2024.03.29 (Fri)

理想的な会社の在り方とは(第58回)

DXを円滑に推進するためのチームづくりとは?

 組織のDXを円滑に進めるためには、そのためのチームづくり欠かせません。実際にどのようなチームを作るべきかわからない人も多いかもしれませんが、たとえば総務省では、DXを推進するための理想的な組織の在り方を、資料にて公開しています。同省の資料から、企業がDXを効率的に推進する方法を読み解きます。

日本のデジタル競争力ランキングは「過去最低」

 DXに取り組んでいる企業や組織は多いかもしれませんが、思うように進んでいない企業もあるかもしれません。

 スイスに拠点を置く国際経営開発研究所(IMD)の調査「デジタル競争力ランキング2023」によると、日本の総合順位は64か国中32位で、過去最低の順位を記録しました。項目を「人材」に限ると、順位は49位と、さらに低くなります。

 このように日本のデジタル競争力が低迷している今、DXの推進は企業にとって急務です。しかし、そのDXを効率よく推進するためには、どうすれば良いのでしょうか?

 その参考になるのが、総務省が2022年に公開した、自治体がDX推進する際における組織づくりのポイントを挙げた「DX推進に係る組織体制について」という資料です。

DXの推進に適した組織体制とは?

 この資料によると、効果的なDXの推進には、仕事の仕方、組織・人事の仕組み、組織文化・風土そのものの変革が必要であり、組織を横断するDX推進体制の整備に着手することが重要であるとされています。

 資料ではさらに、自治体がDXを推進する際には、以下に挙げる6つのポジションを擁するチームづくりを推奨しています。

【1】首長
組織の仕組みや文化・風土を含めた全体的な変革に、自ら強いコミットメントを持って取り組むリーダー。

【2】最高情報統括責任者(Chief Information Officer:以降CIO)
DX推進体制を整備するマネジメントの中核的存在。庁内全般を把握し、部局間の調整に力を発揮できるよう、副市長等の着任が望ましい。

【3】CIO補佐官等
CIOの補佐体制を強化する存在。CIOによるマネジメントを専門的知見から補佐できるよう、外部専門人材の活用を積極的に検討する。

【4】情報政策担当部門
各団体の保有する情報資産や情報関係予算を一元的に把握し、重複投資の排除や情報システムの全体最適化に役立てる部門。

【5】行政改革・法令・人事・財政担当部門
自治体におけるDXの必要性を十分に認識し、CIO・情報政策担当部門と連携強化を図りつつDXを推進していく管理部門。

【6】業務担当部門(特に窓口担当部門)
自治体のデジタル化は業務改革の契機であることを踏まえ、DXの取り組みを通じてどのように業務を変えていくのかという観点から主体性を持って参画する。

 このほかに、情報セキュリティ対策を確実に実施するためには「最高情報セキュリティ責任者(Chief Information Security :CISO)」といったポジションも重要であり、外部人材の登用も考慮すべきとしています。

DXを推進している自治体は、どんな組織を作ったのか?

 資料ではさらに、実際にDXを推し進めている自治体における、特徴的な組織体制も取り上げられています。

 徳島県では、2020年に知事を本部長、副知事と外部人材のCIOを副本部長とした「徳島県デジタル社会推進本部」発足し、DXのためのガバナンス体制を整備しました。さらに、同推進本部の下にデジタル社会を実現するための実働組織として、庁内の若手職員や市町村職員、大学・民間人材等で構成する「デジタル社会推進タスクフォース」を設置。デジタル社会の実現に向けたアクションプランを策定し、DX技術の業務の実装に取り組んでいます。

 山形県の酒井市では、外部の民間人材を、同市の「デジタル変革戦略室」のチーフ・デジタルトランスフォーメーション・オフィサー(CDO)に任命。酒田市における地域、市民サービスと行政の中長期なデジタル変革の推進に関する先導的な提言・市長のサポートに活用しています。同時に、DXによる市民サービスの向上や地域課題の解決、大学まちづくり、行政の効率化、デジタル人財の育成及び人財交流などを目的として、民間企業や大学と連携協定を締結し、DXの取り組みを進めています。

 埼玉県の戸田市では、行政事務の効率化、および行政サービスの高度化を図るため、情報施策、システム管理運営、統計の各部門を「デジタル戦略室」として2022年より組織し、デジタル推進体制を強化しています。デジタル戦略室に配置する職員は、内部公募により募集していますが、民間企業や他自治体で情報部門に長く従事した職員など、外部人材の登用も積極的に行っているといいます。

DXが進まない原因は、組織の体制にあるかもしれない

 これらはいずれも地方自治体におけるDX推進の例ですが、企業にも共通する部分は多いでしょう。

 たとえば【1】の首長は、企業でいえば社長など企業のリーダーのポジションです。加えて、【5】の行政改革・法令・人事・財政担当部門や、【6】の業務担当部門は、企業における実際に日々の業務を行うスタッフに当たるといえます。

 【2】の最高情報統括責任者、【3】のCIO補佐官等、【4】の情報政策担当部門については、社内に似たようなポジションが無い場合、新設する必要があります。もし社内に、同部門に最適な人材がいないのであれば、社外から人材を募るというのもひとつの手段です。社外の優秀なデジタル人材を採用することで、社内のDXがよりスムーズに推進できる可能性も高まります。

 DXに取り組んでいるにも関わらず、思うように進んでいない場合、その原因は社内の体制にあるかもしれません。総務省の資料を元に、社内の組織に手を加えてみてはいかがでしょうか。

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