2024.11.22 (Fri)

理想的な会社の在り方とは(第75回)

SNSでの誹謗中傷に、企業はどう対策すれば良いのか

 SNSやインターネット上に投稿される誹謗中傷や不当なクレームをめぐるトラブルは年々深刻化しており、企業の営業行為を脅かす存在となっています。こうしたトラブルに巻き込まれるリスクを減らすため、企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか。AIツールを取り入れた対応事例を紹介します。

SNSでの誹謗中傷に、企業はどう対策すれば良いのか

 SNSやインターネットにおいて、企業の営業行為を妨害したり、従業員の名誉を不当に傷つけるような悪質な投稿が増えているようです。

 インターネット上の違法・有害情報に対応する「違法・有害情報相談センター」の報告書によると、2023年度に同センターに寄せられた相談件数は6,463件で、過去最多の数値を記録しました。うち約80%は個人(一般人)から寄せられたものですが、企業・団体(約6%)、および個人事業主(10%)からの問い合わせも一定数ありました。

 SNSなどネット上で拡散される不当な苦情やクレームは、企業のイメージダウンにつながりかねず、顧客離れや投資家からの信頼低下に直結するリスクをはらんでいます。悪質なケースでは、従業員個人に対する攻撃的な投稿でプライバシーの侵害や信用を損ねるような迷惑行為も散見されており、従業員の心理的不安やモチベーション低下への影響も引き起こしかねません。

 こうした迷惑行為は、基本的には匿名のアカウントによって行われるため、未然に防ぐことは簡単ではありません。しかし、リスクを最小限に抑える予防策は存在します。

 そのひとつが、SNSにおけるリスクの「モニタリング」です。ここでいうモニタリングとは、SNSやブログなどでの投稿やコメントを監視・分析することを指します。自社や自社の製品・サービスに関連するキーワードを設定し、キーワードに関する投稿内容をリアルタイムで把握することで、ネガティブな投稿を早期に発見し、拡散される前に手を打つことが可能です。

 もちろん、SNSにおける膨大な情報源を常時監視し、そのリスクを検知するのは簡単なことではありませんが、最近ではAI技術を用いた自動検知ツールで投稿をモニタリングするサービスも登場しています。こうしたツールを用いれば、問題発生時に迅速に対応できるだけでなく、リスクの傾向を日頃から把握することもできるでしょう。

「本当に投稿しますか?」ネガティブな投稿をAIが自動で検出

 AI技術を用いた誹謗中傷や炎上リスクの予防対策は、不特定多数の投稿を管理するメディアプラットフォーム側でも行われはじめています。

 たとえば、クリエイターが記事コンテンツを発信するメディアプラットフォーム「note」では、2024年4月に法律相談サービス「弁護士ドットコム」とパートナッシップを開始し、AIを使って炎上につながる可能性がある投稿内容を公開前に検知し、投稿者に注意を促す機能を導入したことを発表しました。

 たとえば投稿内容に差別的な内容、および誹謗中傷のような内容が含まれて居る場合、投稿直前に「本当に投稿しますか?」といった慎重な対応を求めるメッセージを自動で表示します。AIは投稿者の文章から感情を分析し、特に「怒り」のようなネガティブな感情が強い場合に注意を行うといいます。

 同社ではさらに、投稿者が誹謗中傷や炎上に巻き込まれてしまった際、無料で法律相談ができるAIチャットボットの設置も検討しています。

度を超えた誹謗中傷は、SNSプラットフォームへの問い合わせを!

 このように、AIによる予防策が講じられているものの、SNSやインターネット上における誹謗中傷のリスクは、完全にはゼロにはできません。もし発生した場合には、どのような対処を行うべきなのでしょうか。

 厚生労働省が公開している「カスタマーハラスメント対策マニュアル」では、誹謗中傷の投稿を発見した場合の対処法として、大手SNS/プラットフォームの運営者に対する投稿の削除要求をすることを挙げています。発見した際にすぐに行動が取れるよう、どのサービスでどのような誹謗中傷が削除の対象となるのか、どこに削除を依頼すれば対応を受けられるのかなど、対応体制をあらかじめ確認し、万が一の事態に備えておくことも重要といいとしています。

 誹謗中傷があまりに悪質で、名誉棄損にあたる場合には、弁護士や警察に相談して、発信者の情報開示請求や賠償請求といった法的措置を検討すべきとしています。解決策や削除の求め方が分からない場合には、法務省の「インターネット人権相談」や「違法・有害情報相談センター」、「誹謗中傷ホットライン」(セーファーインターネット協会)といった専門の相談窓口が相談先として挙げられています。

 2024年5月には、大規模プラットフォーム事業者の偽・誤情報への措置を義務づける「情報流通プラットフォーム対処法」が公布され、1年以内の施行が予定されています。同法が施行されれば、プラットフォームに対する投稿の削除対応の迅速化や運用体制の明文化が義務づけられ、削除申出の対応が円滑になることが期待されます。

 実際に自社の従業員がやってしまった事実が投稿されるのであれば、SNSにおける投稿は反省すべきでしょう。しかし、実際には発生していない虚偽の投稿でビジネスが妨げられるのは、あまりに理不尽な話です。そうした悪質な投稿を迅速に削除することで、ブランドの信頼性と従業員の安心感を守ることができます。もしSNSでありもしないことを投稿されて困っているのであれば、本記事で取り上げたような専門的なサポートを活用し、見直しを行ってみてはいかがでしょうか。

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