2024.03.29 (Fri)
理想的な会社の在り方とは(第60回)
3年以内に3割退職。Z世代の離職を防ぐ方法とは?
生産年齢人口が減少する中、企業では次代を担う人材の確保が課題となっています。しかし、就職後3年以内の離職率は約3割と高く、Z世代をはじめとする若手社員に働き続けられるための施策が求められています。本記事では、若者が職場や働き方に求めていることや、離職率の低減に取り組んでいる企業の事例を紹介します。
若手従業員の3人に1人が、3年以内に退職している
厚生労働省が2023年10月に発表した資料によると、2020年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.0%(前年度比1.1ポイント増)、新規大学卒就職者が32.3%(同0.8ポイント増)となっており、若手社員のおよそ3人に1人が就職後3年以内に会社を辞めています。
退職の理由はさまざまですが、日本労働組合総連合会のアンケート調査(2022年)では、2〜5年目の若手社員が新卒入社した会社を辞めた理由の第1位は「仕事が自分に合わない」で、以降「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「賃金の条件がよくなかった」の順で続きます。
マネジメント側も、若手社員の教育や対応について課題を認識しているようです。月刊総務の調査(2022年)によると、総務人事担当者の半数が、Z世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれの若手世代)に対するマネジメントに難しさを感じているといいます。
その理由としては、「モチベーションアップのために、どのようなアプローチが効果的なのかがわからない」「上の世代の現場の社員が価値観のシフトができていない」「我々の世代の考え方と異なり、ハラスメント扱いされることが多い」などが挙がっています。
Z世代が求めるのは、フレキシブルな働き方や負荷のかからない職場環境
若手社員の離職を防ぐためには、彼ら・彼女らの仕事に対する価値観を理解することが重要です。Z世代の従業員は、職場に何を求めているのでしょうか?
先述した月刊総務の調査では、Z世代社員の価値観の特徴として「ワークライフバランス重視である」「フレキシブルな勤務体制を重視する」「効率重視である」といった回答が上位に挙がっています。
厚生労働省の「新しい時代の働き方に関する研究会」が行った調査でも、「好きな時間に働きたい・好きな場所で働きたい」と、自由な働き方を希望する20〜30代社員がここ数年で増加傾向にあるといいます。特に20代前半は、約52%が好きな時間、約44%が好きな場所で働くことを希望していることが分かっています(2022年の調査)。
同調査ではさらに、大学生へのアンケート結果で「短期で成長できるが、体力的・精神的なストレスがかかる組織」よりも、「短期での成長はしにくいが、体力的・精神的なストレスがかからない組織」のほうが支持される傾向にあるというデータも存在しています。男女ともに共働き希望も増加していることから、ワークライフバランスの充足を求めていることがうかがえます。
これらの調査を踏まえると、柔軟な働き方や体力的・精神的負荷のかからない職場づくり、育児休業などの福利厚生の充実によって若手社員のニーズに応えながら、企業成長をどのように実現していくかが重要なポイントになりそうです。
企業はどうやって若手従業員の離職を抑えているのか?
すでに若手社員の離職率低下に成功している企業も存在しています。
認可保育施設を運営するハイフライヤーズは、給与をアップし、福利厚生も充実させたにも関わらず、保育士の離職率が30%以上に上昇し、一時は自治体から改善勧告を受けるほどでした。
その理由を分析したところ、Z世代の従業員に対するマネジメントの不足や、それに伴う従業員のモチベーション低下があったことから、同社は外部サービスを活用し、社員同士が賞賛し合う仕組みの導入や、社内の心理的安全性(自分の考え・気持ちを発言できる状態のこと)を保証する施策を実施しました。
その結果、新入社員からも活発な意見が出るようになり、離職率は7%まで改善。さらに、社員のモチベーションアップがサービス品質の向上につながり、売上にも好影響をもたらしたといいます。
サイボウズは、2005年に離職率が過去最高の28%を記録したことをきっかけに、組織や評価制度の見直し、ワークライフバランスに配慮した制度、社内コミュニケーションを活性化する施策を実施しました。
さらに、在宅勤務制度(2010年開始)や副業許可(2012年開始)を採り入れたり、社員一人ひとりが自分の働き方を自由に記述できる「働き方宣言制度」など先進的な取り組みを重ねたことで、現在の離職率は3〜5%まで低下しています。結果的に採用・教育コストの削減につながったうえ、ワークスタイル関連の賞を多数受賞するなど、企業ブランディングにも貢献しているようです。
NTTグループは働き方改革の一環として、2022年より社員の自宅を勤務場所とする「リモートスタンダード制度」を導入しました。本人の希望や業務内容に応じて出社やハイブリッドワークも可能で、制度に合わせてICTツールの整備、勤務制度・評価制度の変更、ヘルスケア相談窓口の設置なども実施しています。2024年1月時点でNTTグループ各社のリモートワーク実施率は4〜7割と高い数値を記録しています。
従業員が一定数離職してしまうのは、職業選択の自由が保障されている今、仕方がないことではあります。しかし、特に若手従業員が大量に離職しているのであれば、何かしらの対策が必要です。若手に負担がかかりすぎていないか、自社の働き方をいま一度見直し、より働きやすい職場に変えていくべきでしょう。
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