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ICTで製造業はどのように変わるのか(第7回)

ファクトリーオートメーションの事例や企業、今後とは?

 私たちが日常的に利用している車やパソコン、スマートフォンといった製品の多くは、工場で作られています。こうした製品にはとても大きな需要があるため、すべて大量生産が必須の状況となっています。

 これらは「一生モノ」の製品というより、ある程度の期間で買い替える製品です。さらに細かい需要の違いに応じて、異なる機能が求められます。したがって生産者側は、ひとつのものを大量生産するだけでなく、「何種類もの製品を」「大量に」生産しなければなりません。すべての需要に応えながらノルマを達成するには、人の手だけでは困難です。今回はこうした社会の需要に応えながら、かつノルマの達成を可能にする「ファクトリーオートメーション」について紹介していきます。

ファクトリーオートメーションとは

 ファクトリーオートメーション(Factory Automation/略称:FA)とは、工場での受注、生産、出荷といった一連の作業工程をロボットやセンサー、情報システムなどを使って自動化するシステムの総称のことです。ファクトリーオートメーションを導入することで、さまざまな効果が得られます。

 例えば出荷ラインにセンサーを導入すれば、人の目の代わりとなり、傷の有無や色の違いなどが判断できるようになります。センサーを製品の組み立て作業のラインに追加することで、寸法などを生産工程で自動測定することが可能になります。

 寸法チェックは、製造工程において必要不可欠かつ重要な項目です。これが生産工程の中で正確に実施できるようになることは、自然と稼働率の向上につながります。センサーや画像処理、測定器といったファクトリーオートメーションで用いられる機器を使えば、材料や製品のすべての流れを記録することもできます。不良品などが見つかった場合は、原因究明にその記録が役立つでしょう。

 ファクトリーオートメーションを導入すると、人件費の削減や生産性の向上、商品品質の安定化などが見込め、結果的に収益の拡大が期待できます。

メリットとデメリット

 ファクトリーオートメーションの主なメリットであるコスト削減と生産性向上は、以下のような項目で説明できます。

1. 生産工程において人を産業用ロボットに置き換えることで人件費の削減につながる。
2. 人材不足、研修といった採用、育成リスクの削減につながる。
3. 人によるばらつきやミスが減ることで、品質リスクが低減し安定性が増す。

 一方でファクトリーオートメーションにはデメリットもあります。

1. 想定した生産性が出ない可能性がある。
2. 装置の誤作動や故障による生産停止の発生。
3. 運用には専門知識をもつ人材の育成が必要。

ファクトリーオートメーションの事例

 一般社団法人 日本ロボット工業会の「ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018」より、実際にメーカーがファクトリーオートメーションを導入した事例を紹介していきます。

検査作業とパレタイズ作業のロボットハンド化

 堂本食品株式会社は、10kgを超える製品を専属の従業員が1人で1日600個以上も重量検査して、パレタイズを行っていました。しかし、人材不足により年々増加するアイテム数や生産量への対応が困難となったことから、産業用ロボットを導入しました。結果、人間が担当していたときから1台あたり5倍の生産量となり、なおかつ品質確認や重量検査、パレタイズ作業が1台のロボットで完結できたりと、大幅に作業効率が向上しました。

包装機へのハム・ソーセージ製品投入ロボットシステム

 ハム・ソーセージ業界は繁忙期に合わせて採用を行っても短期労働者の確保が難しい業界です。日本ハムファクトリー株式会社は省力化・省人化を進めてきたものの、製品が不定形かつ多品種生産に対応する必要があること、業界特有の品質担保などの課題を抱えていました。これらの課題を解決すべく、人と協働する産業用ロボットを導入。結果、2名の省人化や作業員の肉体的負担の軽減、検品精度の向上などを実現しました。

少量多品種化粧品のパウチビニール袋詰め工程のロボット化

 化粧品や医療部外品の製造を行っている株式会社ビーテックが、多品種少量生産化粧品のパウチビニール袋詰め工程に双腕ロボットシステムを導入した例です。従来では従業員がビニール袋詰め作業を行っていました。こちらのビニール袋は多品種少量生産ということもあり自動化が進まず、人による手作業に頼らざるを得なかったという事情がありました。そこで、双腕ロボットシステムによる袋詰めを導入すると、従業員の人数を減らすことができただけでなく、作業時の人為的なミスの低減により品質を向上させることも可能となりました。結果的に導入前後で労働生産性が3倍となりました。

ファクトリーオートメーションとインダストリー4.0

 製造業におけるオートメーション化およびデータ化・コンピュータ化をめざす「インダストリー4.0」は2006年にドイツで始まり、IoT(モノのインターネット)でファクトリーオートメーションはさらなる進化を遂げています。ネットワーク上でつながったそれぞれの機器がデータを送受信し、サーバーで処理することで、機械同士の高度な連携が可能になったのです。また、ネットワークのつながりは社外の他の工場にも広がり、より広い範囲で連携が行われるようになりました。

ファクトリーオートメーションの今後

 ファクトリーオートメーションの究極形は「完全自動化」です。これまでのファクトリーオートメーションは、センサーや産業用ロボットは作業員の補助的な使い方が主流でした。しかし、完全自動化した場合は人間と機械の立場が逆になり、センサーやロボットなどが主役、人間がその補助を行うという役割になると考えられます。

 完全自動化が実現できると、人為的なミスを減らし、効率性を向上させたうえで一定の品質確保、作業時間の短縮などが期待できます。

 ファクトリーオートメーションの全自動化の推進には、以下のような理由があります。

人手に頼らない生産システムの構築

 日本のものづくりの多くは、長年にわたって技術者によって伝えられてきました。しかし、経験や知識を持った技術者は高齢となり、若い技術者も少ないという現実があります。こうしたことから技術の伝承が難しくなっています。こうしたリスクを考え、人手に頼らないファクトリーオートメーションに注目が集まっています。

製造時間の短縮

 ファクトリーオートメーションを導入することのメリットは、組み立てや製造といった工程だけではありません。従来は人の目を通してチェックをしていた商品検査でも、大きな効果が期待できます。例えば目視で1秒間に検査できるのは数個ですが、画像処理センサーを活用すれば数倍~数十倍近く検査できる可能性があります。ボトルネックになりやすい検査工程の時間を大幅に短縮でき、生産コストの圧縮にも効果を発揮します。

まとめ

 少子高齢化の影響もあり、代々受け継がれた技術者の知識・経験を受け継ぐ若者は減っており、今の世代でその伝統が途切れてしまうという可能性もあります。こうした事態に陥る前に、ファクトリーオートメーションを検討してみてはいかがでしょうか。

 これまで長時間、個々の製品を人間が検査いた作業を効率よく、高い精度で行えることは人件費の削減にもつながりますし、生産性の向上が見込まれるため、収益が伸びる可能性もあります。ファクトリーオートメーションによって見込まれるさまざまな好影響を考え、いまのうちから導入することを検討してみてはいかがでしょうか。

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