2023.10.04 (Wed)

理想的な会社の在り方とは(第36回)

10月から開始「ステマ規制」で何がNGになるのか?

 2023年10月1日から、景品表示法の禁止行為に「ステルスマーケティング(以下、ステマ)」が指定され、ステマの規制が始まりました。 SNSやインフルエンサーを使った企業のマーケティング活動を行っている企業は、この「ステマ規制」を正しく理解しておく必要があります。本記事ではステマ規制の概要や、規制の対象となるケースを解説します。

SNS時代の今、ステマが横行している

 景品表示法は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」といいます。この法律は、商品やサービスの品質、内容、価格などを偽って表示を行うことを規制したり、過大な景品の提供を防ぐために、景品の限度額を設定しています。

 この景品表示法の禁止行為に、新たに「ステマ」が追加されることになりました。ステマとは、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す行為です。インターネット広告の伸長やSNS利用者数の増加、インフルエンサーマーケティングの活発化などにより、このステマが問題視されるようになりました。

 ステマの具体例としては、2019年に起きたあるアニメ映画における事件があります。配給会社は映画の公開にあたり、複数の漫画家に対し、映画の感想を自身の漫画とともにSNSへ投稿することを依頼。しかし、投稿された漫画には「PR」のように、広告であることを示す表示が無かったため、この漫画を見たユーザーから “ステマではないか?”と疑いの目が向けられることになりました。配給会社は後日、広告である旨が抜け落ちていたことを謝罪することとなりました。

 ほかにも、動画投稿アプリの運営会社がインフルエンサーに報酬を払い、特定の動画を一般投稿のように紹介させた事件も発生しています。特にSNSでは、企業が影響力のあるインフルエンサーを起用し、ステマを行うケースが多く見られます。

 消費者庁が行った、現役インフルエンサー300名を対象にしたアンケート調査結果によると、これまでにステマを広告主から依頼されたと答えたインフルエンサーは、41%(123人)にも上っています。さらに、そのうちの約45%(55人)が、依頼を全部もしくは一部受けたと答えました。

 インフルエンサーが企業から依頼を受けたSNSへの投稿は、広告であることが明示されていないと、消費者はインフルエンサーの感想と受け取りかねません。インフルエンサーの投稿や口コミは、消費者が商品やサービスを選ぶ際の大きな判断基準になることがあり、これでは消費者が自主的かつ合理的に商品やサービスを選ぶことができなくなります。

ステマで2年以下の懲役、または300万円以下の罰金を受ける恐れも

 景品表示法ではこれまで、ステマに関する独自の項目が設けられておらず、あくまでも「不当表示」(※)の一環として規制されていました。2023年10月の同法改正により、不当表示の一部にステマが明記されることになりました。
※不当表示……商品やサービスの品質・価格を、実際とはかけ離れたものに見せかけることにより、消費者の適正な商品・サービスの選択をできなくするような表示のこと。景品表示法で禁止されている。

 規制の対象となるのは、商品やサービスを供給する事業主(広告主)です。違反した場合は、再発防止を求める措置命令が出され、広告を依頼した事業者名が公表されます。措置命令に従わない場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金などが科されます。

 一方で、事業主(広告主)から依頼を受けて制作・掲載・投稿を行う第三者(インフルエンサー、アフィリエイター、広告代理店、新聞社、出版社、放送局など)や、商品やサービスを陳列して販売している小売業者、取引の場を提供しているオンラインモール運営事業者などは規制対象外となります。つまり、事業主から依頼を受けた側は、特に罰則を受けることはありません。

 ステマには2種類あり、いずれも規制の対象となります。一つは「なりすまし型」です。これは、企業が第三者を装い、自社の商品に対する肯定的な意見を掲載する行為です。例えば、商品の販売担当者(役員、管理職など)が、自社商品の認知度を上げるために商品の画像や文章をSNSに投稿したり、競合商品を自社の商品と比較して性能が劣っているなどの誹謗中傷を投稿することが「なりすまし型」に該当します。

 もう一つは「利益提供秘匿型」です。これは企業がタレントや著名人、インフルエンサーなどの第三者に、金銭もしくはその他の経済利益を提供して表示させているにもかかわらず、その事実を開示しないケースです。

 事業者の表示であることを消費者に開示するためには、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言をわかりやすく示す、もしくは、「A社から提供を受けて投稿している」などと文章で示す必要があります。しかし、大量のハッシュタグの中に「#広告」と表示してある場合などは、不明瞭で分かりにくいと判断されることがあります。

 ステマ規制では、事業者の表示であっても、そのことを消費者が判別することが困難である場合は、ステマとみなされて規制の対象となります。メディアへ掲載・投稿する場合は、表示を明瞭に分かりやすくする必要があります。

9月30日以前の投稿も規制の対象になる

 今回の規制は、インターネットやSNSだけでなく、新聞やテレビ、雑誌などのマスメディアも含めた全ての媒体が対象になります。つまりテレビ番組や雑誌の編集記事なども含まれます。

 さらに、ステマ規制は10月1日から実施されましたが、9月30日以前に投稿されたものでもネット上に残っている場合は行政処分の対象になります。企業は過去の情報発信の内容を総点検する必要があります。

 ステマは行政処分の対象になるだけでなく、企業やブランドのイメージを損ない、事業活動にも影響を及ぼします。もし自社のビジネスにおいて、ステマのようなマーケティングを行っているケースがあれば、新しい景品表示法に違反していないか、検証をすべきでしょう。

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