2024.10.08 (Tue)
ビジネスを成功に導く極意(第71回)
中古なのに新品!?エコな商品「リファービッシュ」とは
新品でも中古品でもない、「リファービッシュ品」という新たな販売スタイルが誕生しています。リファービッシュ品は、中古品とは何がどう違うのでしょうか?
中古市場は現在も成長中
一度使用したものをゴミとして捨てず、何度も繰り返し使う「リユース」、いわゆる「中古市場」が伸びています。
環境省が2023年に発表した資料によると、日本のリユース市場規模は、2022年の時点で2兆8,976億円。これは、2009年の1兆1,274億円の2倍以上となる数値です。2025年には、3兆2,500億円にまで伸長すると見られています。
リユース商品の販路の割合としては、最も多かったのが、個人がフリマアプリを活用して販売する「CtoC」で、全体の43%を占めています。続いて、リユース業者が店頭で販売するケースが37%、業者がネットで販売するケースが18%と続きます。業者によるネット売り上げ比率は増加しており、2011年は10.5%でしたが、2022年には33.6%まで割合を高めています。
環境省「リユース市場規模調査等」資料より引用
リファービッシュはほぼ新品同様、しかも安い!
このように成長が著しいリユース市場に、最近「リファービッシュ」という、新たな概念の中古商品が登場しています。
リファービッシュ(refurbish)は、初期不良や故障などを理由に返品された商品を、メーカーや業者が修理・整備したうえで再度販売すること、およびその商品を指す言葉です。英語では「改修・改装・修理」を意味し、主に電化製品でよくみられることから、「リファービッシュ家電」と呼ばれることもあります。
リファービッシュ品のメリットのひとつに、品質がほぼ新品同様である点が挙げられます。リファービッシュ品では、故障や不具合の原因となったパーツは交換され、正常に動作が確認された状態で販売されるため、厳密には新品ではないものの、それと同等の品質が保証されています。こうした背景から、リファービッシュ品は日本語で「整備済製品」「整備済中古品」と表現されることもあります。
加えて、リファービッシュ品は新品と同様の品質を持ちながらも、新品と比べると値段が割安に設定されている点も特徴です。新品とほぼ同様の機能を備えた製品が、新品よりも割安で購入できるという点で、コストメリットは大きいでしょう。
メーカー側にもメリットがあります。たとえ一部のパーツが壊れていたとしても、正常に動作している残りのパーツを捨ててしまうのはもったいない話です。そこで、問題がある箇所だけを回収し、たとえ値段が落ちるとしてもリファービッシュ品として販売するということは、資源の有効活用や環境への貢献にもつながります。
あの大企業も公式サイトでリファービッシュ品を販売中
すでに一部の企業では、リファービッシュ品の販売をスタートしています。
たとえば「iPhone」シリーズで知られるApple社では、「認定整備済製品」として同社のリファービッシュ品をオフィシャルサイトにて販売しています。たとえば「iPhone 14 Plus 512GB」の場合、新品では販売価格が157,800円ですが、リファービッシュ品では133,800円と、2万円以上も安く設定されており、かつ新品のiPhoneと同じ1年間の保証も附帯されます。
大手家電メーカーのパナソニックでも、「Panasonic Factory Refresh」というリファービッシュ品を公式サイトにて販売しています。
Panasonic Factory Refreshでは、さまざまな理由で同社に戻ってきた家電をもう一度使える状態に再生し、かつ厳格な品質基準を満たしたうえで販売しています。購入後、商品出荷日から1年以内に故障が生じた場合、修理費用の1年保証が付帯されます。
対象となる商品は、同社が販売する洗濯機や冷蔵庫、炊飯器などの生活家電、テレビなどのAV家電、カメラです。なお同社では、月額料金を支払って家電が利用できるサブスクリプションサービスも用意されており、現在のところドライヤーと食器洗い乾燥機が利用可能です。
リファービッシュ品専門の通販サイトも登場
Appleやパナソニックのケースのように、リファービッシュにはメーカーが自社の製品を直接改修、直接販売するパターンもありますが、一方でメーカーや顧客とは関係のない第三者機関が修理を行い、リファービッシュ品として販売するケースも存在します。
