2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2021.09.28 (Tue)

ビジネスを成功に導く極意(第47回)

コロナ禍でも、実店舗で売上をUPする方法がある

  コロナ禍による実店舗の売上低下に、企業はどう対処すればよいのか。パロニムの井上卓郎氏は、ECにライブ体験を掛け合わせた「ライブコマース」が売上アップのカギになると説きます。

<目次>
コロナ禍でも実店舗の売上をアップする方法
45分のライブ配信で、店舗売上1日分を稼ぐ
ライブコマースで結果を出すためには
配信側と視聴者との間に「双方向性」が築けるか
5Gでライブコマースはさらに進化する

コロナ禍でも実店舗の売上をアップする方法

 新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの商業施設が営業を見合わせたり、営業時間の短縮を余儀なくされたりしています。実店舗での販売に大きく依存しているメーカーや小売業は、苦戦を強いられているケースも多いことでしょう。

 こうした実店舗での売上不振を打開する新たな販売手法として、「ライブコマース」があります。ライブコマースとは、従来のEC(電子商取引)にライブ配信動画を組み合わせ、視聴者(消費者)が配信者(販売者)とコミュニケーションを取りながら買い物できるようにしたものです。

 たとえばパロニム株式会社の「Tig LIVE」というライブコマースのサービスでは、ライブストリーミング映像内に商品情報をリアルタイムで付加できる特徴を備えています。同社取締役副社長の井上卓郎氏によれば、多くの企業が、この機能を活用しているといいます。

パロニム株式会社
取締役 副社長
井上卓郎 氏

 「従来のECは基本的に、売り手から消費者へ一方的に情報を提供するものでした。これに対し、双方向のコミュニケーションとライブ体験ができるのがライブコマースの特徴です。たとえば視聴者が商品に関する疑問点や紹介してほしい商品をチャットで入力すると、販売スタッフはその内容にリアルタイムで応答できます。これにより、視聴者に『温度感』を伝えられるうえ、店舗と同じように納得したうえで買い物できる『安心感』も提供できます。ライブコマースは、企業にとっての新たな収益手段といえるでしょう」(井上氏)

45分のライブ配信で、店舗売上1日分を稼ぐ

 ライブコマースはどのような業種で採用されているのでしょうか。井上氏は1つの例として、ペットショップにおける活用例を挙げます。

 「あるペットショップでは、『お悩み相談会』と題したライブコマースをTig LIVEで配信しています。たとえば、顧客から『トイレのしつけで困っています』という相談を受けた場合、プロのトレーナーがしつけの方法と合わせてペットシーツを紹介します。もし視聴者がその商品を気に入ったら、画面に表示される商品アイコンをタップして、ショッピングカートに入れることができます。さらに、同時にペットショップ内で開催される「しつけ教室」へのアイコンも表示させ、視聴中にそのまま、予約を受け付けられる導線も設計しました。コメント欄は視聴者の投稿で盛り上がっていて、飼い主同士のコミュニケーションの場にもなっています。ライブ中の自然な会話の流れから、商品や教室の詳細ページへと誘導させることができるため、ユーザーにとっても押し売り感のないサービスが好評です」(井上氏)

実際にTig LIVEを活用している様子
 

 企業によっては、コロナ禍による実店舗での収益減をライブコマースが補うどころか、実店舗の売上を軽く超えてしまったという例もあります。あるシューズメーカーでは、わずか45分間のライブ配信で、丸1日かけて店舗で販売するのと同等の売上を達成しました。

 さらに、店舗送客につなげる効果も期待できるといいます。

 「Tig LIVEを利用している商業施設様は、視聴者がライブ配信を見て興味を持ったら、すぐに試着予約ページへと誘導できるようにしている例もあります」(井上氏)

 意外な業種では、観光業での利用も増えているようです。

 「コロナ禍で観光客が減少している自治体や商工会が、その土地の良さとともに特産品を紹介することで、ECでの売上確保と、アフターコロナを見越した誘致活動を行っています。百貨店で物産展が開催できない代替策としても活用されています」(井上氏)

自治体によるTig LIVE活用の様子

ライブコマースで結果を出すためには

 このように、ライブコマースは多くの企業で売上アップにつながっていますが、実際に始める場合、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。井上氏は、“まず目的を明確に設定すべき”と主張します。

