2023.12.21 (Thu)

理想的な会社の在り方とは(第38回)

契約社員が多い企業は要注意。「労働条件明示」の新ルールがスタート

 企業が従業員を採用する際、賃金や労働時間といった労働条件を書面などで明示する必要があります。2024年4月からは、特に有期契約労働者に対して明示する事項が増えます。

労働条件は、従業員の採用時に明示しなければいけない

 企業が従業員を採用する際、その労働者に対して、賃金や労働時間といった労働条件を、書面などにて明示する必要があります。このことは、労働基準法の第15条で定められています。

 同法では明示する内容も決められており、具体的には、「賃金」「労働時間(休憩・休日なども含む)」「労働契約の期間」「就業の場所・業務内容」「退職に関する事項」「職業訓練に関する内容」など、全部で14項目も存在します(厚生労働省のHPより)。

 企業はこれらの事項について、従業員の採用時にあらかじめ「労働条件通知書」という書面の形で明示する必要があります。

2024年4月からは、就業場所や業務の変更範囲を明示する必要がある

 この「労働条件明示」のルールが、2024年4月から変更されることになりました。

 具体的な変更内容としては、企業が労働者(求職者)と労働契約を締結・および更新するタイミングで、相手側に明示しなければならない条件として、【1】就業場所・業務の変更の範囲、【2】更新上限の有無と内容、【3】無期転換申込機会、【4】無期転換後の労働条件の4点が追加されることになります。

 このうち、すべての労働者に明示する必要があるのは【1】のみです。全ての労働契約と、有期労働契約の更新のタイミングにて、雇入れ直後の就業場所と業務の内容、および将来の配置転換によって、就業場所や業務にどのような変更があるのか、その範囲を事前に明示しておく必要があります。

 たとえば、ある労働者を本社のオフィスの人事部門スタッフとして迎え入れる際、将来的に転勤や配置換えも検討しているのであれば、就業場所を「会社の定める営業所」、業務については「全ての業務への配置転換あり」といったように、幅を持たせた内容で労働条件を明示する必要があります。

有期契約労働者に明示しなければいけない内容とは?

 【2】の「更新上限の有無と内容」、【3】の「無期転換申込機会」、【4】の「無期転換後の労働条件」については、基本的には契約社員・パート・アルバイトといった有期契約労働者に限ったものとなります。

 【2】は有期契約労働者を採用する、あるいは更新するタイミング、【3】【4】については、有期契約労働者が無期契約に転換する権利を得たタイミングで明示する必要があります。

 これらの変更点は、主に2018年からスタートした「無期転換ルール」制度に対応するものとなります。2018年より、有期契約労働者が同じ企業で5年間の契約を迎えた場合、労働者側の申し込みによって、無期契約に転換されることが制度化されています。

 有期契約から無期契約に転換する際、就業場所や業務内容が大きく変わる可能性も十分に考えられます。そもそも労働者自体が、その権利を有することに気付かない恐れもあります。

 こうした事態を防ぐため、企業側から労働者側に対し、事前に無期転換の権利が発生することを通知しておくことが制度化されたというわけです。

 なお、【3】【4】に関しては、無期転換申込権が発生する更新のタイミングで明示する決まりとなっています。つまり、有期契約労働者の契約の4年目が終わり、5年目の契約更新を行うタイミングで、その旨を知らせる必要があります。

契約社員やパートなどを多く採用する企業は要注意

 労働条件明示には、法的に明示が義務付けられている「絶対的明示事項」と、口頭通知でも問題ない「相対的明示事項」の2つが存在しますが、今回追加される内容はすべて絶対的明示事項となります。そのため、事前に通知していない場合、企業は労働基準法違反となり、30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。

 今回の労働条件明示のルール変更は、特に契約社員やパート・アルバイトを多く採用する企業にとっては手間が増えることになります。従業員の契約状況がどのようなステータスにあり、どのような労働条件を明示すれば良いのか、無期転換ルールへの対応を含め、この機会に見直すのが良いでしょう。

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