に伝え、コンセンサスを得てから実行に移ることが成功への第一歩です。
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