 「ECの売上を上げたいのか、店舗に誘導したいのか、それともファンを作りたいのか、目的によってライブ内容の企画は変わります。利用するサービスも変わります」

 井上氏はその一方で、シンプルにスタートしてみることもまた重要と指摘します。

 「とにかく実行してみることです。いろいろと考えすぎたせいで配信に踏み切れない企業は少なくありません。やってみてわかることはたくさんあります。失敗を失敗と思わずに、楽しみながら始めるべきです。顧客はライブコマースを、テレビの生放送と同じ感覚で見ているので、たとえ配信中にハプニングが起きても、それ自体がエンタメになるのがライブ配信のいいところです」(井上氏)

 そしてもう1つ、継続することも大切だといいます。

 「結果が出なかったからといって、1回で終わらせないことです。継続していると次第にファンができ、結果として売上も上がってくるものです。そのことを最初から織り込んで始めるべきです」

 井上氏は、あるレディース向けアパレルブランドの事例を取り上げました。毎週金曜日に定期配信していたこのブランドは、継続的に配信を続けることでファンがつくようになり、今では1回のライブで数百万円を売り上げるまでに成長しました。

配信側と視聴者との間に「双方向性」が築けるか

 ライブコマースを成功させるには、配信サービスの選定も重要です。サービスによっては、ライブコマースの特徴である「双方向性」を活かせないものもあるといいます。

 「視聴者からその場で寄せられる、さまざまな商品紹介のリクエストに応えられるのがライブコマースの特徴ですが、場合によっては、紹介する商品を企業側であらかじめ決めているケースがほとんどです。しかしこの場合、その商品が品切れとなってしまうと、視聴者からのリクエストに応えられず、商品を売るチャンスを逃してしまうことになります。ライブコマースの効果を高めるためには、配信者と視聴者がライブ配信を通じて柔軟かつ双方向にコミュニケーションできる仕組みが重要なのです」(井上氏)

 Tig LIVEでは、あらかじめすべての商品データを事前に管理画面へ登録しておきます。紹介してほしい商品のリクエストをチャットで受けたら、該当する商品のバーコードを読み取るだけで、ライブ動画上にその商品が出てくる仕組みです。そのため、顧客のニーズや話の展開に合わせて柔軟に商品を紹介できるようになっている、と井上氏はアピールします。

 ライブコマースは、動画をSNSに組み込んで配信することも可能ですが、この場合、配信プラットフォームとして利用するSNSの選定も重要です。SNSの影響力はプラットフォームごとに異なるうえ、ライブコマースサービスとSNSとの相性もあります。たとえばTig LIVEの場合は、LINE配信でのエンゲージメントが非常に高いといいます。

 「LINEでブランドの公式アカウントを友だち登録しているユーザーは、能動的にアクションを起こしやすく、ロイヤルティが高いと分析しています。他のSNSで配信した場合と比べても、購入者数が多く、購入単価も最大で5倍程度高くなることもあります」(井上氏)

5Gでライブコマースはさらに進化する

 井上氏は、たとえコロナ禍が終息したとしても、ライブコマースは一定の割合で利用が続くと見込んでいます。

 「アナログな手段しか提供できていなかった業界は、コロナ禍で強制的にデジタルを取り入れることとなりました。中には、1時間弱の動画配信で1日の店舗売上に匹敵するような効果が出ているケースもある現状を踏まえると、アナログだけに戻すことは考えにくいでしょう。“実際にモノを見て買いたい”という層と、“面倒だから動画を見てネットで買いたい”という層の両方のニーズがありますし、商品によっても顧客のアクションは異なってきます。このような特性からも、ライブコマースは残っていくと思われます」(井上氏)

 そして井上氏は、通信インフラの進化がライブコマースの進展に寄与すると期待を寄せています。

 「特にハイブランド企業は、ライブコマースの『画質』を気にします。今後5Gがもっと普及して高画質化が進み、端末の同時接続数も増えることで、配信する企業と消費者の双方が快適になり、よりストレスのない買い物体験ができるようになります。素材の質感も手に取るようにわかり、ライブコマースでの購買にもつながりやすくなります。ライブコマースは、技術の進展とともに、まだまだ進化していくでしょう」(井上氏)

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