2024.03.29 (Fri)
理想的な会社の在り方とは(第44回)
2023年10月から開始「ステマ規制」で何が禁止されたのか?
2023年10月より、「ステマ」ことステルスマーケティングが、景品表示法にて明確に規制の対象となりました。一体、どのような表現がステマとみなされるのでしょうか?
公正を装ったヤラセ投稿「ステマ」にご注意
「ステマ」という言葉をご存知でしょうか?ステマとは「ステルスマーケティング」の略で、広告であるにも関わらず、その旨を明記せず公正を装って消費者を欺く宣伝行為のことを指します。
簡単にいえば「ヤラセ」や「サクラ」のようなものです。
たとえばSNSや口コミサイトにおいて、企業がまるで個人の感想のように偽って書き込みを行うことや、芸能人などインフルエンサーが企業から報酬を受け取っているにもかかわらず、そのことを明示せずに投稿することもステマとなります。
口コミは、消費者が商品やサービスを選ぶ際の重要な判断基準のひとつです。ステマが横行することで、消費者はどれが本当の情報なのか分からず、正しい判断を下すことができなくなる恐れがあります。
日本でも2023年からステマ規制がスタート
ステマはこうしたデメリットがあるにも関わらず、これまで法律では明確に禁止されていませんでした。
ステマのような消費者を騙すような広告を禁止する法律としては、「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」が存在しています。同法は、うそや大げさな表記を規制し、消費者がより良い商品やサービスを、自主的かつ合理的に選ぶ環境を守るための法律です。
従来の景品表示法では、ステマに関する独自の項目が設けられておらず、同法が定める「優良誤認/有利誤認」に該当した場合にのみ規制の対象となっていました。優良誤認とは商品やサービスを実際よりも優れているように見せかけること、有利誤認とは商品やサービスの価格など取引条件が、実際よりも有利だと偽って宣伝することを指します。
しかし、2023年10月に同法が改正され、同法の「不当表示」の一部にステマが明記されることになりました。不当表示は、商品やサービスの品質・価格を、実際とはかけ離れたものに見せかけ、消費者の適正な商品・サービスの選択を妨げる表示のことです。
消費者庁の資料によると、OECD加盟国(名目GDP上位9カ国)において、ステマに対する規制がないのは日本のみでした。今回の改正により、ようやく日本でもステマ規制がスタートすることになります。
懲役&罰金も!ステマ違反の新ルール
改正後の景品表示法では、消費者が「これは広告である」ということが明確に判別できない表示が禁止されます。たとえば、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といったような、広告である旨をわかりやすく示されていない表示は、ステマと見なされる恐れがあります。たとえ「広告」という表示があったとしても、その文字が小さかったり、目立たない場合は、NGとなる可能性が高いです。
規制の対象となるのは、商品やサービスを供給する事業者(広告主)です。たとえば、事業者の人物が第三者を装い、自社の商品やサービスの認知度を上げるため、商品の感想や競合商品の誹謗中傷をSNSに投稿することも規制の対象となります。さらに、事業者が有名人やインフルエンサーなどの第三者に、金銭的な利益を提供しているにもかかわらず、その事実を開示せず投稿することもNGとなります。
もし違反した場合は、再発防止を求める措置命令が出され、広告を依頼した事業者名が公表されます。措置命令に従わない場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
なお、有名人やインフルエンサーなど、事業者から依頼を受けた側は、たとえ投稿がステマだったとしても、罰則を受けることはありません。罰則を受けるのは、あくまでも広告の出稿者である事業者に限られます。
「口コミでクーポンをプレゼント」もステマになる恐れあり
具体的なケースで考えてみましょう。たとえばある企業が「SNSで商品の口コミをしたら、クーポン券をプレゼント」といったキャンペーンを始めたとします。その後、ある顧客が商品に関する口コミをSNSに投稿したものの、その投稿内で広告を明示する記述が無かった場合、景品表示法の不当表示に接触する恐れがあります。この場合、罰則を受けるのは企業のみとなります。
消費者庁では現在、どのような表示がステマと判定されるのか、その基準を解説した資料「景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック~」を公開しています。こうした資料に目を通すことで、どこまでがステマなのかステマではないのか、その基準が理解しやすくなるでしょう。
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