2024.12.24 (Tue)

理想的な会社の在り方とは(第76回)

子育てはデジタルでどう変わるか?「保育DX」の今

 政府は現在、保活(子どもを保育園に入れるための活動)や保育業務を省力化する「保育DX」を推進しています。これを受けて自治体や企業も、これまで保護者が育児の傍ら行ってきた保育園の情報収集や役所での手続きの手間、保育園側の保育業務といった負担を、デジタルで解決する取り組みをスタートしています。保育DXとはどのようなものなのか、解説します。

非効率な“保活”は、DXでワンストップ化できる

 今まさに子育て中の方は、保育業界のアナログな手続きに辟易している人も多いかもしれません。

 たとえば保育園に子どもを預ける際は、いくつかの保育園に連絡を入れて見学し、入園希望の保育園を決定した後は、手書きの申請書や書類を揃えて役所へ提出します。育児と合わせてこれらの手続きを行うのは、決して簡単なことではありません。

 こうした子供を保育施設に入れるための準備・活動のことは、俗に「保活」と呼ばれ、スムーズな育児を妨げる一因としてとかく話題になりがちです。

 こうした保育における面倒な手続きを解消するため、こども家庭庁では2024年7月より「保育DX」をスタート。具体的な取り組みとして、煩雑な保活手続きを効率化する「保活ワンストップシステム(連携基盤)」の構築を進めています。

 このシステムが完成すれば、保護者はスマートフォンから1つのシステムにアクセスするだけで、保育園に関する情報収集や見学予約、入所申請までを完結できるようになり、保活の負担が軽減されます。

 保活ワンストップシステムは、現在のところ2026年度の運用スタートが予定されていますが、一部の自治体ではすでに似たような取り組みも行われています。

 たとえば東京都では、全国に先駆けて、保育園探しから入園までの手続きをワンストップで完結できる「保活ワンストップサービス」をスタートしています。対象となっているのは、板橋区、足立区、調布市の保育施設126園です(2024年10月時点)。このサービスを使用すると、都が提携している2つの民間保活サイト上で、保育園情報の収集から見学予約、入園申請までを一括して行うことができ、時間帯や場所を気にせず保活を進められることが可能です。

保育DXで、保育施設で働くスタッフの負担

 保育DXは、保育施設で働くスタッフの負担軽減も目的としています。

 利用者がアナログな手続きを強いられるということは、スタッフ側もアナログな処理を行うことになり、職員も多くの書類作成やチェックを行ったり、保護者からの電話対応等に時間を割くことが当たり前でした。

 しかし保育DXを推し進めることで、各職員が連携基盤を共通で使用してデータを共有できるようになれば、アナログでの書類作成が不要となり、データ入力や審査業務の負担も軽減されます。

 こども家庭庁の「保育現場でのDXの推進について」によると、同庁は保育ICTを導入する施設に対し、補助金を支給する方針を明らかにしています。例えば、計画や記録など保育士の日常的な業務負担を軽減するためのシステム導入費の一部も、補助される見込みです。

 補助対象としてはこのほかにも、保育に関する実費を徴収する際のキャッシュレス決済や、病児保育の空き状況・予約のオンライン化、児童館における相談支援のオンライン化なども含まれます。保育現場のDXは、そこで働くスタッフだけでなく、保護者にとってもメリットがあるといえるでしょう。

保護者とスタッフ間の連絡もデジタル化できる

 政府や自治体だけでなく、企業も保育ICT製品の開発を行っています。

 たとえばBABY JOB株式会社という会社は、保育園探しのWebサイト「えんさがそっ♪」を運営しています。このサイトを利用すれば、保育園のサービス時間外でも見学予約や問い合わせが可能になります。

 さらに、園の比較・検討がサポートできるよう、地図上で近辺の保育園情報をまとめて閲覧できたり、保育園から電話で聞いた情報をメモ入力する機能も備えています。保護者からは、「引っ越しをした際、土地勘がない中での園探しが簡単になって助かる」といった声も聞かれているといいます。

 保育園と保護者をつなぐツールに、「デジタル連絡帳」を導入することで、お互いの連絡がスムーズになったケースもあります。

 保育園・幼稚園向けのデジタル連絡帳を展開するユニファ株式会社の「ルクミー連絡帳」の例で見てみましょう。大分県のある保育施設では、紙のおたよりが保護者になかなか読まれず、提出物が忘れられてしまうこともよくあったといいます。加えて、3歳から5歳児の保護者に対しては連絡帳の使用頻度も低く、職員と保護者のやり取りがスムーズにいかなかったといいます。

 しかし、ルクミー連絡帳を導入したところ、導入後は3歳から5歳児の保護者からの連絡頻度が向上。保育園から提出物の連絡など伝えたいことをすぐに伝えることができ、返事もすぐに返ってくるようになったそうです。

 何かと忙しい子育てですが、DXが加速することで、保護者も保育施設のスタッフも余計な作業が不要になり、より子供に向き合う時間が確保できるでしょう。保育DXが進むことで一番喜ぶのは、親やスタッフとの時間がより長く過ごせる子供たちなのかもしれません。

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