2024.08.08 (Thu)

理想的な会社の在り方とは(第67回)

大手企業や自治体も続々導入「週休3日」は実際どうなのか?

 従業員が土日以外の任意の1日を休日とする「選択式週休3日制」を導入する企業や自治体が増えています。しかし、休んだ1日分の労働力は、どのようにカバーするのでしょうか?

地方自治体や大手企業で「選択式週休3日制」が始まりつつある

 世の中にはさまざまな働き方が存在しますが、多くの人は、月曜日~金曜日に勤務し、土曜日・日曜日に休暇を取る「週休2日」で働いていることでしょう。

 しかし最近では、従業員自身が土曜日・日曜日だけでなく、平日の任意の1日を休日とする「選択式週休3日制」を導入、もしくは導入を検討している自治体や企業が存在します。

 たとえば茨城県では、2024年4月より教員など一部を除く全職員を対象に、選択式週休3日制の導入を発表。岡山県岡山市でも4月より、教員・保育士・消防士を除く職員の選択式週休3日制を試験的に導入しています。

 企業では大手自動車メーカーのトヨタ自動車が、一部の社員を対象に、選択式週休3日の導入を検討していることが新聞などで報じられました。

 このように自治体や企業が選択式週休3日制を推進する背景には、従業員の働き方の柔軟性を高め、優秀な人材の確保、離職を防ぐ狙いがあることが予想されます。

 厚生労働省が運営する「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、選択的週休3日制を導入することで、従業員が仕事と育児/介護/病気の治療を両立したり、学び直しや余暇の充実、地域貢献など、従業員のワーク・ライフ・バランスを促進する効果があるとしています。

 先に挙げたトヨタの例でも、週休3日制を採り入れることで、採用競争力、優秀な人材を確保する狙いがあると報じられています。これから少子高齢化が進み、若い働き手の不足が予想される中、多様な働き方を導入している企業の求人は、就職希望者にとって魅力的に映る可能性が高いと予想されます。

休んだ1日分の労働力は、どうやってカバーするのか?

 しかし、企業が選択式週休3日制を採用するうえでは、休んだ1日分の労働力を、どのようにカバーするかという問題が存在します。

 先に挙げた働き方・休み方改善ポータルサイトによると、選択式週休3日制を導入している企業の多くは、【1】休日を増やす一方で、1日あたり労働時間を増やす、もしくは【2】休日を増やす分、当該従業員の給与を削減するという、2タイプの方法で調整しているといいます。

 中には、【3】週休2日制の勤務形態の給与を維持したまま休日を増やすという方式を採用している企業もあるといいます。【3】は週当たりの労働時間が減る一方、給与は特に変わらないため、時間単価当たりの給与はアップすることになります。とはいえ、より短い勤務時間で成果を出すことが求められることになるため、従来の働き方よりも生産性を向上することが求められます。

選択式週休3日制は、労働時間や給与形態によって、3パターンのタイプが存在する(厚生労働省:働き方・休み方改善ポータルサイトより引用)

週休3日どころか、「週休4日」を採用する企業も

 働き方・休み方改善ポータルサイトでは、すでに選択式週休3日制を導入した企業の声も掲載されています。

 ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOでは、従来の1日8時間×週5日勤務を基本的な働き方としつつも、1日10時間×週4日勤務の選択式週休3日もできるようにしています。総労働時間は変わらないため、給与体系や人事評価も、従来から変える必要はなく、制度の導入はスムーズであったといいます。

 選択式週休3日制に対する社員の反応は総じて好評で、「休日が増えたので、これまでできなかったことに時間を使うことができた」「家族との時間が増えた」などの声が聞かれており、制度導入のデメリットは特段ないといいます。社員の2~4割程度が同制度を利用しており、性別や婚姻状況による偏りは特にないといいます。小さい子どもがいる社員は、通常通り8時間勤務を選択している社員が多いようです。

 SMBC日興証券株式会社では、2020年より「週3日・週4日勤務制度」を導入。週休3日どころか、“週休4日”も可能な働き方をスタートしています。

 週4日勤務の対象者は、欠勤・休職中でない40歳以上の社員、もしくは育児・介護理由のある入社4年目以降の社員です。40歳以上のベテラン層社員は、セカンドライフを見据えた自律的なキャリア形成に時間を割くことを狙っているといいます。

 週3日勤務の対象者は、欠勤・休職中でない60歳以上の社員、もしくは介護理由のある 40歳以上の社員です。40歳以上の社員が同制度を利用するには介護理由が必要ですが、60歳以上の社員に対しては特段の条件を設けておらず、副業・余暇活動に時間を充てることも可能といいます。

 給与形態は通常勤務者との公平を期すため、週4日勤務者は通常勤務時の80%、週3日勤務者は通常勤務時の60%の給与が支給されます。同制度の利用者からは、「体力的・精神的な余裕からメリハリのある仕事ができるようになった」「理解を示し協力してくれる同僚・会社に感謝している」といった声が寄せられているといいます。

 週に1度の休みが加わるだけで、育児や介護など、ワーク・ライフ・バランスが両立しやすくなる従業員はきっといるはずです。給与面や人事面で、現行の制度を変える必要はありますが、採用面への効果も考えると、チャレンジする価値は十分にあるといえるでしょう。

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