2023.12.21 (Thu)
理想的な会社の在り方とは(第37回)
超高齢化社会「2025年問題」に打つ手はあるか?
2025年問題とは、 “超高齢化社会”がもたらす諸問題のことです。従来のやり方のままでは、ビジネスがうまく回らなくなる恐れがありますが、企業はどう対策すべきでしょうか?
2025年問題とは、超高齢化社会がもたらす諸問題のこと
「2025年問題」という言葉をご存知でしょうか。これは1947~49年頃のベビーブームに生まれた多くの人(いわゆる、団塊の世代)が、2025年から75歳以上の後期高齢者となり、日本人の人口における高齢者の割合が増加することを原因とする、さまざまな問題を指す言葉です。
日本は現在、高齢化が急速に進行しています。厚生労働省は2006年に発表した資料にて、「2025年には、高齢者(65歳以上)人口が約3,500万人に達する」と予測していました。しかし。内閣府が2023年に発表した「令和5年版高齢社会白書」によると、日本の総人口である1億2,495万人のうち、65歳以上の人口は3,624万人(29.0%)となっており、すでに2023年の時点で3,500万人を超える高齢化社会となっています。
その一方で、少子化も進行しています。総務省のデータによれば、2023年4月1日現在の子供(15歳未満)の数は1,435万人で、これで42年連続の減少。しかも総人口に占める割合は11.5%と、65歳以上の人口はおろか、75歳以上の人口である1,936万人よりも少ない数値となっています。
2025年、中小企業の半数が後継者不足に?
このように高齢化と少子化が進む日本では、企業活動も従来のままではいかなくなる恐れがあります。特に中小企業や小規模事業者では、事業継承の問題が表面化する可能性があります。
中小企業庁が2019年に発表した「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」という資料によると、2025年には70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人となり、うち約半数の127万人が「後継者未定」の状況に陥ると指摘しています。この状況を放置した場合、中小企業・小規模事業者の廃業が増え、2025年までに累計で約650万人の雇用と、約22兆円のGDPが失われる可能性があります。
同省では後継者対策として、企業の経営権を、親族や会社の従業員以外の人物や企業に委ねる「第三者承継」を検討すべきとしています。
「ビジネスケアラー」に対し、企業はどのように対処すべきか
高齢化社会が進行することで、仕事をしながら家族等の介護に従事する「ビジネスケアラー」の増加も予想されます。
経済産業省が2023年3月に発表した「新しい健康社会の実現」という資料によると、日本では高齢化の進行に伴ってビジネスケアラーの数が増加しており、介護離職者は毎年約10万人に及び、2030年には家族介護者のうち約4割(約318万人)がビジネスケアラーになる見込みとしています。その結果、仕事と介護の両立ができないビジネスケアラーが増加し、労働の生産性が低下することで、2030年には約9.1兆円の経済損失につながる恐れがあるとしています。
同資料では、企業もビジネスケアラーへの支援を充実すべきとしており、企業に対し、介護休業や休暇制度の整備、介護に関するリテラシーの向上や組織内での理解促進、相談窓口の整備などを呼びかけています。
たとえばある食品会社では、全年齢の従業員を対象に介護リテラシーを高めるためのオンラインプログラムを実施し、介護リスク判定や支援制度等の知識習得を推奨しているといいます。同社ではこのプログラムの参加を「業務」として扱っているといいます。
人手不足対策は、今まで通りの求人を続けることではない
少子高齢化が進行するということは、働き盛りの若い人材を採用することも困難になることが予想されます。
中小企業庁が公開している「中小企業・小規模事業者 人手不足対応ガイドライン」という資料によれば、現在は人材の確保が困難な「求人難」の時代を迎えており、かつ少子高齢化による生産年齢人口の構造的な問題によって、人手不足は中長期的に続く可能性があるとしています。さらに、「いまある事業を維持していくための人手を確保できず、『人手不足倒産』に追い込まれる企業もある」と、人手不足がやがては企業の倒産につながる危険性も指摘しています。
こうした人手不足に対する解決策として、同資料では人材の確保だけはなく、機械化など技術を活用することや、“この業務はフルタイムの男性”といった固定観念を払拭し、“女性も可”、“短時間可”など、求人像の幅を拡げることが重要としています。
2025年になって、慌てて対策しても遅い
冒頭でも触れた通り、2025年問題とは少子高齢化が進行することによって生まれるさまざまな問題のことです。少子高齢化の流れは今後も続くことが予想されるため、日本においては簡単に解決できる問題ではありません。
しかし本記事で紹介したように、対策は存在します。2025年になって慌てて準備をするのではなく、今から準備を進めておくことで、少子高齢化の社会でも、ビジネスをうまく回していくことが可能になるでしょう。
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