その代表的な例が「Back Market」です。Back Marketは2014年にフランスで設立されたリファービッシュ品専門の通販プラットフォームで、日本では2021年に事業をスタートしています。
Back Marketでは、日本の販売業者が扱うリファービッシュ品をサイトに掲載し、その商品の購入希望者を仲介するプラットフォームビジネスを展開しています。販売業者がBack Marketに出品するためには、同サイトが設ける審査をクリアする必要があり、サイトで販売される商品にはすべて1年間の動作保証が付いています。
Back Marketはメーカー直販ではないこともあり、価格は比較的安価です。たとえば前出の「iPhone 14 Plus 512GB」であれば、価格は約11~12万円と、Apple直販のリファービッシュ品と比べても1万円ほど安く設定されています。
このように価格面では安く、性能面でも新品に劣らない特徴を持ったリファービッシュ品は、購入する側にメリットが大きいのは言うまでもありません。仕事でもプライベートでも、スマホやタブレットの買い替えを検討しているのであれば、選択肢に入れておくべきでしょう。
販売する側にとっても、資源の無駄遣いが回避でき、かつ廃棄する予定だった商品を販売できるという点で、リファービッシュ品のメリットは大きいといえそうです。もし販売される予定だった商品を廃棄する際、「もったいない」と感じたのであれば、リファービッシュという選択肢があるということを、覚えておいても損はないでしょう。
連載記事一覧
- 第1回 劇的な変化をみせるネットスーパーが目指すもの 2016.04.12 (Tue)
- 第2回 家電メーカー「アクア」を成功に導いた風雲児 2016.04.19 (Tue)
- 第3回 下町ロケットを例に考える、競合に打ち勝つ戦略 2016.06.21 (Tue)
- 第4回 ロート製薬の副業解禁は朗報か悲報か? 2016.06.28 (Tue)
- 第5回 広島オバマ演説に見る最高の「問いかけ」手法 2016.07.13 (Wed)
- 第6回 「運が良い人」「運が悪い人」の違いはどこにある? 2016.10.13 (Thu)
- 第7回 非正規→正規雇用で助成金、経営に役立つ制度7選 2016.10.25 (Tue)
- 第8回 会話上手な人になるための3つのポイント 2016.11.17 (Thu)
- 第10回 手帳は「目盛り」があるものを選んだ方が良い!? 2017.02.17 (Fri)
- 第11回 中小企業必見、銀行の「融資姿勢」を知る指標がある 2017.03.09 (Thu)
- 第12回 辛いときこそ「ポジティブシンキング」すべき理由 2017.03.16 (Thu)
- 第13回 「宅配便ロッカー」に見る、人手不足問題の解決法 2017.04.17 (Mon)
- 第14回 どうしてGoogleはメールを使わなくなったのか!? 2017.06.15 (Thu)
- 第15回 たった5日間で難解な課題も解決するGoogleの仕事術 2017.08.04 (Fri)
- 第16回 企業の業務改善を実現する、いま話題の「BPM」とは 2017.08.08 (Tue)
- 第17回 サイバーエージェント流、社員の強みを伸ばす方法 2017.09.08 (Fri)
- 第18回 会議を無駄な時間としないための、3つのポイント 2017.10.11 (Wed)
- 第19回 あなたのToDoリストの作り方、間違っているかも!? 2017.10.18 (Wed)
- 第20回 美意識の向上が経営力のアップに!? 2017.11.20 (Mon)
- 第21回 タスク管理がはかどる手帳術「バレットジャーナル」 2017.12.14 (Thu)
- 第22回 中国が欲する日本サッカー育成術とビジネスの共通点 2017.12.26 (Tue)
- 第23回 アイディアが整理され、企画案がまとめやすいメモ術 2018.01.18 (Thu)
- 第24回 キャッシュレス化は後進国の国内カード事情 2018.02.20 (Tue)
- 第25回 3密必至の接客業にニューノーマルビジネスを学ぶ 2020.06.26 (Fri)
- 第26回 日本全国で初めて迎える“マスク × 夏 × 作業現場” 2020.06.26 (Fri)
- 第27回 仕事がスイスイ片付く「テレワーク時間管理術」 2020.09.29 (Tue)
- 第28回 ビジネスパーソンに不可欠、よい短文を書くコツ 2020.10.06 (Tue)
- 第29回 デキる人は実践済み、レポート・報告書作成のコツ 2020.10.06 (Tue)
