2024.08.08 (Thu)

理想的な会社の在り方とは(第66回)

各地で大雨が発生中。企業は水害にどう備えるべきか

 日本は水害のリスクも非常に高い国です。台風や大雨など、水害の危険が想定される場合には、どのように準備するのが良いのでしょうか?水害に対応するBCPを考えます。

地球温暖化の影響で、大雨が増えている

 7月に入り、各地で大雨に伴うトラブルが発生しています。

 7月22日には、東京都~埼玉県で激しい雷雨が発生。この影響を受け、東京都足立区で開催予定だった花火大会「第46回 足立の花火」が中止される事態に追い込まれました。

 さらに7月23~24日には、北海道の空知地方を流れる雨竜川(うりゅうがわ)が、大雨の影響で氾濫。付近の工場にも水が流れ込み、操業停止を余儀なくされたという報道もありました。

 JICE(一般財団法人国土技術研究センター)によると、日本における大雨の平均年間発生回数は、ここ10年で増加傾向にあるといいます。1時間に50ミリ以上の大雨の平均発生回数は、統計を開始した最初の10年間(1976~1985年)は約226回でしたが、2012~2021年の10年間では約327回で、約1.4倍に増加しているといいます。ちなみに「1時間に50ミリ以上の雨」とは、傘が役に立たなくなるような非常に強い大雨のことです。

 大雨が増加する背景には、地球温暖化の影響が考えられます。環境省の「エコジン」というサイトによると、地球温暖化が進み、気温が上がることで、海や地上から蒸発する水分量が増え、大気中の水蒸気量が多くなることで、人類が今まで経験しなかったような大雨がもたらされるとしています。

水害対応版のBCP対策とは

 大雨が発生しやすくなっている現状を鑑みると、企業はいつ発生してもビジネスが継続できるよう、BCP(事業継続計画)を策定しておく必要があるでしょう。特に、オフィスや工場が河川に近い場所、もしくは海抜が低い場所にある場合は、水害に特化したBCPを講じることが求められます。

 JICEのホームページでは、「水害対応版BCP作成のポイント」という資料が公開されています。この資料によれば、水害は地震と異なり、発災まで一定の時間があるため浸水防止措置や避難行動が取りやすく、早期に初動対応を開始することで、被害を軽減できるとしています。

水害の場合は発災まで一定の時間があるため、早期の対応が被害経験につながる(JICE「水害対応版BCP作成のポイント」より引用)


 水害対応版BCPを作成するためには、まずは自社の情報を把握することが求められます。自社のビジネスのうち、特に継続や早期復旧が必要なのはどの業務なのか、仕入先や納品先がどこなのか、といった一般的なBCP対策に加え、オフィスや工場の立地に、どんな水害リスクがあるのかを調べておくことも重要といいます。

どの高さまで浸水するのか?浸水は何時間継続するのか?

 水害リスクを確認するためには、河川が氾濫した場合に想定される水深や浸水継続時間を示した「浸水想定区域図」と、被災想定区域や避難場所など、防災関係施設の位置などを示した「ハザードマップ」の2種類の地図を使用します。

 浸水想定区域図は、オフィスや工場が位置する地点における【1】浸水深(どのくらいの高さまで浸水するのか)、【2】浸水継続時間(いつまで浸水が継続するのか)、【3】家屋倒壊等氾濫想定区域(後述)の3点の情報を知ることができます。

 たとえばオフィスが存在する箇所の浸水深が「1m」と表示されているのであれば、パソコンや電子機器をそれよりも高い場所に避難させることで、データの消失や機器の故障が回避できます。加えて、浸水継続時間が「1~3日」と表示されていれば、浸水により最大で3日事業活動がストップすることを想定して対策を講じることが可能です。

浸水深のマップ(JICE「水害対応版BCP作成のポイント」より引用)


 【3】の家屋倒壊等氾濫想定区域とは、「氾濫流」と「河岸浸食」によって、家屋が 倒壊する恐れのある区域のことです。氾濫流は、堤防が壊れ河川の外に水が流れ出ることで、木造家屋が倒壊する恐れがある区域のこと、河岸浸食は、洪水で河岸が削られることで、家屋が倒壊する恐れのある区域のことです。オフィスや工場が区域内に位置する場合は、避難する必要があります。

 資料では、これらの区域を確認するためには、国土交通省の「重ねるハザードマップ」の使用を勧めています。同マップでは、浸水深や浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域や避難所を、1つのマップに重ねて表示することが可能です。

水害が発生するまでの「タイムライン」を準備しよう

 マップの確認が終わったら、水害に対する具体的な行動を、レベル別に考えていきます。レベルは1~5まで5段階があり、レベル1では気象庁から発表される早期注意情報や台風情報の収集、レベル2では大雨・洪水注意報や、河川の氾濫注意情報の収集を行います。

 レベル3は、従業員の早期帰宅や避難の準備を行い、レベル4ではパソコンなど重要な機材を2階以上に移動するなど、非常体制を確立します。

 水害が発生した後のレベル5では、被害状況の確認や従業員の安否確認を行い、被害情報や復旧見通し情報をWeb上にて公開していきます。こうした水害発生前の準備や対策は、市区町村が公表している「水害タイムライン」という資料を用いることで作成できるといいます。

水害に関する情報は、気象庁/河川管理者/市町村からそれぞれ発令される(JICE「水害対応版BCP作成のポイント」より引用)


 最後に、想定される被害と、被害への対応を検討します。たとえば社屋や工場に浸水が発生することが想定される場合は、あらかじめ土のうを準備し、どのように積むのかを計画しておきます。浸水による電源喪失が懸念される場合は、非常電源装置や自家発電機などを用意します。

 突然訪れる地震と比べ、大雨は比較的想定がしやすい災害です。それだけに、日頃の準備不足でビジネスにダメージを受けてしまうのは避けたいところです。台風のシーズンが訪れる前に、水害対応版BCPを策定してみてはいかがでしょうか。

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