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2024.03.01 (Fri)

理想的な会社の在り方とは(第42回)

協業でもコラボでもない「コレクティブインパクト」の可能性

 社会課題を自治体や企業、NPO、市民などが一緒になって解決する「コレクティブインパクト」という考え方が生まれています。いわゆる“協業”とは何が異なるのでしょうか?

協業やコラボとは何が違うのか?コレクティブインパクトの意義

 「コレクティブインパクト」という言葉をご存知でしょうか。

 コレクティブインパクトとは、社会課題を一つの組織の力で解決しようとするのではなく、行政、企業、NPO、財団など、さまざまな主体が共通のゴールを掲げ、互いの強みを出し合いながら解決をめざすアプローチのことです。2011年にアメリカのJohn KaniaとMark Kramerが提唱しました。

 「さまざまな組織が協力する」という点では、いわゆる「協業」や「コラボレーション」と似たような考え方とも捉えられますが、コレクティブインパクトには5つの特徴があります。以下、列挙します。

【1】共通のビジョン
特定の社会課題に対して共通の認識を持ち、その解決に向けた共通のビジョンに合意している

【2】評価システム
データ収集及び効果測定によって、取り組みを評価するシステムを共有している

【3】補完関係
参加している主体それぞれの強みを生かし、取り組みを相互に補完し合える関係を築いている

【4】コミュニケーション
信頼関係の構築などに向け、継続的かつ開かれたコミュニケーションを実施している

【5】サポート体制
全体の方針・計画などの策定や評価方法の確立など、取り組み全体をサポートする独立した組織が存在している

 企業が単なる協業ではなく、コレクティブインパクトに取り組むメリットとしては、社会問題に取り組む企業姿勢をアピールでき、企業のイメージアップや事業拡大などが狙える点があります。加えて、いろいろな団体や企業と連携することで、新たな気づきやスキル、人脈などが得られる可能性もあります。

 さらに、従業員がさまざまな組織の人たちと触れ合い、異なる考え方やスキルなどを持ち寄ることで、一つの企業や団体では解決できない複雑な社会課題に対して、解決の方法を創出することも期待できます。

日本でも社会問題の解決を目指すコレクティブインパクトが進行中

 日本でもコレクティブインパクトの事例がいくつか存在します。

 一つ目は、Jリーグのサッカークラブのギラヴァンツ北九州が開催した、地域食品資源循環型システムの実証実験です。

 同イベントでは、生分解性樹脂(微生物のはたらきによって水と二酸化炭素に分解され、自然へ還る樹脂)を使用した紙コップを提供。回収した使用済み紙コップを、分解装置で堆肥化しました。その堆肥を地元の高校で野菜の栽培に活用し、収穫した野菜をスタジアムで販売するというものです。この実験には、電通、三菱ケミカル、NTTビジネスソリューションズ、ウエルクリエイトなどが集まり、自社の技術を活用しました。

 二つ目は、文京区が行っている「こども宅食プロジェクト」です。同プロジェクトでは、経済状況が食生活に影響するリスクがある家庭の子どもに対し、企業などが提供した食品などを配送。さらに配送をきっかけに、子どもとその家庭を必要な支援につなげ、地域や社会からの孤立を防ぐというものです。

 この取り組みには文京区以外にも、NPO法人フローレンス、セイノーホールディングスなどさまざまな団体・企業が参加し、寄付の受付、食品の調達、物流計画の作成、配送、アンケートによる成果の測定などを行っています。

 三つ目は、子どもの教育分野における実証実験です。さまざまな理由で学習支援が必要な子どもたちを対象とし、2022年6月から一年間、学習能力向上ならびにキャリア形成に繋がる教育支援を実施し、一年を通じた変化や成長を観察しました。このプロジェクトには、一般財団法人デロイトトーマツウェルビーイング財団、公文教育研究会、NPO法人アーモンドコミュニティネットワークが参画しています。

 四つ目は、2024年2月からスタートしている、中野区のリユース容器のシェアリングサービスの実証実験です。

 この実証実験は、株式会社カマンが提供するリユース容器「Megloo」を、キリングループが本社を構える中野セントラルパークに出店する一部飲食店や、ティームが運営するキッチンカー、ローソンなどで使用。使用済み容器は、中野区役所、東京建物が管理する中野セントラルパーク、丸井グループに回収ボックスを設置し、回収した後に丸井グループ本社の社員食堂にて洗浄し、再利用されます。

企業が社会問題に取り組む姿勢は、世間から注目されている

 こうしたコレクティブインパクトの事例は、海外でも多く存在し、児童養護、教育、子育て支援、貧困・雇用、健康・医療、農業など、さまざまな分野における課題解決に活用されています。

 企業が利益を追求するのは当然のことですが、一方で企業が社会課題にどのように向き合うか、その姿勢も世間からは見られています。自社だけで取り組むのが難しい場合は、複数の団体が協力するコレクティブインパクトのスタイルの方が、むしろやりやすいかもしれません。コレクティブインパクトに参画することで、自社のビジネスの幅はさらに広がることでしょう。

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