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2023.02.15 (Wed)

ICTで製造業はどのように変わるのか(第40回)

工場の現場をペーパーレス化するメリットとは? 導入ステップやツールを紹介

 近年の工場は、ロボットやAIをはじめとするICT機器を積極的に導入するなど、生産性の向上に努めるケースが多く見られます。一方で、設計図をはじめとした各種資料を、今なお紙媒体で管理している工場もあります。紙を使った業務管理は一定のメリットがある反面、デメリットも少なくありません。

 本記事では、ペーパーレス化のメリットや導入ステップ、導入における課題などについて解説します。自社の工場のペーパーレス化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

工場がペーパーレス化する5つのメリット

 工場においてペーパーレス化を図ることで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。まずは、工場がペーパーレス化する5つのメリットを紹介します。

拘束時間や資源を節約できる

 ひとつ目のメリットは、紙やインクなどの資源を節約できることです。各種資料を紙で管理する場合、印刷用の紙やインクだけでなく、プリンタやファイリングするためのフォルダ、保管するための棚など、多くの資源を必要とします。ペーパーレス化すれば紙やインクなどの資源を購入する費用が抑えられるため、コスト削減に有効です。

 さらに、紙への印刷やファイリングなどにかかる時間が不要になる点もメリットです。ペーパーレス化が実現すれば、これら作業はパソコン上で処理するだけで完了するため、時間をより有効的に活用できます。

 従来は、資料を閲覧したいときは書類の保管場所まで移動したり、多くの文字の中から必要な情報を目視で探したりする必要がありました。書類をデータ化すれば、パソコン・タブレット・スマートフォンなどの端末から情報にアクセスでき、検索機能を使って目当てのデータをすぐに探し出せるため、そうした手間もかかりません。

ヒューマンエラーの抑止につながる

 ふたつ目のメリットは、人が手動で行う作業が減ることで、ヒューマンエラーの抑制や人的リソースの削減につながる点です。

 紙資料を扱う場合、目視で確認し、必要情報をパソコンに入力する作業や、過去の書類から必要な資料を探す作業などが発生します。これらの作業は、すべて人力で行われるため、ミスが発生する可能性があり、かつ作業時間も長くかかります。ペーパーレス化してデータ管理することで、ヒューマンエラーの抑止が期待できます。

情報セキュリティが強化できる

 3つ目のメリットは、資料の紛失といったリスクに対する情報セキュリティを強化できる点です。紙による資料管理のデメリットのひとつに、情報セキュリティ対策が万全ではないことが挙げられます。紙資料を確認したい場合は保管場所から持ち出し、別の場所へ移動することになります。しかし、紙資料を持ち出すことで紛失・破損のリスクが生じるほか、社外へ持ち出す場合は移動中の電車や車内に置き忘れるなど、情報漏えいに発展するおそれもあります。

 ペーパーレス化すれば上記のような危険性は抑えられ、情報セキュリティを高く保つことが期待できます。具体的にはパスワードを設定して閲覧できる人を制限する、パソコンやタブレットなどの端末自体にロックをかける、などが挙げられます。

 万が一、パソコンやタブレットなどを紛失した場合も、遠隔操作によってデータを削除できる機能を用意していれば、機密情報が漏えいする可能性を低減できます。

場所を問わず簡単に持ち運べる

 4つ目のメリットは、どこにでもデータを簡単に持ち運べることです。紙で資料を管理する場合、チームメンバーや取引先に資料を見せたいときは、人数分の紙資料を印刷し、ステープラーで綴じて用意する必要があります。紙資料の内容が膨大であったり、人数が多い場合は持ち運びに苦労するでしょう。ペーパーレス化により、ノートPCやタブレット端末上で資料を閲覧できるようにすれば、あらゆる場所に持ち運べることができます。

手軽に共有できる

 5つ目のメリットは、複数端末で同じ資料を手軽に共有できる点です。紙で資料を管理していると、チームメンバーに渡したいときや、他支店のメンバーに資料を共有したいときは、印刷や郵送などの手間が発生します。ペーパーレス化を進めれば、パソコン・タブレット・スマートフォンなど複数の端末で資料が閲覧できるため、スムーズな情報共有が実現します。

工場がペーパーレス化を導入する際のステップ

 ペーパーレス化にはさまざまなメリットがありますが、導入にはいくつかのステップを踏む必要であり、各工程のポイントを押さえておくことが重要です。以下、工場がペーパーレス化を導入する際のステップを解説します。

ステップ1:業務プロセスを可視化する

 まずは、すべての業務プロセスを可視化し、紙を使った工程を洗い出します。紙を使った工程だけでなく、レガシーシステムに頼った作業や、人が手動でやらなくてよい作業なども同時に洗い出しましょう。

 ペーパーレス化できそうな工程があれば、環境を整え、積極的に導入する方向性で検討します。ただし、従来通り紙で管理したほうがよい工程があれば、無理にペーパーレス化する必要はありません。

ステップ2:導入コストを調べる

 ペーパーレス化する業務が確定したら、次は導入コストを調査します。ペーパーレス化する業務内容や企業規模、使用する人数などにより、必要な機能や条件が異なるため、自社の要件をあらかじめまとめておきましょう。

