花粉症の時期は、どうしても従業員のパフォーマンスが低下します。企業はどのような手を打てば良いのでしょうか? その鍵を握るのが「テレワーク」です。
日本のほとんどの地域では、花粉症から逃げられない
人生には悩みがつきものです。しかし、特に春先の時期は、「花粉症」に悩み苦しむ人が多いことでしょう。
花粉症とは、花粉が鼻や目から身体に侵入することで、花粉に対する抗体量が増加、その結果、鼻水や鼻づまり、くしゃみや目のかゆみ・充血などのアレルギー症状が出ることを指します。
環境庁・厚生労働省が公開した「花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること」という資料によると、花粉症の有病率(疾病を抱えている人の割合)は年々増加しています。1998年は花粉症全体の有病率が19.6%だったのに対し、2008年には29.8%、2019年には42.5%と増加し続けています。
しかも、花粉は春だけのものではありません。スギ花粉の時期は2~4月がメインですが、同時期にはヒノキの花粉も飛散します。5月頃からはイネ科の植物の花粉が、夏頃からはブタクサの花粉も発生します。
さらにいえば、スギが少ないとされる北海道でも、シラカバの花粉が飛散します。日本に暮らす以上は、常に花粉症の脅威に晒されているといっても過言ではないかもしれません。
花粉症が従業員の仕事のパフォーマンスを低下させる
花粉症の辛いところは、鼻や目のトラブルだけでなく、さまざまな身体的トラブルにも繋がるところにあります。
医薬品メーカーの第一三共ヘルスケア株式会社が花粉症の人に対して行ったアンケート調査によると、症状の上位には鼻水・鼻づまり(93.2%)、くしゃみ(82.0%)、目の充血・かゆみ(66.8%)と、目と鼻のトラブルが挙がりました。しかし以降は、のど・皮膚のかゆみ(32.8%)、身体のダルさ(19.9%)、肌あれ(18.1%)、咳(18.0%)、頭痛(16.4%)、イライラ感(9.4%)、身体や顔のほてり(6.6%)、不眠(6.3%)、発熱(4.7%)と、目や鼻以外のさまざまな症状が挙がっています。
さらに、「花粉症によって仕事や勉強に支障があるか?」という質問では、全体の約8割に当たる78.2%が「ある」と回答。このうち43.4%が、花粉症発症時は通常時と比べ、パフォーマンスが6割以下に低下すると回答しました。パフォーマンス低下の原因としては、「集中力が低下する」(69.1%)、「鼻水や咳が気になる」(50.0%)、「鼻水をかむ時間を取られる」(46.9%)などが挙がっています。
このほか、「花粉症によって会社や学校に行きたくないと感じたことがある」と回答した人は50.2%で、全体のほぼ半数でした。この結果を見ると、花粉症が流行している期間は、発症している従業員の仕事のパフォーマンスが低下しており、しかも症状によっては、出社がためらわれるレベルにあることがわかります。
花粉症にはテレワークが有効
花粉症でパフォーマンスが低下している従業員に対し、企業はどのような手を打てば良いのでしょうか?
冒頭で触れた環境庁・厚生労働省の資料「花粉症対策」では、花粉飛散量が多い日には、花粉症患者の労働生産性が低下するため、職場の理解や支援が望まれるとしています。
具体的な支援としては、出勤の際に外出しなくても済むよう「テレワーク」の導入が挙げられています。しかも、発症者だけでなく、発症していない人もテレワークを活用し、予防行動を取るべきとしています。
このほかにも、花粉を避けるための行動として「花粉飛散の多い時間帯(昼前後と夕方)の外出を避けること」も指摘されています。
これらの情報をまとめると、企業は花粉の飛散が見込まれる日は、基本的にはテレワークを実施し、どうしても出社しなければいけない場合は、出社時間が花粉飛散の多い時間帯と被らないよう、フレックス勤務のような柔軟な勤務形態を導入することが望まれるといえるでしょう。
花粉症は、咳や発熱などさまざまな症状を呼び起こし、従業員のパフォーマンスを低下させるという点で、風邪とほぼ同じようなものといえそうです。しかし、テレワークやフレックス通勤など、従業員が花粉を避けられるような勤務環境が用意されれば、回避することは可能です。
日本でビジネスをする以上、花粉症から逃げることができませんが、企業側の努力で、従業員を花粉の魔の手から回避させることは可能です。職場でくしゃみや鼻水をかむ従業員が多く見られたのであれば、新しい働き方を導入するサインかもしれません。
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