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2023.03.06 (Mon)

(第31回)

先進企業に見る、男性育休取得の3つのメリット

 日本の男性育児休業(以下、育休)取得率が伸び悩んでいます。厚生労働省の資料によると、女性の取得率が85.1%なのに対し、男性は13.97%と低く(2021年度)、取得日数も短期間で終わる傾向があります。男性育休の取得率を促進させるには何が必要なのか、先進的な取り組みで知られる企業の実践事例とともに考えます。

世界トップクラスの制度なのに、日本の男性育休取得率は伸びない

 日本の現行法にもとづく育休制度では、子どもが1歳になるまで育休の取得が、男女問わず認められています(※)。育休を取得した場合、原則として賃金の67%(6か月目以降は50%)にあたる育休手当が雇用保険から支給されます。父親に対する育休手当としては、OECD諸国の中では1、2を争う手厚い制度となっています(OECD諸国では、父親の有償産休・育休期間は平均10.4週間)。

※父母同時に育休取得する場合は1歳2カ月まで延長、保育園が確保できないなど一定の要件を満たす場合は2歳まで取得が可能

 しかしその一方で、日本の男性の育休取得率は非常に低い数値となっています。2021年度のデータでは、女性の取得率が85.1%なのに対し、男性は13.97%。取得日数も、女性の約8割が10か月以上であるのに対し、男性の半数以上は2週間未満、2.5割は5日未満という短さです。さらに、夫婦間の家事・育児分担についても、妻は夫の4倍の時間を費やしているという調査結果があります。

 制度が充実しているにも関わらず、日本ではなぜ男性の育休取得が進まないのでしょうか?

 その理由としては、育休取得への理解が得られにくい職場環境、収入減やキャリアへの影響を不安視する男性が多いことが考えられます。この現状を背景に、日本では現在「2025年までに男性育休取得率30%に」という政府目標が掲げられ、改正育児・介護休業制度が段階的に施行されています。

 2022年10月には、従来の育休とは別枠で、父親が子どもの出生直後に4週間の休業を取得できる男性版産休、「産後パパ育児休業(出生時育児休業)」が施行されました。

 さらに、「産後パパ育休」の申し出期限を、開始日1カ月前である通常の育休より短い、2週間前に設定。さらに、育休を2回まで分割して取得することが可能となりました。母親の産後うつのリスクが高い出産直後の時期に、父親が柔軟に育休取得しやすくする狙いがあります。

 これらの変更に伴い、企業や組織は対象者にしかるべき制度の通知を行い、取得を希望する従業員の相談に柔軟に対応することが求められます。さらに2023年4月からは、従業員数1,000人超の企業は育休などの取得状況を年に一回公表することが義務付けられます。

先進企業の実践例に見る、男性育休取得の3つのメリット

 一見すると、“企業や組織に課せられる義務が増すばかり”というようにも見えますが、実際には男性育休を促進することで、企業にとってもメリットが期待できます。複数企業の実践例とあわせて、以下に3点に分けて紹介します。

優秀な若手人材の確保

 仕事と家庭の両立に対する若年層の意識は高い傾向にあります。ビッグローブ株式会社が行った意識調査でも「男性も育休を取得すべきというZ世代が8割弱」という結果が出ており、ワークライフバランスの充実は、就職先選びの重要な判断基準になっているといえます。

 ワークライフバランスのポイントを押さえて、争奪戦が激しいITエンジニアを安定的に確保しているのが株式会社メルカリです。同社は、2016年から産休・育休取得者に対して復職一時金を支給するなど収入面のサポートを手厚くしたことで、男性の育休取得率8割を達成しており、平均2~3カ月ほど休暇を取得しているといいます。結果的に、中途採用も含めた採用の成功率が飛躍的に向上。もちろん育休の給付金にかかる出費は増えますが、それ以上に採用関連費用の大幅な削減効果があったといいます。

業務の効率化・マネジメント力の向上

 育休を取るときには、担当業務の「棚卸し」が必ず発生します。この作業こそ、チームで分担すべきタスクを精査し、属人化しがちな業務を見直す機会となります。

 実は育休を取得し復職した男性従業員は、家事・育児に関わる時間が長くなることで、効率的な働き方をめざすようになるといいます。積水ハウス株式会社が行った意識調査では、育休から復職した男性の約7割が「育休が生産力向上に役立つ」と回答しています。

 同社は、育休取得者が仕事のタスクと向き合うのと同様、家事・育児の分担や育休の目的を考えさせるため、独自の「家族ミーティングシート」なる計画書を導入した取り組みを行っています。復職後のビジョンを含めた育休取得計画書を上司に提出することで、取得者本人も上司も仕事と家事・育児それぞれに必要な時間を把握できるようになり、結果的に労働時間に対する意識向上に役立ったといいます。

企業へのロイヤリティ・エンゲージメント向上

 先に引用した調査ではまた、育休経験者の半数以上が「企業への愛着が増した」と回答しており、復職後、仕事と生活の両立を支えた企業や同僚に恩返ししたいという気持ちが強くなるケースが多いようです。

 「この経験を業務に活かしたい」といった従業員の育休経験後の心境の変化をWebサイトで紹介するのは、江崎グリコ株式会社です。同社は、2020年に男性従業員に対する1カ月の育休取得を必須化し、取得率100%を達成しています。育休取得者の業務をカバーした上司や同僚の声には、一時的な業務負担のしわ寄せはあるものの、むしろ「同僚の業務に対する理解が深まった」と、育休をチームの関係強化の好機ととらえていることがわかります。

長期的な視点では、男性育休はビジネスに有効である

 すでにコロナ禍によってリモートワークが普及し、柔軟な働き方に対するハードルが低くなっている今、男性の育休取得を認めない企業文化は、即戦力人材の離職を招くリスクをはらんでいるともいえます。

 もちろん「人手不足だから業務に支障が出て困る」という懸念の声があがるのは当然です。しかし、女性の離職回避や多様な視点の育成など、長期的にみれば男性育休の取得がビジネスに好循環をもたらすことは明らかです。育休促進を後押しする助成金や計画作成ツールなどをうまく活用し、男性育休が「当たり前」な職場づくりをめざすべきといえるでしょう。

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