- 第30回 デキる社会人は、なぜビジネス手帳を使うのか 2021.02.19 (Fri)
- 第31回 「伝わる」プレゼン資料作成5つの鉄則 2021.03.09 (Tue)
- 第32回 絶対に知りたい、副業をはじめる際のポイント 2021.03.09 (Tue)
- 第33回 それ、間違いかも!? 戸惑いがちなビジネスマナー 2021.03.12 (Fri)
- 第34回 日本に必要なのは「問題児」。APU出口学長が語る 2021.04.19 (Mon)
- 第35回 好感を与えるメール署名の書き方 2021.05.31 (Mon)
- 第36回 建設の人手不足を解消する、子ども向けキャリア教育 2021.06.03 (Thu)
- 第37回 職人・工場をつなぐ製造業ビジネスマッチングサイト 2021.06.03 (Thu)
- 第39回 「かかりつけ薬剤師」に指名されるための3つの方法 2021.06.15 (Tue)
- 第40回 かっぱ寿司やパルコも導入「サービスロボット」とは 2021.06.15 (Tue)
- 第41回 「もうすぐ故障」がわかる、故障予知技術のいま 2021.06.15 (Tue)
- 第42回 ウェブ会議をうまく仕切る人がやっていること 2021.06.15 (Tue)
- 第43回 コロナ禍で明暗を分ける"与える営業"と"もらう営業"2021.06.23 (Wed)
- 第44回 ワークマンを支える「Excel経営」とは?土屋専務に聞く 2021.09.07 (Tue)
- 第45回 レトロブームにみる若手社会人の新しく古い価値観 2021.09.14 (Tue)
- 第46回 大手や中小企業も活用、BtoBマッチングサービスとは 2021.09.14 (Tue)
- 第47回 コロナ禍でも、実店舗で売上をUPする方法がある 2021.09.28 (Tue)
- 第48回 スポーツ分析官が語る、組織が成長するデータ活用術 2021.09.30 (Thu)
- 第49回 「ディフェンス重視」が、生き残る企業の条件になる 2022.06.27 (Mon)
- 第50回 ビジネス拡大の可能性を秘めた「サステナブル・シーフード」とは2023.04.28 (Fri)
- 第51回 大谷選手のCMが証明した、ジェンダーレス市場ECの勝算2023.04.28 (Fri)
- 第52回 なぜ音声コンテンツはZ世代の心を掴むのか2023.05.30 (Tue)
- 第53回 バーチャル・トライオンとは?事例を交えて紹介2023.07.05 (Wed)
- 第54回 半数以上の企業が副業・兼業を支持、ワーキッシュアクトの可能性を探る2023.07.05 (Wed)
- 第56回 挑戦がブランドになる。財政難バスケチームの逆転劇2023.11.22 (Wed)
- 第57回 2億円の売上増↑山形の製造業はDXで何を変えたのか2023.11.22 (Wed)
- 第58回 なぜ大谷翔平は、野球と関係の薄い企業の広告に起用されるのか?2024.03.01 (Fri)
- 第62回 市民と行政の間の溝を「シビックテック」が埋める2024.03.29 (Fri)
- 第62回 モノを売らない店舗「ショールーミングストア」の可能性2024.03.29 (Fri)
- 第60回 万博で話題の「空飛ぶクルマ」ってどんなクルマ?2024.03.29 (Fri)
- 第61回 高円寺の老舗銭湯が挑む「あえて無駄を残す」DX 2024.03.29 (Fri)
- 第64回 なぜウォーキングすると、ポイントが付与されるのか?2024.07.11 (Thu)
- 第65回 なぜメタバースが「不登校」の支援に使われているのか2024.07.11 (Thu)
- 第66回 AIによる検品自動化の裏に試練あり。大手プロセスチーズメーカーの挑戦2024.07.19 (Fri)
- 第67回 顧客の判断力を低下させる「ダークパターン」にご注意2024.08.08 (Thu)
- 第68回 すでに教育の現場で導入済み。生成AIを"教材"として使う方法2024.08.13 (Tue)
- 第69回 熱中症から作業員を守る最新ソリューションとは2024.08.13 (Tue)
- 第70回 クールビズを脱炭素に繋げる「デコ活」がスタート2024.09.24 (Tue)
- 第71回 中古なのに新品!?エコな商品「リファービッシュ」とは2024.10.08 (Tue)
- 第72回 文具店がDX支援企業にチェンジ!華麗な転身を遂げた宮城県の企業に迫る2024.10.09 (Wed)