2024.12.26 (Thu)

理想的な会社の在り方とは(第77回)

その「No.1」の表示は大丈夫?消費者庁が実態調査

 消費者庁の調査によれば「No.1」という表示を使用していた広告の多くで、不当表示のリスクがあったといいます。No.1というワードを使うためにはどうすれば良いのでしょうか?

「顧客満足度No.1」とアピールするためには条件がある

 商品やサービスを選ぶ際、パッケージや広告に「顧客満足度No.1」「業界No.1」といったような「No.1」を謳う表示を見かけたことがある人は多いでしょう。商品を売る側としては、こうした「No.1表示」は、購入を検討している顧客に対し、市場で評価されていることの格好のアピールになります。

 しかし、合理的な根拠に基づかずにNo.1表示を行うことは、景品表示法における「不当表示」に該当する恐れがあります。同法では、事業者が嘘や大げさが含まれた、消費者を騙すような表示を行うことを禁止しており、かつ表示の根拠となる情報を確認することを定めています。

 事業者が不当表示をした場合、消費者庁は当該事業者に対し、一般消費者に与えた誤認の排除と再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令を行います。さらに、当該事業者に対して課徴金の納付も命じます(消費者庁のサイトより引用)。

「不当表示にならないよう調査します」→実際は根拠なし

 No.1表示は、法律でルールが決められているにも関わらず、実際には根拠が薄いNo.1表示をしているケースがあるようです。

 2024年9月26日、消費者庁は「No.1 表示に関する実態調査報告書」という資料を公開しました。同資料によると、No.1表示を行っている事業者の多くは、調査会社やコンサルティング会社を通じ、No.1表示の裏付けとして調査を実施しているものの、具体的にどのようなアンケート調査であったのかを把握していなかったといいます。

 資料では事業者がなぜNo.1を採用するのか、その目的と経緯についても調査しています。目的としては「競合他社がNo.1表示を行っているため」という回答が多く、中には「同業他社はどこもNo.1を謳っており、No.1を謳わないことはそれだけで不利な材料となってしまう」という声もあったといいます。

 No.1表示を行う経緯としては、自社が検討して調査会社を探したという事業者よりも、調査会社・コンサル会社から提案を受けたことが契機となった事業者の方が多かったといいます。

 調査会社の中には、事業者に対し「不当表示のリスクが無いよう、No.1の裏付けとなる合理的な根拠を取得し納品します」「顧問弁護士がリーガルチェックをしているので安心してほしい」といったように、景品表示法をクリアしているように勧誘を行ったケースもあったとのことです。しかしながら、実際に行われた調査では、商品の利用経験がない人に調査を行った“イメージ調査”であり、No.1表示の裏付けとしては根拠が薄かったといいます。

事業者へのヒアリング調査(消費者庁「No.1表示に関する実態調査について」より引用)

「医師の○%が推奨」→本当に専門分野の医師が推奨している?

 資料では、No.1表示において「合理的な根拠がある」と認められるためには、単に表示内容と調査結果が適切に対応していることはもちろん、以下の項目をクリアした調査を行うべきとしています。

 その1つが「比較対象となる商品・サービスが適切に選定されている」という点です。No.1を訴求する以上、原則として競合となる商品・サービスを比較対象とする必要があります。

 加えて、「調査対象者が適切に選定されている」ことも重要です。たとえば「顧客満足度No.1」という文言を掲載するのであれば、実際にその商品を使った人物に調査を行う必要があります。このほかにも「医師の○%が推奨」という表示を用いる場合も、その分野を専門とする医師にアンケートを実施すべきとしています。

 「調査が公平な方法で実施されている」ことも重要です。資料では自社商品をアンケートの選択肢の最上位に固定して誘導するような都合の良い調査は、問題となる可能性があるといいます。

 資料では最後に事業者に対し、不当なNo.1表示を防止するために、表示を管理するための担当者を定め、不当な表示が明らかになった場合は迅速かつ適切に対応できるような体制とすること、および一般消費者に表示の根拠となる情報を確認できるようにすることを呼びかけています。

 No.1表示は、顧客に対する分かりやすいアピールとなりますが、その表示が嘘であることがバレてしまった場合、景品表示法の違反による罰則を受けるうえ、顧客からの信頼も失ってしまいます。自社の商品やサービスに向き合うように、そのアピール方法についても実直に向き合う必要があるといえるでしょう。

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