2024.03.29 (Fri)
理想的な会社の在り方とは(第59回)
現場とリモートのいいとこどり。ハイブリットワーク導入のポイント
新しい勤務形態として、テレワークとオフィスでの勤務を組み合わせた「ハイブリッドワーク」を採用する企業が増えています。本記事では、ハイブリッドワークの概要、実現するためのポイント、企業の導入事例などを紹介します。
仕事の効率化が図れるハイブリッドワークが拡大
ハイブリッドワークとは、オフィスワークと、自宅やコワーキングスペースなどで働くテレワークを組み合わせたワークスタイルです。業務内容や家庭の事情などに合わせて、週に2日は自宅、3日はオフィスといったように、フレキシブルに働く場所を変えることで、仕事の効率化や生産性の向上につながることが大きな魅力です。
国土交通省の調査によると、首都圏のテレワークの実施率は、2021年が36.2%、2022年が31.6%、2023年が28.0%と減少傾向にあります。コロナ禍以降のテレワーク実施率は、全国のどの地域でも減少傾向です。一方で、直近1年間のうちにテレワークを実施した雇用型テレワーカーにおいては、週1~4日テレワークを実施する割合が増えています。この結果から、コロナ禍を経て、オフィスワークとテレワークを組み合わせるハイブリッドワークが拡大傾向にあると言えます。
前述の調査結果によると、テレワークのメリットは、「通勤の負担が軽減される」が67.2%と高く、子育てをしながらでも働きやすい、災害や事故発生時でも業務が遂行できる、心の健康の満足度が上がるなどが挙げられています。一方、デメリットとしては、オン・オフの切り替えが難しくなる、コミュニケーションが取りづらく業務効率が下がるといった声もあがっています。
ハイブリッドワークは、テレワークのデメリットの解消しながら、生産性の向上をめざすものです。仕事の効率化の他にも、従業員のエンゲージメントが高められる、多様な働き方ができることで人材確保のチャンスが広がる、オフィスのスペース削減でコスト削減ができるなどのメリットもあります。その一方で、オフィスワークに比べてセキュリティの確保が難しくなる、出社組とリモート組で情報格差が生じる、勤怠管理が煩雑になるなどのデメリットがあります。ハイブリッドワークを導入する際は、自社の状況を踏まえながら、デメリットを解消する方法を考える必要があります。
オフィス環境、ITツール、セキュリティの整備がポイント
ハイブリッドワークを導入する際には、いくつかのポイントがあります。
そもそもハイブリッドワークは、出社が前提の業務の場合、無理に導入する必要はありません。例えば、社内のPCやシステムを利用しないと進められない業務が中心の場合、ハイブリッドワークは非効率です。逆にいえば、リモートでPCを使い、一人で集中して作業した方がはかどる業務、家庭の事情で常時出社しにくい従業員がいる場合は、ハイブリッドワークが適しているといえます。
ハイブリッドワークは、オフィス環境、ITツール、セキュリティの3つを整備することで、導入が可能です。
オフィス環境は、固定席を決めないフリーアドレスを導入することで、職場スペースを有効活用できます。テレワーク率が高まると従業員同士のコミュニケーションが不足しがちになるため、出社したときに気軽にコミュニケーションがとれるスペースも求められます。
ITツールは、メールや電話ではやりにくいコミュニケーションの課題や、出社組とテレワーク組の情報格差を防ぐためのツールとして、顔を見ながら打ち合わせができるビデオ会議や、気軽にコミュニケーションが取れるビジネスチャットなどのツールが必要です。
たとえばグループウェアであれば、ビデオ会議やビジネスチャットだけでなく、スケジュールやタスクの管理機能、ファイル共有ツールなどがひとつにまとまっているため、ハイブリッドワークに適しているといえるでしょう。
セキュリティ対策もハイブリッドワークには欠かせません。テレワークでは自宅以外にもコワーキングスペースやカフェなどで業務を行う可能性があります。社内並みのセキュリティレベルを担保できない、フリーWi-Fiの使用による不正アクセスや、PC画面が覗かれて情報が洩れるといったリスクが考えられます。これらを防ぐには、セキュリティガイドラインや情報管理ルールを策定するとともに、セキュリティソフトの導入を考えるべきでしょう。
ハイブリッドワーク導入後の見直しも必要
ハイブリッドワーク導入の成功事例を2つ紹介します。あるIT企業は、リモートワーク、フレックスタイム、最低勤務時間3時間などの制度を定め、サテライトオフィスの設置や、Microsoft365の導入などを行い、アナログフローのデジタル化を図りました。その結果、オフィスICT環境の社内満足度98%に達し、従業員満足度調査でポジティブ回答が過去最高の63.2%を記録。時短勤務からフルタイムへの復帰者が2倍になった他、65%のコスト削減が実現できました。
ある教育関連企業は、ハイブリッドワークを導入後に、社内アンケートや働き方のガイドラインの見直しなどを行ったところ、出社・勤怠管理の事務面での負荷が明らかになりました。課題解決をめざしつつ、生産性向上やコミュニケーションの改善を図るため、独自の勤怠共有ツールを導入。従業員が勤務場所・時間・体調、業務報告、出社予定などを一括して入力し、組織内でリアルタイムに一覧できるようにしました。加えて、同ツールでは通勤手当の申請も行えるようになり負担が減りました。
企業を取り巻く環境は変化し、新しいツールなども日々生まれています。ハイブリッドワーク導入後も、より効率よく業務ができて、生産性が上がる環境を作るため、従業員の声をもとに改善を重ねていくことが大事です。
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