 次に、ペーパーレス化を実現するシステムの選定です。選定にあたっては、複数のシステムを比較検討することが重要です。比較する際は、費用だけでなく導入時のフォローやアフターフォローが整っているか、といった点も注目しましょう。

 いくつか候補が決定したら、提供企業に問い合わせて要件や予算などを伝え、見積もりを入手します。見積もりは複数の企業から入手することで、費用や内容を比較・検討でき、より自社に適したものが選べます。

ステップ3:社内でデジタル化の研修をする

 ペーパーレス化を実現するシステムの導入する前に、社内でデジタル化に関する研修を実施しましょう。

 ペーパーレス化には、パソコンやタブレット端末といった機器の取り扱いやソフトウェア、Webサービスなどを利用することになります。ICTに不慣れな従業員は、不安になるかもしれません。いきなりペーパーレス化のシステムを導入しても、使い方に戸惑えば業務効率の低下を招きかねないため、システムの使い方や情報セキュリティ対策といった、デジタル化に関する研修を行うことが重要です。特に情報セキュリティ対策に関しては、企業の存続にも関わる重要事項であるため、重点的に教育する必要があります。

ステップ4:段階的にペーパーレス化を進める

 最後にペーパーレス化のシステムを導入しますが、いきなりすべての業務をペーパーレス化するのは難しいため、まずは小さな規模で導入を進め、様子を見ながら段階的に範囲を広げることが大切です。

 段階的にペーパーレス化を進めることで新たな問題が発生したり、そもそもの業務プロセスに問題があることなどが早期に明らかになることもあります。

工場のペーパーレス化における導入コスト問題

 工場でのペーパーレス化に前向きであっても、導入コストが高いため進められないケースが考えられます。

 導入コストは、ペーパーレス化によって紙や資源にかかるコストを削減できる反面、ペーパーレス化のシステムに関する導入・運用コストがかかります。月額や定量制、買い切りなどさまざまな料金体系がありますが、企業規模によっては負担が大きくなるケースも考えられます。

 さらに、ICT自体を導入するための環境整備にかかるコストも、企業によっては大きな負担です。特に、工場へインターネット環境を構築する場合は、ラインや機器の配置も考慮しなくてはならず、物理的に難しいケースもあります。

ペーパーレス化との組み合わせで業務効率化が図れるサービス

 ペーパーレス化を進める際、異なるICTを併用すると、業務プロセスの一層の効率化が期待できます。ここでは、工場のペーパーレス化において、併用したいサービスを3つ紹介します。

チャットツール

ひとつ目のサービスは、チャットツールです。チャットツールとは、パソコン・タブレット端末・スマートフォンを使って、メッセージをリアルタイムでやりとりできるツールのことです。

 複数人がメッセージをリアルタイムで送受信できるため、情報共有や業務連絡がスムーズになります。ペーパーレス化と併用すれば、資料を共有したいときにすぐ送信できるようになります。

ワークフローシステム

 ふたつ目のサービスは、ワークフローシステムです。ワークフローシステムとは、申請承認プロセスを電子化・自動化するシステムのことです。申請・承認・決裁の一連の流れをデジタル上で管理・完結できるため、稟議などの手続きを効率化でき、スピーディな意思決定が期待できます。ペーパーレス化と併用し、申請書などをデータ化すれば、申請書を印刷して対象者に郵送する手間が省けます。

オンラインストレージサービス

 3つ目のサービスは、オンラインストレージサービスです。オンラインストレージサービスは、インターネット上に各種データを保存できるサービスです。ペーパーレス化を進めると、膨大な量のデータが発生します。パソコンやタブレット端末の容量には限りがあるため、すべてのデータを保存するのは困難です。オンラインストレージサービスにデータを保存すれば、容量を気にせずデータを保存できます。

 オンラインストレージサービスは、インターネット上にデータを保存できるため、自社内にサーバーを設置する必要はありません。ストレージの容量が不足した際は、拡張することも可能です。

 オンラインストレージサービスの料金体系は、ユーザー数やデータ容量に応じて変わるものや、定額制のものなどがあり、サービス提供企業によってさまざまです。自社に合ったサービスを選ぶことが大切です。

まとめ

 工場のペーパーレス化には課題も残りますが、適切に導入できれば大きなメリットが見込めます。そのためには、ペーパーレス化のメリットや費用対効果などを把握し、従業員の理解を得たうえで、自社に適した導入計画に沿って進めることが大切です。

 とはいえ、業務プロセスのどの部分をペーパーレス化すべきか、ペーパーレス化のシステムにどのような機能が必要なのかを洗い出し、適切なサービスを選ぶのは簡単ではありません。さまざまな業務プロセスに対応し、各企業に適したソリューションを用意できる専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

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日本の製造業は人材不足や老朽化した生産設備の維持、技能継承など、さまざまな問題を抱えており、これらに対応するため、生産性の向上が喫緊の課題となっています。NTT東日本は、「デジタル技術」と「セキュアなインフラ環境」によって、工場のデジタル化(スマートファクトリー化)をご支援。製造業の生産性向上をサポートします。

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